ミュージシャンならではの鋭い視点で戦前の流行歌、60年代ジャズや現代のアイドルまでも!
うらやましいな、がホンネ。
いろんなところに書いてきたものがひとところに集められるなんて。
この雑多さが本ってものの良さだ。電子書籍とかネットとかでこうしたおもしろさはでるんだろうか?
目次には、タイトルがあり、ページが示されている。そこからわかることもある。そうか、「グルーヴ」のことか。イーストウッドのことか。こんなのにライナーノートを書いてるんだ。でも、それはあくまでもインデックスでしかない。ぱらぱらめくっていって、レイアウトや字体、イラストやジャケットといったヴィジュアル、垣間みられる文章──ひとつひとつの文章がみせる「顔」は、とても目次でわかるようなものじゃない。あぁ、本ってこれがいいんだよな。「集めもの」の本はいいな。そうなるわけ。
大谷能生の本が、文章がいいのは、ちゃんと文体を考えていること(文章だ、文字だ、活字になるんだ、って、あらためて、ちょっとだけ意識して、ちょっと気取る)。そして、ひととは違ったことを言おうとすること。いや、正直、どこの誰でも言えそうなことを平然と書くことが恥ずかしくないって輩が多すぎるんだ。たしかにヘンなことを書いちゃいけないところだってある。場所をわきまえろってことではあるんだが、それにしたって、文章は芸なんだし、ふっと視線をおとしたらそのままするすると文字のならびを追えるようなもんじゃなけりゃあ、そりゃ雀の涙かもしれないけど、原稿料はもらえねぇ(はずだ)。
「エッセイ2001〜2013」、そして「散文集」と帯にあるが、わざわざ「散文」とするあたり、堀江敏幸を想いだしている? あ、帯は編集の担当か。
全体は「覚書」「作家たち」「ジャズ史つれづれ」「ライナーノーツ」「MUSICS&BOOKS」とパートに分かれる。こんなとりあえずのパートからこぼれるものがみつかるのも本だからこそ(さっきもそれは書いたけど)。ま、手にとってもらわないと、おもしろさはわからないな。この紹介でちゃんと誘惑できるかどうかはわからんけど、ね。