若きダンサーの卵たちが未来に向かって進む姿を追ったドキュメンタリー
毎年世界各地での予選を経て、ニューヨークでファイナルが開催されるユース・アメリカ・グランプリ(YAGP)は、9~19歳を対象とする若きダンサーの卵たちのためのコンクール。『ファースト・ポジション』は、その2010年の様子を追ったドキュメンタリー映画だ。
ここでフォーカスされているダンサーは、アラン、ジョアン、ミケーラ、ミコとジュールズの姉弟、レベッカの6名。ミコは、今年2013年のローザンヌ・コンクールでベスト・スイス賞を受賞したあのミコ・フォガティである。
映画では、子供たちの才能と日々の努力に始まり、練習用のスタジオ、コーチ、衣装、「1日で履き潰れてしまうので、それだけで毎日80ドルかかる」トゥ・シューズといった経済的負担の大きさなどが語られる。際立った背景を持つのはミケーレ。祖国の内戦で親を殺害され孤児となり、養女としてアメリカに来たという壮絶な幼少時代を持ち、体格の問題や衣装の色を自分の肌に合わせて直さなければならないという苦労や、さらにはファイナル直前に生じた故障を乗り越えてゆく姿には、思わず声援を送りたくなるだろう。
スポットは親の側にも当てられている。中でも、フォガティ姉弟の母親のステージ・ママぶりは強烈で、元ピアニストとして一級の芸術家を目指す厳しさを身を持って体験しているからだろうとは理解しつつも、正直辟易させられるほどだ。
ダンス・シーンからは、マチューの父ドゥニ・ガニオがその才能に惚れ込んだアランをはじめ、しなやかでバネのあるジョアン、抜群の安定感をみせるミケーレ、スタイルに恵まれたレベッカなど、皆の素晴らしい才能が伝わってくる。
コンクールの様子や、数年後のスターを見出すのを楽しみつつ、ダンサーたち(そしてその他のあまたの芸術家たちも)が、様々な人生を生き、多くの問題を人知れぬ努力によって克服しながらステージに立っている──その孤独な闘いにも想いを馳せながらご覧いただきたい。