NEWS & COLUMN ニュース/記事

DAISHI DANCE

連載
360°
公開
2013/04/18   18:50
更新
2013/04/18   18:50
ソース
bounce 353号(2013年3月25日発行)
テキスト
インタヴュー・文/澤田大輔


DAISHI DANCEのアゲアゲDJぶりをギュッと凝縮した最新ミックス!



DaishiDance_A



「DJは相変わらず毎週末やってます。単発のイヴェントにも出ますが、活動のベースにしてるのはいろんなところで続けているレギュラー・パーティー。そこでは基本的にロング・セットにしてるんですよ。それが自分の個性になって、パーティーの個性にもなっていると思います」。

自身のDJ活動についてこう語るDAISHI DANCE。そんな彼のミックスCDシリーズ最新作『MYDJBOOTH.3』が届けられた。3台のCDJとエフェクターを使い倒し、タイトルが示す通りにクラブの現場とまったく同じ環境でレコーディング。実況録音に限りなく近い、生々しくてダイナミックなハウス・ミュージックの旅が展開されている。

「このシリーズの過去2作は、その時のリアルタイムなDJプレイを反映したものだったんですけど、今回は新曲も入れながら、ここ1年くらいに擦り切れるほどかけたものを中心にしてますね。〈DAISHI DANCEパーティーのベスト盤〉みたいな。ピークタイムのプレイを切り取りつつ、でも一晩の流れを感じさせる構成にも自然となりました」。

自身のエレクトロ・チューン“NEW GATE(SAX@ROCK MIX)”でスタートダッシュを決め、その後もハード・ロック・ソファ&スワンキー・チューンズやゼッドらのハイテンションなトラックをひたすら投下。常時クライマックスと形容し得るアッパーなプレイに圧倒される。

「もともと僕のDJはテンションが高いほうなんですけど、今回は最初からテンション高く始めちゃってて、あと3時間残ってるのに、ここまで上げちゃってどうしよう、みたいなことは現場でもよくあるんですけど、そういう状況だと自分でも思いもよらないミックスができたりする。そのサプライズ感が楽しいんです。これまで以上にアッパーになってると思います」。

実際、本作ではデヴィッド・ゲッタをフィーチャーしたフロウ・ライダーの“Club Can't Handle Me”などEDM系のナンバーも多く使われている。このへんはDAISHI DANCEのモードのみならず、現行ハウス・シーン全体のモードも投影されているのだろう。

「ポップスがダンス・ミュージック化する流れのなかで、最近はダンス・ミュージックの尺がポップスと同じ5分くらいになってきてるんですよ。DJ用のリエディットも以前は原曲を引き延ばしてましたけど、いまは逆に原曲より短くして瞬発力を高めたり。曲によっては2分くらいでクイックで繋ぐ時もあって、テンションを凝縮させてDJ専用に使ったりしています。自分の楽曲はすべて未発表のエディットを収録しているんです」。

結果的に『MYDJBOOTH.3』には20曲が詰め込まれているのだが、しかし矢継ぎ早に曲を切り替えているような印象はない。さまざまなパーツをロング・ミックスによって丹念に混ぜ合わせ、ひとつのうねりを作り、昂揚感を持続させていく——その手捌きは、ハウスにおける王道のDJスタイルを継承しているようにも思える。

「今回はUREIのミキサー(ディスコ〜ハウスの分野における名機)を使っていて、UREIならではのロング・ミックスが基本になってる。オールド・スクールなハウスのスタイルですよね。ハウスの王道を引き継いでいこう、みたいな使命感はないんですけど、自分のルーツは間違いなくそこなんです」。

昨今のパーティー・トラックを王道のハウス・マナーでミックスした本作には、ハウスのハウスたる魅力がパツンパツンに詰まっている。爆音で聴き終えた頃には、間違いなくイーヴン・キックが轟き続けるパーティーの現場へと足を運びたくなっているはずだ。

「僕の作品を聴いてるリスナーさんでも、クラブに来たことがない人って半分くらいいるんじゃないかと思うんですよ。まずそういう人たちにクラブの楽しさを伝えたい。いろんなタイプの人が来て、同じ場で遊んでいるのがクラブのおもしろさだと思うんです。そこでいろんな出会いや繋がりが出来て、クリエイターがアイデアを見つけたり、仕事のきっかけになったり……そしてカルチャーが生まれる。どういうふうに楽しんでいただいてもいいんですけど、これを聴いて現場に来てくれたらすごく嬉しいですね」。



▼DAISHI DANCEの作品を紹介。

左から、2010年のミックスCD『MYDJBOOTH.』、同2011年の『MYDJBOOTH. 2』(共にurban sound project.)、2012年作『WONDER Tourism』(ユニバーサル)