©Itaru Hirama
舞踊家・田中泯の「場踊り」を追い続けた集大成
本誌読者にはお馴染みかと思うが、毎月異なるアーティストが登場するタワーレコードのコーポレートポスター「NO MUSIC, NO LIFE.」シリーズ。97年よりその撮影を手掛け、広告、雑誌、CDジャケットのほか近年は出身地である宮城・塩竈において「塩竈フォトフェスティヴァル」「GAMA ROCK FES」を企画・プロデュースするなど精力的な活動を続ける写真家・平間至。今回、7月6日から東京・港区のフォト・ギャラリー・インターナショナルにて開催される写真展『Last Movement—最終の身振りに向けて—』に併せて、彼の7年ぶりの写真集が2冊同時刊行される。
本作は平間のライフワークであり、2007年から追い続けている舞踊家・田中泯の「場踊り」を中心に、風景写真を織り交ぜたものとなっている。田中泯といえば、かつて暗黒舞踏の土方巽に師事し、自らを「地を這う前衛」と語る生涯異端の舞踏家。御年68歳。これまでにも即興音楽家のデレク・ベイリー、大友良英、ジム・オルークとの共演のほか映画、ドラマの俳優、声優、ナレーションなど多岐にわたる活動で強烈な個性を放っている。そんな田中が2004年より「場所で踊るのではなく、場所を踊る」という目的で開始したのが「場踊り」である。
©Itaru Hirama
2人の出会いは約30年前。上京したての平間は東京・中野の「plan-B」で体験した田中の踊りに大きなショックを受ける。その20年後、2人は映画『メゾン・ド・ヒミコ』(田中は死期が近づく伝説のゲイバーのママ役)の写真集製作で再会。そこで「場」との情緒あるコミュニケーションを介し、「場」を切り取るように撮影する平間が「場踊り」を知り、すぐに魅了されたことは必然といえるだろう。また東日本大震災の被害を受けた塩竈に何度も足を運び、「生命とは自分のものではなく、自分に預けられたものだと考えるようになった」という平間は、ダンサーとしての個を捨て、自らを場に預けることから生まれる「場踊り」にあらためて共通点を見出したという。
「泯さんに向き合おうとすればするほど、自分と向き合わざるを得なくなり、闇の中に身を置いている感覚に陥ります。そこには、生も死も、過去、現在、未来も、あらゆるものが未分化で混在しているのです。泯さんも僕も、そこに流れるエネルギーのようなもの。それが、ぶつかり合う時に写真が生まれるのです」と語る平間。農村、海、断崖、石垣、神社、森林、木洩れ陽——それらを背景にするのではなく、すべてを意識下に委ね、森羅万象の一環となる肉体。白と黒の戯れ。平間至のファインダーはそんな田中泯を通して、永劫の闇に潜む新しい生と死を見せてくれる。
写真集
『「Last Movement —最終の身振りへ向けてーⅠ」』
『「Last Movement —最終の身振りへ向けてーⅡ」』
平間至(著)
[博進堂/窓社「I」ISBN:9784896251197 /「Ⅱ」ISBN:9784896251203 /「ケース」 ISBN:9784896251210 ]
7/1発売
EXHIBITION INFORMATION
『平間至 写真展』
○7/6(土)〜8/31(土)
会場:フォト・ギャラリー・インターナショナル
http://www.pgi.ac