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(第2回)たてよこまるさんかくしかく

連載
BO NINGENの人生一度きり
公開
2013/03/29   17:30
更新
2013/03/29   17:30
テキスト
文/Yuki Tsujii (BO NINGEN) 写真/はたさちお


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ロンドン在住のバンド・BO NINGENが、現地の音楽やアートにまつわるあれこれを紹介する連載! 第2回は、Yuki Tsujii(ギター)が先日終了した日本でのツアーを経ての思いを語ります。



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ギターのYukiです。〈ゆうき〉っていいます。

日本ツアー、終わった。終わらされました。例年より早く咲いた桜は僕らにとってすごく嬉しかったんやけど、いつもツアーの後は喪失感がものすごい。特に桜とか見てると。

ツアーを振り返ると、いつも通りの閃光、濃厚な時間、自分らとオーディエンスの実存するインプリント――その応酬!で最高なものでした。ツアー初日に高速道路で爆死しかけて、気が引き締まったよ。今回から前ほど酒も呑んでない。

ツアー前半をいっしょに回ったコマネチとはロンドンで知り合って、もうかれこれ長い付き合い。ドラムのチャーリーを銭湯に連れていったり、京都の町家に泊まったり、いやもう思い出すのにこれは少し時間が要る。



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アキコ(コマネチ)とTaigen



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チャーリー&アキコ(コマネチ)とYuki



ツアー、日本。

うーん、日本でツアーを何度かやってきた印象やと、音楽シーンもそれ以外の分野でも〈東京資本〉というのがすごく強いと感じていて、一方で地方におけるそういったものはどこか東京よりも遅れている……悪い意味で。そう思ってた。でも、確信した。ええ意味で遅れてる場合もある。縦から横になった。

60年代にボブ・ディランが海を越えて影響を及ぼし、誕生した裸のラリーズ、そして70年代のドイツで起こったクラウトロックと呼ばれるムーヴメント――ロック史上に残る大きな勘違い。

それは時間や地理による情報の遅延(ディレイ)が引き起こした、ある意味でモダニズム的なものだった。今回は行ってないけど沖縄、このツアーで初めて行った鹿児島や浜松にもそんな面々がいたかな。形容不可能で〈突然変異〉としか言いようのない、おもしろくて謎の音楽。西洋ポップ・ミュージック/ロックの正史/非・正史の系譜のどこかに属しているのは間違いないだろうけど、一向にその気配の読めないバンドたち。



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それは、われわれが普段ロンドンでライヴをして、イギリス中をツアーで回っていて感じることと似ている気がした。イギリスの音楽シーンにおいて、ロンドンという街は文化の中心であっても、決して音楽の中心ではない。マンチェスターで、グラスゴーで、ブリストルでいつの時代もシーンがあり、日本で言えば上京する、ということは少なく、いつだって地元にいながら有名になるバンドはたくさんいるように思う。

そんな状態のほうが音楽シーンに活力が湧くし、健全やとつねづね思ってきた。そして先に書いた通り、日本、東京にはシーンが多数乱立し、格好良いバンドももちろん多いのだけれど、決して同時性のない、どこかまとまりに欠けた状態であるように思う。でも日本の地方の形容不可能なバンドたちを見たとき、地方や他都市の音楽、もっと言えばライヴ・ミュージックの未来は明るいな、と思えてきたのでした。

だって、中心には悲しい事態が多いじゃないか。ローカルが親密であれば、ローカルのコミュニティーの形成に繋がる。結果、人はライヴに足を運ぶんやから。目当てのバンドだけじゃなくても、観るんやから。



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そんなことを考えながらツアーをしていて、終わりが近付き、いよいよN'夙川BOYS、でんぱ組.incとの3マン〈でんぱNINGEN BOYS〉、そして〈TOWER RECORDOMMUNE SHIBUYA〉でのワンマンへと結実していくわけですが、それについて書くには筆力と時間と余白があまりにも足りない。あえて言うなら、敬愛するギタリスト、フレッド・フリスの体現してきた〈Step Across The Border〉という言葉と共に伝えたいなあ。よく、ジャンルのボーダー/境界を壊す、越えるだとか、ボーダレスだとか言われるけれど、そんなもん最初からないということ。



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〈でんぱ Ningen Boys  photo by Yasuyuki Kimura



ここでのボーダー、あるとすればそれは自分(たち)のなかにある境界線なのではないかと思う。

フリスのこの言葉は、自身の内の音楽的体験や、教養あるいは実践としての境界を示しているように思うから。つまりは、まぎれもなくボーダーは、〈外〉じゃなくて〈内〉から繋がれた鎖みたいなもので。

だからこそ『Line The Wall』という名のアルバムを作り、ツアーをし、日本でもヨーロッパでも、そして今年はかのアメリカ合衆国にも線を引きに行くわけです。われわれ自身のイディオムに、万里の長城に。



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8年ぶりの桜。8年ぶりの花粉症。

次は、ボーダーの、ウォールの、向こう側で、内側で会いましょう。


PROFILE/BO NINGEN



Taigen Kawabe(ヴォーカル/ベース)、Kohhei Matsuda(ギター)、Yuki Tsujii(ギター)、Akihide Monna(ドラムス)から成る4人組。2006年、ロンドンのアートスクールに通っていたメンバーによって結成。2009年にアナログ/配信で発表した『Koroshitai Kimochi EP』が現地で話題となり、〈Offset Festival〉をはじめとした地元メディアからも注目を集め、UKツアーのみならず、日本盤の発表後は日本でのツアーも成功させる。2011年にミニ・アルバム『Henkan EP』をリリース。最新作となるセカンド・アルバム『Line The Wall』(Stolen/ソニー)の日本盤も大好評。先日無事にUKへ帰国(!?)し、5月からスタートするUKツアーに向けて準備中! その他、最新情報はこちらのサイトでチェック!



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