ジャズの歴史の真実を21世紀に伝える!
ブルーノート、リヴァーサイドと並ぶジャズの名門レーベル、プレスティッジは、ニューヨーク在住のジャズ・マニアであるボブ・ワインストックが1949年に創立した会社。最初の録音はリー・コニッツとレニー・トリスターノのセッションで、以後次々と名作・話題作を録音し続けた、まさにモダン・ジャズの歴史そのものと言えるレーベルだ。当初は10インチ盤でリリースしていたプレスティッジが、我々が親しんでいるタイトルとジャケットでの12インチLPシリーズ「7000番台」を始めたのは56年のこと。今回の「プレスティッジ7000番台クロニクル第1期」は、そのうちワインストック自身が制作現場で手がけた7001から7050までの50枚を、番号順に発売していくという世界初の企画だ。
6月19日発売の20タイトルには、『スタン・ゲッツ・カルテッツ』『サブコンシャス・リー/リー・コニッツ』『コンコルド/モダン・ジャズ・カルテット』『ディグ/マイルス・デイヴィス』『ウッドロア/フィル・ウッズ』『ワークタイム/ソニー・ロリンズ』など、まさにジャズの基本コレクションとなっている歴史的名盤が目白押しだが、おもしろいのは記念すべき「7001」の『ア・タッチ・オブ・テイラー/ビリー・テイラー』が、世界初CD化だ、ということ。趣味のいいピアノで定評があり、教育者としても名高いテイラーのこのトリオ作は、優しさあふれるピアノ・タッチが堪能できる佳作だ。なお、テイラーの『ビリー・テイラー・トリオVol.1/Vol.2』(7015,7016)は日本初CD化。
世界初CD化作品はもう一つあり、それが7019の『ピアノ・ドール/サンフォード・ゴールド』。1911年生まれで、放送局のスタッフ・ミュージシャンやドン・バイアス、ジョニー・スミスなどのサイドメンを勤め、ジャズ・ピアノの教則本も出版していたゴールドは、ビル・エヴァンスが傾倒していたことで知られるピアニストだ。ややくぐもった音色でリリカルなフレーズを紡ぐ彼のスタイルは、確かにエヴァンスに通じるところがある。
DSDリマスタリングのSHM-CD仕様で、ボーナス・トラックも可能な限り収録したこの企画で、個人的に最も感動したことは、初期のプレスティッジの制作に深く関わり、オリジナル盤のライナーノーツの多くを執筆している評論家、アイラー・ギトラー(1928年生まれ)がマイケル・カスクーナとともに監修を手がけ、書きおろし解説を書いていることだ。ジャズの歴史の真実を21世紀に伝えるこの企画、第2期、第3期…と長く続けていってほしい。