ハマ・オカモト先生が聴き倒しているソウル〜ファンクを自由に紹介する連載!
【今月の課題盤】山下達郎 『JOY –TATSURO YAMASHITA LIVE–』 MOON/ワーナー(1989)
今回は、山下達郎さんの89年のライヴ・アルバム『JOY -TATSURO YAMASHITA LIVE-』を紹介します。これは先日亡くなられたドラマーの青山純さんが参加している公演を収録していて、改めて聴き直してみて、ぜひ皆さんに知ってもらいたい作品だなと思ったわけです。〈JOY〉については好きすぎて語るのも恐れ多いのですが……。自分もバンドをやっているからこそ、ライヴがスタジオ盤を超えるというのはいちばんすごいことだと思っていて、それを実際に体現しているのが達郎さんのステージなんです。MCもすごくおもしろいし。そういうところも含めて人間的であり、音楽的。ライヴ盤なんだ!と驚くほどハイクォリティーで、60〜70年代の海外のバンドによくある〈下手じゃん!〉っていうのを踏まえたカッコ良さも一方ではありますが、スタジオ盤を聴いた感覚のままノレて、なおかつライヴならではのマジックもあるという意味ですごい!
特に達郎さんは、〈ファンクはリズムからじゃないと出来るわけがない〉とおっしゃっているほどリズムにこだわりがある方で、当時そんな達郎バンドのリズム隊を担っていたのが青山純さんとベースの伊藤広規さん。ライヴはもちろんスタジオ・レコーディングにも参加している名物リズム隊で、有名な曲だと“クリスマス・イブ”“RIDE ON TIME”などで演奏されています。僕の勝手なイメージで、達郎バンドは山下達郎さんの音楽を崩さないよう、徹底した指示のもとにプレイしているのかなと思っていたのですが、よく聴くと、やりたい放題……とまでは言いませんが、各メンバーの色がよく出ているんですよね、主張があるというか。なかでも、伊藤さんは普通の8ビートを全部スラップで弾いたりするし、青山さんのドラムは生き物っぽかったり、そういうところがカッコイイ。いまの音楽は人間が実際に弾いているのかわからないものもより多くなっていて、それが決して悪いことではないけれど、こういった名演を観せてきた先人から学ぶことはすごくあるなと思いました。
ちなみに、〈JOY〉は曲ごとに会場が違うんです。ひとつのライヴを通して収録してるのではなくて、達郎さんが約10年間に渡るライヴの音源を聴いて、そのなかでいちばんいいテイクを選んでいる——真っ当なプロセスだし、なるほどなと思いますが、なかなかできることではないですよね……。なのにあの統一感! 個人的には、青山さんのフィルやシンバルの鳴らし方をずっと聴いてきたから、もうそれが聴けないんだ……と、改めて〈JOY〉を聴いて残念な気持ちになりましたが、これを機に、多くの人が青山さんのプレイの素晴らしさに気付いてもらえたらいいなと思っています。
PROFILE/ハマ・オカモト
OKAMOTO'Sのヒゲメガネなベーシスト。CDデビュー5周年となる2014年、1月15日にリリースされる新作『Let It V』(ARIOLA JAPAN)を控えてますます絶好調! 年末は大阪にて〈RADIO CRAZY〉、幕張では〈COUNTDOWN JAPAN〉に出演します。詳細は〈www.okamotos.net〉へGo!