満を持して開催された昨年の日本公演の歴史的記録が映像でリリース
今年70歳を迎えたヤンソンスの破竹の勢いは止まらない。昨年発売された同コンビによる日本公演の直前まで録音を行っていたBR klassikレーベルの『ベートーヴェン:交響曲全集』のCDでは、現代オケの到達点とも言える演奏水準を確保した上で、ヤンソンスの〈今〉のベートーヴェン解釈が興味深く散りばめられていた。今回発売される映像は 「ベートーヴェン・ツィクルス」として開催された両者の昨年来日時の実況。全てサントリー・ホールでのNHKによる収録(11/26-12/1)で、アンコール曲も2曲収録されている。ヤンソンスの基本的な解釈は前出のCDと同じとはいえ、そこにはさらにその場に同席したものにしかわからない〈感興〉が加わり、極めて魅力的な映像作品となった。
当日はどの会場も白熱の演奏のなか、万来の拍手が鳴り響いたと聞く。映像作品を観るときの常として、その日、その時のひとりの観客として没入できるかということを気にするならば、この作品ほどコンサート作品として相応しいものはないかも知れない。これが映像作品の醍醐味であろう。尚、今回発売されるDVDバージョンではなく、もう一方のブルーレイの方ではさらなるアドヴァンテージがある。通常の5.0チャンネルサラウンドに加えて、2チャンネルの24bit/96kHzの非圧縮のハイレゾ音源が何と収録されている。例えばこのブルーレイ音源を通常のステレオ装置に繋げば、映像はなくても、ハイレゾの高品位オーディオ音源としても機能する。ブルーレイでは映像も画質が優れているし、さらに音質にも気が配られているのだ。
ヤンソンスのベートーヴェン解釈は、既に多くが語られているのでここでは蛇足であろう。ひとつ言えるのは、例えコンサートに行けなかったとしても、今や追体験が容易にできるという事。もしかして当日聴いた席より環境が上かも知れない、としたら微妙に困ったことになるかも知れないが。