ひたすら六弦生活を送る男が、ギタリスト目線も交えて名盤を紹介する連載!
【今月の一枚】NINE INCH NAILS 『The Downward Spiral』 Nothing/Interscope(1994)
ナイン・インチ・ネイルズ(以下、NIN)のこのアルバムを初めて聴いたのは高校生のときですね。〈インダストリアル〉というくらいだから、本当に工場の金属音のような音とか爆発音みたいなのがたくさん入っていて、それがすごく刺激的でした。
ギターのサウンドも刺激的で……難しい話になっちゃうけど、〈ライン〉という手法で録音されてて、ギターをアンプに繋ぐのではなく直接レコーディング・コンソールに入れてそこで音を歪ませてる。それがデジタルな感じでカッコ良かったんです。Nothing'sでもこの手法はよく使っていて、最近で言うと“Out of Control”でもラインの歪みを混ぜています。音が過激になるんですよ。
NINのアルバムは全部持っているんですけど、この作品を選んだのは1曲目の“Mr. Self Destruct”を聴いて、〈こんなに過激な音楽があるんだ!〉と衝撃を受けたから。他には“Heresy”や“March Of The Pigs”、あと最後の“Hurt”とかも好きですね。
NINって過激なところをフィーチャーされがちかと思うんだけど、“Hurt”みたいな静かな曲もすごく良いんです。トレント・レズナーの歌はすごく好きで、あの人は自分のヴォーカルにエフェクトをかけたりといった小細工はしないで、素に近い形で歌を録っていることが多いんです。下手したらリヴァーブもほとんどかけていないかも。それがすごく生々しくて、目の前で歌っている感じで……たぶん本人のこだわりだと思うけど、それって本当に大変なことで、そういうことを好んでやっているというのもカッコイイですね。
このアルバムは、彼がそれまでに聴いていた音楽がさまざまな形で消化されている作品だと思います。変拍子も入っているし、パンクのスピリットもあるし、ハードコア的な暴力性もあるし……かと思ったら、叙情的なメロディーとギターだけの曲があったり、そのへんが10代の俺にはおもしろかった。ニルヴァーナとか、当時はアメリカの音楽が新しいものに切り替わっていって、子供ながらにすごい刺激的だなと思ってたんですけど、そのなかで俺がいちばん衝撃を受けたのがNINなんです。
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PROFILE/生形真一
Nothing's Carved In Stoneのギタリスト。現在は、最新作『REVOLT』(エピック)を引っ提げた全国ツアーを開催中! その他、イヴェント出演情報などのインフォメーションは、オフィシャルサイト〈www.ncis.jp〉にて!!