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Irma Osno、Shin Sasakubo『アヤクーチョの雨』

カテゴリ
o-cha-no-ma LONG REVIEW
公開
2014/01/13   10:00
ソース
intoxicate vol.107(2013年12月10日発行号)
テキスト
text:梅田NU茶屋町店 小畑雄巨


これはなんだ? 未知の世界への扉がペルーから開け放たれた!

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瑞々しいギターのシンプルなフレーズで幕を明け、前作『翼の種子』同様に美しい調べが続くのかと思いきや、ほどなくして現れるハイトーンの女性ヴォーカルの異質さに虚をつかれる。ペルーのフォルクローレをルーツに持ち、その地で長く活動していた笹久保の作品なのだから、おそらく南米のシンガーなのだろうとは思ったが、アジアのようでもありアフリカのようでもある、その出会ったことのない余りにも斬新かつ新鮮な響きに“これはなんだ?!”という、未知の世界への扉が一気に開け放たれた、そんな感覚を味わうこととなった。

そのシンガーは、民謡の宝庫と呼ばれるペルー山岳地域の町アヤクーチョに生まれ、羊を飼いながら育ったイルマ・オスノという女性だったが、斬新と感じた歌 は、その地で歌い継がれる伝統的な歌そのままというから驚きだ。そう、本作はとにかく驚きの連続だ。ペルー最大のレーベルから過去10作以上のソロ作を発表し当地で絶大な評価を得、日本でも着実にファンを増やしているギタリスト笹久保伸は、この初といっていいコラボ作でもフォルクローレを基にした演奏を聴かせるが、今までに無い、新境地といっていいアプローチも多く試みており、その音色は、木々のざわめきや、陽光に照され揺れる水面のように繊細に美しく、なおかつ大地の力強さを感じさせ、生命力に満ち溢れている。

そんな彼ならではの音世界とイルマの不思議な共存は、彼の作品の中でも未だかつてなくぶっ飛んでいて、 とくにパーカッションやドラムが入る曲からは予定調和ではない初期衝動的な破壊力さえ感じられ、常識とマンネリを打ち破るという意味で“ポスト・パンク的”であり、そして“新たな音楽”を更新する世紀の傑作となった!! OLAibiやYOSHIMI(BOREDOMS、OOIOO)ファンも必聴。