広上淳一、竹澤恭子、東京都交響楽団による東欧圏の美しき舞曲集
ヨーロッパの音楽のベースには「ダンス」がある。その起源を探す事が難しいくらい古い時代から、どの民族も踊ってきたに違いない。そして、大航海時代以降には中南米で流行したダンスもヨーロッパに入ってきた。例えばJ・S・バッハの音楽の中によく登場する「サラバンド」 も、そのルーツを辿れば中南米のダンス音楽に行き着く。そんな前提で考えてみると、近代のクラシック音楽の中にたくさんの舞曲があるのも納得できるだろう。
広上淳一が東京都交響楽団を指揮する《響の森》vol.33は、 「ダンス・ダンス・ダンス」というサブタイトルが付けられた。まさにダンスの饗宴のようなプログラムだ。バルトークの「ルーマニア民俗舞曲」とブラームスの「ハンガリー舞曲集」は、ハンガリー、ルーマニアという東欧圏の舞曲を堪能出来る作品だ。あまりにも有名なブラームス「ハンガリー舞曲」だけれど、普段演奏されるのは第5番など数曲のみ。今回は全21曲が演奏される。なかなか全曲を聴くチャンスはないと思うので、普段あまり陽の当たらない作品にも注目して聴いてみたいと思う。ブラームスが若い頃、伴奏ピアニストとしてツアーしていた時代に触れたロマの音楽をもとに「編曲」した舞曲集とされているが、中にはブラームス自身の創作作品もあったようだ。この作品があったことによって、後のドヴォルザークの「スラヴ舞曲集」も誕生したことを考えると、重要な作品のひとつである。
バルトークの「ルーマニア民俗舞曲」はピアノ版がオリジナルで、 ヴァイオリンとピアノ版でもよく演奏されるが、オーケストラ版は意外と珍しい。ハンガリーからルーマニアにかけて、各地の民俗音楽を採集して歩いたバルトーク。その経験から生まれたこの作品では6つの個性的な踊りの曲が連続し、次第に高揚していく。広上ならではの盛り上げが期待できそうだ。
そして、竹澤恭子がラロ「スペイン交響曲」のソリストとして登場する。交響曲と名付けられているけれど、これはヴァイオリン協奏曲。 ラロが、スペインの名手パブロ・デ・サラサーテのために書いた作品で、1875年に初演された。全5楽章で、時に第3楽章「間奏曲」がカットされたりもするが、最近では全曲を演奏することが優勢となりつつある。スペイン的な色彩感は、特に独奏ヴァイオリンのメロディの中にある。豊かで美しい竹澤のヴァイオリンの音色が、スペインの大地へ私たちを誘う。旅をするように楽しめるコンサートになるだろう。
LIVE INFORMATION
『東京文化会館《響の森》vol.33「ダンス・ダンス・ダンス」』
7/31(水)19:00開演
出演:広上淳一(指揮) 竹澤恭子(vn) 東京都交響楽団
曲目:バルトーク:ルーマニア民俗舞曲 Sz.56(管弦楽版)
ラロ:ヴァイオリン協奏曲第2番「スペイン交響曲」op.21
ブラームス:ハンガリー舞曲集 WoO.1(全21曲)
会場:東京文化会館 大ホール
http://www.t-bunka.jp/