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『ライブ・アット・ニュー・ラテン・クォーター』

カテゴリ
o-cha-no-ma LONG REVIEW
公開
2013/07/09   15:47
ソース
intoxicate vol.104(2013年6月20日発行号)
テキスト
text:桑原シロー

ゴージャス&デラックス。幻の裏昭和史復刻プロジェクトがいよいよ本格始動か!? 

アンフォゲッタブルな宵の記録がまたしてもわれわれの手に。昭和が愛した赤坂のナイトクラブ「ニューラテンクォーター」で吹き込まれた貴重なライヴ音源が、コンピ『New Latin Quarter Presents The Jazz & Blues Collection Vol.1』(現在廃盤)としてアメリカでリリースされたのは、ちょうど3年前の夏のこと。ビルボード誌のジャズ・アルバム部門で最高位19位を記録した本作は、ジャズファン&ポピュラーファンだけでなく昭和の夜の音楽史に想いを馳せる若いリスナーなどの支持も獲得。当時のナイトクラブ・ショウを包んでいた香ばしい雰囲気を追体験させてくれる聴き応え満点のデラックス・ムード盤だった。コンピの元となったオープンリール・テープは全部で47本発見されており、残っている音源はどういうリリース形態がとられるのか気になっていたけれど、このたび届いた『ライブ・アット・ニュー・ラテン・クォーター』の3作品は、いちアーティストのいちステージを丸々収めるという嬉しい作りになっていた。ラインナップは、ナット・キング・コール、ルイ・アームストロング、ヘレン・メリルというなんともゴージャスなお三方。キラ星のごときヒット曲を散りばめながら、これぞ粋! といわずにいられない歌声を聴かせる40代半ばのナット・コール。トラミー・ヤングのトロンボーン、ジョー・ダレンズバーグのクラリネットと共に熱く陽気に盛り上がり、これぞエンターテイメント! というべきパフォーマンスを繰り広げるサッチモ。そして、悩ましげなため息で場をブルージーに染め上げるヘレン・メリル。夜の紳士淑女たちをときめかせたとびきりのライヴ・ショウが3夜分も楽しめてしまうというこの贅沢さ。超貴重な「ライヴ・イン・ジャパン」モノの逸品といっしょに、クラブのオーナーであった山本信太郎氏の新刊『昭和が愛したニューラテンクォーター』もリリースされている。ショウほど素敵な商売はないってことが小気味よく語られていくこの書。一度はお店を訪れてみたかった……って思いに駆られること必至だ。

 

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