ハマ・オカモト先生が聴き倒しているソウル〜ファンクを自由に紹介する連載!
【今月の課題盤】D'ANGELO 『Voodoo』 Cheeba/Virgin(2000)
僕がジョン・メイヤー・トリオを通じて知った、ピノ・パラディーノというウェールズ出身のベーシストがいます。80年代から活動している世界的に有名なセッションマンで、ポール・ヤングやチャカ・カーン、エルトン・ジョン、ザ・フーなどなどに参加しているんですが、そのなかでもこのディアンジェロ『Voodoo』という作品が名盤だということを当時どこかで見て。僕は91年生まれなのですが、実は自分の小さい頃の音楽をよく知らないんですよね。で、さぞかし良いんだろうと思って、忘れもしない、移転前のタワレコ新宿店で当時の僕としては珍しく新品で買ったんです。で、聴いてみたら……正直つまんなかった(笑)。その頃はPファンクとか派手な作品をよく聴いていたこともあって、これの何がいいのか全然わからなかったんです。その後5年くらい『Voodoo』は眠りにつくことになるのですが、去年の年末頃、僕が参加させてもらった星野源さんのシングル“ギャグ”のカップリング曲“ダスト”のレコーディング前に、『Voodoo』の冒頭曲“Playa Playa”が源さんから参考音源として送られてきて、リズム・セクションはこういう感じでやりたいと。ディアンジェロか……と思いながらも、音楽嗜好も幅広くなったいま聴いたらどう思うんだろうと、ふたたび眠らせていた盤を引っ張り出して聴いてみたら……ヤバーイ(笑)! ホント音楽ってタイミングですね。60s〜70sのものが好きな僕にとって、その時代のソウルを受け継ぎつつも、ヒップホップなどを通過している時代だからこその音、それがネオ・ソウルというものだと思うんですが、そこがツボでした。
ちなみに、ピノは“Playa Playa”のほかにも“Chicken Grease”など数曲に参加しています。この人はすごく背が高くて職人的にバキバキ弾きそうな雰囲気があるんだけど、とてもユルい空気で弾く人で、白人のベーシストのなかではいちばんグルーヴしてるんじゃないですかね。ディアンジェロのライヴではピノで始まるイントロが多いんですけど、一人で成立しちゃう感じ。〈ベースがカッコイイ〉ということの真髄を見せてくれるのはピノ・パラディーノじゃないかと。奏法に関しても弾けないものがないんじゃないかってくらい引き出しも多いんです。最近だとホセ・ジェイムズやアデルなどの作品に参加しているので、気になった人は聴いてみてください。
ここで『Voodoo』を知って聴く人もいると思いますが、なかには当初の僕みたいになる可能性もある。イントロ長いし、とか(笑)。でも絶対イイと思う時が来る作品ですよ!
▼星野源の2013年のシングル“ギャグ”(スピードスター)
PROFILE/ハマ・オカモト
OKAMOTO'Sのヒゲメガネなベーシスト。最新シングル“SEXY BODY”(ARIOLA JAPAN)が大好評! そして来年1月15日にはニュー・アルバム『Let It V』がリリースされます!!!! また年末に向けてイヴェント出演も多く予定されているので、詳しくは〈www.okamotos.net〉へGo!