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【第5回】――バトルス

連載
生形真一の六弦生活
公開
2013/05/15   00:00
ソース
bounce 354号(2013年4月25日発行)
テキスト
インタヴュー・文/溝口和紀(New Audiogram)


ひたすら六弦生活を送る男が、ギタリスト目線も交えて名盤を紹介する連載!



生形連載第5回_A



【今月の一枚】BATTLES 『Mirrored』 Warp(2007)

バトルスは、このアルバムがリリースされたとき、タワーレコードで試聴したのが最初でした(笑)。すごく新しいなと思ったのが第一印象。インストなんだけど、ジェフ・ベックみたいにメロディーを弾くギターが中心にあるようなものでなく、各楽器のアレンジで全体を構築していくタイプのバンドですね。抽象的だけど、曲を見る角度が違うというか、正面からだけではなくて、立体的に曲を見ている感じ。斜めから覗き込んで〈ここにこの音を入れたほうがいいんじゃないか〉とか……音像がすごい立体的なんですよね。そこがやっぱり聴いていて気持ち良い。

あとは、どの楽器がどの音を出しているかわからないっていうところもおもしろかったですね。ギターはディレイの使い方も斬新だし、シンセ的な感じで使っていたりもして、いろいろとアイデアが豊富です。Nothing'sの最新シングル“Out of Control”も、俺は意識していなかったんだけど、〈あのイントロがどの楽器の音かわからない〉って、よく訊かれましたね。そういう感覚があたりまえになってギターを弾けるようになったのも、バトルスの影響があるかもしれないです。

立体的なアレンジや斬新なアイデアもそうだけど、彼らのどこにもっとも刺激を受けたかと言えば、センスなんだと思います。インスト・バンドもポスト・ロックのバンドもいっぱいいるけど、自分の想像の範囲に収まる音楽が多くて……でもバトルスは、そこを簡単に飛び越えたところで曲が出来ている気がします。そして、そこがいちばんのオリジナリティーだと思います。

アレンジに悩んでいるバンドマンにもぜひ聴いてほしいですね。コロンブスの卵ってあるじゃないですか? 卵の底を割って無理矢理立てちゃう話。バトルスってそういう感覚があるんですよ。〈あ、そうか!〉〈そうくるか!〉って……小学校の頃、先生に〈何か自分が困ったときにはコロンブスの卵の話を思い出せ〉って言われたのがいまだに刷り込まれていて、バトルスを聴くとそれを思い出すんですよ(苦笑)。だから、その閃きの気持ち良さが欲しい人は、ぜひ聴いてみてください(笑)。

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PROFILE/生形真一



Nothing's Carved In Stoneのギタリスト。最新シングル“Out of Control”(エピック)が好評を得るなか、6月26日にはニュー・アルバムのリリースも決定! その他の最新情報は、オフィシャルサイト〈www.ncis.jp〉をチェック!!