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スリー・ブラインド・マイス復刻シリーズ

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o-cha-no-ma LONG REVIEW
公開
2013/09/11   18:00
ソース
intoxicate vol.105(2013年8月20日発行号)
テキスト
text:長門竜也


日本ジャズ史、孤高の到達点

斬新で個性的な新人を見出し、高い録音技術で盤にプレイを刻んでいく。そうしてオーディオ部屋にライヴ会場を出現させようと渾身したマイナー・レーベルが、スリー・ブラインド・マイス(以下、TBM)だった。和ジャズ好きからオーディオ・マニアまで信奉者は広く、常習性ある企画力も無二の輝きを放った。やがて世界中から賞賛を浴びるこのチームは、立ち上げから高潔な信条に貫かれていた。70年6月。主宰の藤井武は日本ジャズの現況を歯痒く思い、友人の佐賀和光と魚津佳也を誘い会社を立ちあげる。現場を探査し、見極め、即刻盤へ記録していく彼らスタンスは、周囲には盲目ハツカネズミの奔走と映った…レーベル名の由来。「ジャズ好きを猫に喩えるけど、彼らに追われる白色ネズミ。白は商業主義に汚されない戒めなんだ」。

発足年の8月に峰厚介の『ミネ』、一週後に今田勝の『ナウ!!』を録音し、ひと月後には市場に並べていた。伝説の演奏を収録した『銀巴里セッション』はその発掘譚が話題となり、鈴木勲の希少セッションをスタジオで再現させた『ブロー・アップ』は日本ジャズ賞に輝き、米修行へ旅立つ日野皓正の勇姿を捉えた『ライヴ!』は同賞2位に躍った。神成芳彦技師が歪む寸前のハイレヴェルで刻んだ溝も「スーパー・カッティング」と異名され脚光を浴びる。東京ユニオンの『北欧組曲』は海外出荷数を15,000枚へ倍増させ、大病を克服した高柳昌行を説得し無伴奏ソロで臨ませた『ロンリー・ウーマン』の完成もTBMならではの執念でなかったか。

「映画でいうならプロデューサー、ちょっと監督かな。名も知れない演奏家のライヴにも、一瞬心を奪われることがある。その意味を見定め、究極まで煮詰め、スタジオで再現させる…それが僕の役目だよ」。廃盤となって久しいそれらTBM作品群が今年、7期にわたり復刻される。「神成サウンド」へ最接近したBlu-spec CDと紙ジャケ仕様で、聴者はまた覚醒させられよう。



第1期(6/5発売)


ミネ/峰厚介
デビュー/植松孝夫
銀巴里セッション/高柳昌行と新世紀音楽研究所
ユニコーン/中村照夫
ブルー・シティ/鈴木勲
グリーン・キャタピラー/今田勝
北欧組曲/三木敏悟、 高橋達也と東京ユニオン



第2期(7/10発売)


モーニング・フライト/福村博クインテット
男が女を愛する時/水橋孝カルテット+2
オランウータン/鈴木勲カルテット+2
トキ/土岐英史カルテット
ガール・トーク/ヤマ&ジローズ・ウェイヴ
スマイル/森山浩二+山本剛トリオ



第3期(8/7発売)


フリー・フォーム組曲/高柳昌行とニューディレクション・フォー・ジ・アーツ
ソネット/ティー&カンパニー
ドラゴン・ガーデン/ティー&カンパニー
スパニッシュ・フラワー/ティー&カンパニー
クール・ジョジョ +4/高柳昌行セカンド・コンセプト
メルス・ニュー・ジャズ・フェスティバル '80/高柳昌行ニュー・ディレクション・ユニット
ロンリー・ウーマン/高柳昌行



第4期(9/11発売)


YELLOW CARCASS IN THE BLUE/笠井紀美子&峰厚介カルテット
BLOW UP/鈴木勲トリオ、カルテット
PHYSICAL STRUCTURE/ジョージ大塚クインテット
SUNRISE SUNSET/福井五十雄カルテット
AIR/今村祐司とエアー
活火山/原信夫とシャープス&フラッツ
ミッドナイト・シュガー/山本剛トリオ



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