HEAVEN'S GATE ©2013 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.
初公開から30年以上の時を経て、監督自らの監修のもと、デジタル修復完全版が今鮮やかに蘇る!
ちょうど1年前のことだ。第69回のヴェネチア国際映画祭。マイケル・チミノの『天国の門』がデジタル修復されて上映されるという。そんなニュースが世界を駆け巡った。胸がざわめいた。何しろあの、『天国の門』である。
70年代末に製作が始められ、その年のクリスマスには公開が予定されていたのだが、監督の完全主義とそれによる時間と人員の増大、経費は膨れ上がるばかりでもはやコントロール不能という現場の状況が大袈裟に報道されて公開は先延ばし、多くの映画ファンはその報道に気を揉むばかりであった。結局公開されたのは予定の1年後で、興行も評価もボロボロ。そしてその結果、伝統あるハリウッドの製作会社を消滅させてしまったのである。78年公開の『ディア・ハンター』で世界的な評価を得て、間違いなくその後のハリウッドを背負って立つ監督となるはずだったマイケル・チミノは、その後は思うような活動が出来なくなり、95年の『心の指紋』以来新作がない。
しかしもちろん、そんなエピソードがこの映画の評価を下げることにはまったくならない。それがこの映画の呪いでもある。つまり公開当時はメディアの悪評や「完全主義の監督」といったイメージに捕われて、多くの人がまともにこの映画を観ることがなかったのだ。観る前に評価は決まっていた。観なくても十分だった。
HEAVEN'S GATE ©2013 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc. All Rights Reserved.
だからこそのリバイバル。映画がその映画のもたらしたエピソードから解放され、その映画自体としての姿をようやく見せられる時が来たのである。それだけの時間や人を費やさねばそこに定着し得なかった荒野の空気やそこに生きる人々の息づかい、痛みや悲しみや喜びが、一目スクリーンを観ただけで伝わってくる。一瞬にして私たちは時を超え、当時を生きる人々と一緒にその空気を呼吸し始めることができる。これこそ3D映画。時間軸も加わるから4Dか。とにかく女たちの涙や男たちの血や汗や誇りが私たちの身体にまとわりつく。そこで何が起こったのか、どんな人が生きていたのか、誰が何をしようとしていたのかが、言葉にならない肌触りとして伝わってくる。このざらついて取替不可能な感触……。
リアルタイムに生きることや事件の現場にいることで逆に目を曇らされ、その場でそれを観ることがそれを観ることにならないことがある。今の日本社会に住む者ならば、きっと思い当たるはずだろう。70年代始めに、いつまでたってもどこか霧の向こうにあるアメリカ社会に向かって「What's going on」と歌ったマーヴィン・ゲイの果てなき憂鬱は、今もまだ続いているのだ。映画自体の評価の問題だけではなく、私たちが今を生きるためにどうしても必要な行為として、私はこの映画を配給することに決めた。私たちの未来は、過去の中に埋もれてもいるのだ。
映画『天国の門 デジタル修復完全版』
監督・脚本:マイケル・チミノ
音楽:デヴィッド・マンスフィールド
撮影:ヴィルモス・ジグモンド
出演:クリストフ・クリストファーソン/クリストファー・ウォーケン/ジョン・ハート/イザベル・ユペール/ジェフ・ブリッジス
配給:boid(1980-2012年 アメリカ)
◎10/5(土)より、シネマート新宿、10/26(土)よりシネマート心斎橋にて公開!
http://www.heavensgate2012.com