ついにワープに合流。電子音楽新時代を牽引するOPNの新作
ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー(OPN)がついにWARPと契約。いや、ついにというか、ようやくといった印象もあるこの事件。2011年に発表された『Returnal』で、エメラルズの『Does It Looks Like I'm Here?』とともに新世代のシンセ/アンビエントの扉を大きく開いたOPN。以降もその向こう側にさらなる迷宮の扉を用意し、われわれの期待を裏切り続ける彼が、いまやブライアン・イーノも在籍する電子音楽レーベルと契約するのは時間の問題であったはずだ。
さて、今回用意された扉もじつに奥が深い。ジャケットにあるように長方形の物体と窓と扉がクイズのように存在してその向こうはいっさいの闇。謎だらけ。早速アルバムをプレイすると教会音楽のような壮麗なリフが始まり、そうかと思えばおもむろに大味なシンセのミニマル・パターンが割りこんでくる。そしてここからはOPNの真骨頂。時に現代音楽のように厳格で、時にノイズ〜スカム・ミュージックのように嘲笑的な音/声のピースが衝突し、もっとも感じやすい部分で摩擦を引き起こす。得もいわれぬ快感。しかもこれまでにない親しみやすさと大きなスケールをもって。そう、代名詞でもあるアナログ機材から離れてソフトウェア・シンセを使用したという本作は、まるでフェネスの『Endless Summer』が世に放たれた時のように、ポップ畑への真新しい扉が開かれる瞬間をいくつも用意しているのだ。
ソフィア・コッポラの映画『ブリングリング』のスコアを担当するなどいよいよブレイクの条件もそろい出たOPN。シュールでスキャンダラスな世界観が、ガーリー文化にも届くのかどうかはさておき、とにかくこの挑戦的にすぎる音楽にじっくりと耳を澄ましてほしい。彼が収集した膨大な音のピースは、人生のごとく大きな物語の一瞬を描き出し、それぞれの興奮がいつしか平穏な全体に包みこまれてはまた一瞬を描く。まるでスティーヴ・ライヒ《City Life》の混沌が未来に蘇ったかのように。