延べ3000時間! 膨大な放送用音源の復刻企画がスタート
ドイツの放送局、南西ドイツ放送(SWR)が所有するジャズの放送音源がCD化され、シリーズ物として、発売がスタートしている。SWRには膨大な数のラジオとテレビの音源が保存されており、それらはジャズ・ジャーナリストでもあるヨハヒム・E・ベーレントらによって制作・監修されたものだ。ドイツではJazzhausから発売されていて、日本でも輸入盤で手に入れることができるが、このたび、キング・インターナショナルが、新たに日本語解説のライナーを付けて、国内流通仕様盤「SWR超貴重音源アーカイヴ復刻シリーズ」として、リリースを始めた。このシリーズの大半は未発表音源で、しかも音質が良好だ。
現在、その「アーカイヴ復刻シリーズ」として発売されているのは、デューク・エリントン、ズート・シムズ、アート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズ、ユタ・ヒップなど、それぞれの名義による演奏を収録した10作だ。これらの音源は、記録として貴重であるだけでなく、演奏内容も素晴らしいものが多い。たとえば、キャノンボール・アダレイ・クインテットの69年録音ライヴ作は、彼らの活動のピークにあたり、そのファンキー・ジャズの熱気溢れる演奏は聴いていて楽しく、キャノンボール以下、ナット・アダレイ、ジョー・ザヴィヌルのソロも気合いが入っている。同じく、シリーズの一作として発売されたジェリー・マリガン・セクステットのライブ作は77年録音。マリガンのバリトンサックス演奏には、彼の精神の充実ぶりがうかがえ、そのソロはひらめきに満ちている。そして、その演奏に触発されたかのように、デイヴ・サミュエルズのヴァイブも輝きを放つのだ。
上述した、ベーレントらによって録音されたアーカイヴは、1600を超える音声の音源と、350を超えるテレビ映像が残されている。それらの中には、マイルス・デイビス、ビル・エヴァンス、スタン・ゲッツ、セロニアス・モンク、エラ・フィッツジェラルド、カーメン・マクレーなど、キラ星の如きジャズ・レジェンドの演奏が記録されていて、今後それらが順次CD化される可能性がある、というから、ファンにとってはうれしい限りであろう。