ミュージカル〈RENT〉への出演も話題となっているCODE-Vのナロが、NASTY NARO名義でソロ・デビュー作『Last Night』を4月26日にリリースした。全編自身がプロデュースを担当し、R&Bやヒップホップを意識した仕上がりとなった本作は、これまでのCODE-Vとは異なるイメージの内容だ。今回のインタビューでは、ソロ作の制作過程やグループとの意識の違い、今後の夢まで、さまざまなことを語ってもらった。
僕にとって、NASTY NAROという名前は、音楽活動の原点なんです
――今回、ソロ・アーティストとしてのデビュー作ということで、とても基本的なことから伺っていきたいと思うのですが、そもそもNASTY NAROという名義で活動をスタートさせたのはいつ頃からですか?
「ネット上で活動をスタートさせたのが、高校2年生ぐらいだから、いまから14年ぐらい前ですね。その時はオリジナル曲ではなくて、ミュージック・ソウル・チャイルドやシスコ、ボーイズIIメンをカヴァーした音源を、そういう音楽が好きな人たちが集まるサイトにアップしていました。海外の有名なR&B曲のインストゥルメンタルに乗せて、自分の個性を出しながら海外の味を入れていく、それがうまいとサイト内でどんどん有名になっていって、いろんな事務所の方から連絡を頂きました」
――オリジナル曲を作り始めたのは……?
「高校を卒業してソウルで作曲家さんと1年ぐらい一緒に暮らしていたころからです。その時は、メロディーをちょこちょこ作って参加してたけど、練習生だったから、クレジットに名前は入っていません。ただ、将来的に自分で作った曲を歌うような、シンガー・ソングライターみたいなものもやってみたいと思ってましたけど、基本的には歌手志望で。当時はたくさんの人々から認められるようなヴォーカリストになりたいっていう気持ちが強かったです」
――そもそも、作曲家の方と同居するようになったのは、何がきっかけだったんですか?
「練習生として事務所に入ったときに、レッスンをしてくれる先生としてその作曲家の方がいたんです。当時の社長とメイン・プロデューサーの方から、〈(先生と)一緒に住んだら?〉って言われて。普通に練習生として暮らすよりは、面倒を見てくれる大人が一緒にいたほうがいいし、僕ができないところを教えてくれる方だったので、他の練習生の3人で住んでました」
――なるほど。今回、NASTY NARO名義でソロ・デビューをすることになりましたが、NASTY NAROという名前を使おうと思ったのはなぜですか?
「僕にとって、NASTY NAROという名前は、音楽活動の原点なんです。高校生の時に抱いた音楽への情熱を思い出して活動をしたいっていう気持ちがあって。NASTYっていう言葉の意味は、キレイではないかもしれないけど、この名前を冠することで、初心に戻れるんです。当時この〈NASTY〉っていう単語を選んだのは、発音とか字面とか、デザイン性とかを考えたときに、オシャレだなって。NASTYには、凄いっていう意味もあるし」
――そして、このタイミングで、個人名もNALAWからNAROに変更して。
「NALAWも自分で選んだんですけど、初めての人はNALAWをナロとは読めないなって。だから、NASTY NALAWだと、わかりづらいなって思ったんですよ。ポップ・ミュージックをやっていくうえで、わかりやすさって大切じゃないですか。初めて見た人がすぐ読めるような名前にしたかったんです。将来的には、CODE-Vでの表記もNAROにする予定です」
今回の作品に関しては、CODE-Vというグループのイメージを外していくことを意識していて
――そんな、初心にかえる気持ちもある〈NASTY NARO〉名義でのソロ作ですが、実際に制作がスタートしたのはいつぐらいからですか?
「ソロ・デビューの話が上がったのは昨年末で、実際に制作に入ったのは年明けからです。2月ぐらいまでに7曲ぐらい作って、そこから曲を選んで、レコーディングは3月です。今回、ソロ作を出させてもらうきっかけになったのは、〈RENT〉への出演が決まったことが大きくて。このチャンスを逃すまいと。ちょっとバタバタしましたけど、一生懸命作ろうと思って取り組みましたね」
――ナロさんの楽曲制作について少し掘り下げて伺いたいんですが、楽曲を作るときは、曲が先ですか? 歌詞が先ですか?
「毎回違うんですけど、基本的には曲が先に出来て歌詞をつけるか、曲と歌詞が一緒に出来るかのどちらかです。トラックはある程度自分の中のイメージがハッキリあって。コードはこんな感じで、全体的なアレンジはこんな感じにしたいですっていうリファレンスをいくつか出していく感じ。出来上がったら、そこにまた改めてメロディーをのせていきます。僕はサビから作ることが多くて、サビの修正って実はあまりないんですよ」
――そうなんですね。
「ただ、今回収録されている曲のなかで、4~5年前からあった“Without you-長い旅路-”は、原曲とサビのメロディーもBPMも変えて作り直して。次に古い“Sweet Butter”は、昨年の“Loving you, Love me”を制作していたころの曲。もともとCODE-Vでやろうかなって思ってた曲なんです。K-POPが好きな方が聴いて耳馴染みがいい曲なんじゃないかなって思っています。他の3曲は、今回の作品のために作った曲ですね。今回のアルバムは、ロマンティックな歌詞だったり、女性に向けたものも多いので、それもポイントになっているかなって。R&Bアーティストって、甘い歌詞のものって多いじゃないですか」
――確かに。歌詞に関しては、YHANAELさんとの共作ですが、YHANAELさんと話しながら作っていく感じですか?
「そうですね。基本的には男性目線で作ってくださいっていうリクエストはしていて、打ち合わせの時にテーマを伝えたり、詩の中にこういうフレーズが欲しいって言ったりして、そこからYHANAELさんが作ってきてくれる。そこから自分のなかで、違うなって思うところは修正してもらって。YHANAELさんは女性だからかもしれないんですけど、女性が聴いて好きになりそうなフレーズとか上手なんですよね」
――今回、アルバムのなかでリード曲を“Last Night”にしたのはなぜですか?
「CODE-Vとのギャップを感じられるかなって。聴いて〈え!?〉って感じになる曲を選びました。僕はラッパーではないですけど、サビがラップじゃないですか。CODE-Vにはラップのイメージはあまりないと思うんですよね。CODE-Vは、“そばにいるよ”ぐらいをきっかけにラップをやろうとしたこともあるんですけど、チャンスも理由もなくて。今回の作品に関しては、CODE-Vというグループのイメージを外していくことを意識していて。CODE-Vのなかに、こういうメンバーもいますよっていう感じというか。そういう見せ方を求めて作りました」
いつも聴きやすいメロディーのものを作りたいっていう気持ちは強くて
――CODE-Vの延長ではなくて、違うもの、というお話がありましたが、ナロさんがCODE-Vの楽曲を作るときと、NASTY NARO名義で作るときって、気持ち的にも異なるんでしょうか?
「例えば“ROKUTOUSEI”の場合は、3年前ぐらいから〈六等星〉をテーマに曲を作りたいって考えていたんですが、楽曲に関してはJ-POPを作ろうって考えて制作した曲なんです。自分の好みとはまた別で、J-POPを好きな人が聴いて、いいメロディーだなって感じてもらえる曲にしようって思ってて。“代々木”や“たからもの”もそうなんですけど、CODE-Vの楽曲を作るときには、J-POPっぽさ、みたいなものを意識します。ソロの時は、そのJ-POPのフィルターを外していて。だから、制作をする上でのベースとなる意識が違うというか」
――一方で、共通しているものもあったり……?
「いつも聴きやすいメロディーのものを作りたいっていう気持ちは強くて。ディープなものってたくさんあって、そのなかで愛されている曲っていうのもいっぱいあるんですけど、わかりづらい音楽って楽しくないなって思ったりするんですよね。わかりやすさと、ある程度自分のスタイルを入れることは考えています」
――キャッチーなものを作りたいっていう部分は共通しているけど、NASTY NAROに関しては、J-POPという意識はないと。
「そうそう。同じR&Bでも、洋楽とJ-POPって全然違うし。ただ、今回のアルバムを作るにあたって、時間もあまりなかったし、まったく違うものを出してもなぁ……という気持ちもあったので、聴きやすさを優先して作りました。もし次に、NASTY NAROとして新たな作品を作ることがあれば、さらに僕の個性とか好みとかを意識したものになると思います。R&Bが好きでずっと聴いていた時期もあるので、より洋楽っぽいアルバムを作りたい」
――ソロ作がリリースされたいま、NASTY NAROとして次にやってみたいことはありますか?
「クラブでのライブですね。たくさんの人の前でやるのも楽しいですけど、これまでとは異なるお客さんの前で、パフォーマンスをしてみたいです。あと、チームを組みたい。ラッパーのエイサップ・ロッキーのクリエイティヴ・チーム〈A$AP MOB〉みたいな。デザイナーとか、トラック・メイカーとか、異なる仕事をしながら集まるチームを作って、どんどん世界観を広げていければなって思っています。NASTY NAROとしては、最終的にプロデューサーになりたい。制作を全体的に指揮するような。自分自身、ロックやアイドル、R&Bでもなんでも作れるので、カッコいい音楽を提案していけるようなプロデューサーになっていきたい。ベースはブラック・ミュージックですけど、いまはいろんなジャンルが混ざった音楽がたくさんある時代だから、ジャンルの枠に捕らわれないアプローチしていきたいなと思っています」