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第2回掲載【完全版】世武裕子×岸田繁・佐藤征史(くるり)対談
聴き手:小沼純一(音楽・文芸批評家/早稲田大学教授)
現在配布中のintoxicate vol.77に掲載されている世武裕子×岸田繁・佐藤征史(くるり)対談の完全版です。誌面ではスペースの都合上、泣く泣く削った箇所が非常に多かったため、、このブログに完全版を三回に分けて掲載いたします。
第1回はこちら
(写真左から、くるり岸田さん、佐藤さん、世武裕子さん)
せぶひろこ。滋賀県生まれ、京都育ち。パリ・エコールノルマル音楽院映画音楽作曲科を首席卒業。2008年、デビューアルバムとなる「おうちはどこ?」をNOISE McCARTNEY RECORDSよりタワーレコード限定でリリース。
小沼(以下、小):最初から映画音楽を学ぶところに行こうと思っていたんですか?
世武(以下、世:小学生のとき『ジュラシック・パーク』とアニメの3本立てとどっちか迷って、『ジュラシック・パーク』を観たんです。それでこの道がひらけてる。お祖母ちゃんと観にいって、「アラレちゃんのほうが絶対いい」と言われたんですけど、「こっちにしてみる」と言った甲斐があった(笑)
小:もしアラレちゃんに行ってたら……
世:声優になりたいとか言ってたかもしれない(笑)
小:5歳ではじめて曲を書いたということですが、そのときから現在までのあいだに、スタイルのうえでどんな変化がありました?
世:昔からワルツ調が好きで3拍子の曲ばっかり書いてて、いまに至っても8割くらい3拍子の曲ばっかり書いてるんですよ。いろいろと経緯はあるんですが、やっぱり自分が好きな音楽を書こうと思ったんです。高校生のときアイルランド音楽に出会って、わたしはアイルランドに住んで地元の人と音楽をやって生きていこうと思ってたんですけど、ただそれって楽しいけど作曲家になりたいなら違うなと思って。なので、カラーは変わってないんですけど、音楽のスタイルは吸収している音楽でちょっとずつ変わってはいるかな。
小:「作曲家」なんですね。
世:でも弾きたいんです(笑)。もちろん弦楽器は弾けないので弾いてもらいますが。最終的に音にならないと音楽の最後の喜びが……、楽譜書いてるだけではちょっと……というのがあって。いろんな人が参加してきて、どんどん変わっていくというのはそのぶん難しいと思いますが、難しいからこそ大事なんではないかと。人が加わることでうまくいかなくなることって多いと思うんです。そこで最後どこにたどりつけるかというところまで到達しないと、作曲として完成しない。そういう作曲の難しさと楽しさがある気がします。
小:スコアを書いて終わり、ではない。書いたものは元にしているけど、演奏家が来て、一緒にやっているうちに変わってくることもある。そういうフレキシブルなところも残したうえで作品なんだ、と。
世:アルバムでも一部即興をしているところがあります。その瞬間にパッとできるものって、つくり込んだものとは別なんですけど、それとつくりこんでるものが一緒に入ってる曲がいくつかあって、そういうのはすごく楽しい。そういう意味でも、楽譜に全部書いてしまうのは違うかなという気がしています。
岸田(以下、岸):即興演奏が入っているということは聴いてすぐわかったんですけど、我々の場合は……僕は自分で自分のことを作曲家やと思ってるんですよ(笑)。ミュージシャンじゃないんです。楽器がそんなにうまく弾けない。
小:そうかな?
岸:僕は自分の範囲でしか弾けないんで。
で、その話でいうと、僕らのほうが即興が多いんです。自分で曲をつくって、こうしたい、ああしたいというのがあって。そこから外れる度合いというのは、僕らはバンドでやるわけですから、世武さんよりも多い。それは自分の思っていることができないという否定的な意味合いではなくて。逆に言うと、演奏している人たちに委ねている部分も多い。
世武さんのこのアルバムを聴いてると、だらっとしている部分の塩梅がクセになったんです。ちゃんとコンポジションされている部分とそうじゃない部分のバランスがある。
小:世武さんは、密な人間関係というか、パーソナルな関係のなかで音楽をつくることが好きなんでしょうね。
世:人間がすごく好きということはあります。それと音楽は土臭くてなんぼ、と思っているので。テクニックがすごい人ならなんぼでもいると思う。そういう音楽って、瞬間的に「かっこいい」と思うのと同時に「そんな好きじゃない」という気持ちがある。テクニックにはしらないように、出てきたものを大切にするためには、結局人間力を磨かないとだめやったりするので。そういう意味では、人間関係の密さとか人間として自分がどうかということの方が、テクニックよりも大事です。
(つづく)
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この続きは2/9(月)アップ予定です。お楽しみに。