あまりにミニマルな、鉄道の孤独な楽しみ。
鉄道を愛する人々が、どのようなフェティシズムに走るのか、日々ぼんやり鉄道を利用しているだけの私は、想像したことはなかった。カメラを小脇に抱えて列車の到着を待ち構える人々、鉄道イヴェントに並ぶ人たち。たまに出くわすこうした鉄道ファンらしき人たちの群れの視線の先を追って見ることもなかった。
そこで、良い機会と思いブルーレイにてリリースされた『eレール鉄道BDシリーズ』運転席展望の中から利用したことのある都電荒川線を試聴してみた。見る前にある程度の想像はしていたが、あまりの演出のなさ(!)に驚く。画面に広がる都電荒川線の線路と駅。運転席から望む街の風景が、線路上の消失点に向かって消えていく。運転手のつぶやきと車内のアナウンス、エンジン音、レールを擦る鉄輪の音。あまりの静寂と運転席だけが知るミニマルなゲシュタルトのゆるやかな変化。この孤独な美しさに早速、観光特急しまかぜの運転席を覗いてみることにした。