トップ > 7/9日(土)Naruyoshi Kikuchi Presents "HOT HOUSE"

掲載: 2011年07月01日 19:00

更新: 2018年08月07日 03:31

文/  小林

 

「ホットハウス」に行こうか行くまいか迷っている人の多くは、ドレスアップをしていかなければいけない、カップルで踊らなければいけない、ということについて心配をされているのではなかろうかと推測されますが、心配は無用です。5月に青山CAYで行われた第2回に汚らしい普段着で参加して、誰とも踊らなかった自分でもじゅうぶんに楽しかったんですから。

ただし、これは思いっきり自分のことは棚に上げて書きますが、ドレスアップして出かけ、会場で異性を誘って踊る、その行為そのものが、湯山玲子さんが書いている通り、求愛に他ならないわけで、そしてまた、その「敷居の高さ」こそが、菊地&大谷コンビが『アフロ・ディズニー』で提起した20世紀的幼児性を乗り越えるためのささやかな一歩であることも確かでしょう。

放射能に怯えながら国の行方を憂うしかないならなおいっそうのこと生存本応のおもむくまま求愛行為に思う存分耽ってみたいという男性諸氏には、男性の参加者が不足している(菊地さんの日記参照)というグッドニュースもあります。つまり入れ食いだということです。(違ってたら申し訳ない)

そんな、ビ・バップの激しい演奏とともに、「ホットハウス」のパーティーでは、ディスコで踊り狂った彼が体感したはずのダンスホールの風俗的な雰囲気と、実際に汗ばむ異性の身体や匂いや息づかいがペアダンスの人肌を通じて感じられる、リアルで色濃い時間が約束されている。

ご存じのとおり、ディスコからクラブに移行したときに、様々な変化が起こった。そのひとつはダンスフロア のコミュニケーションの方法である。かつて、ダンスフロアのダンスは、求愛だったり、駆け引きだったりのセックスに至るまでの前戯的な意味合いがあったの だが、クラブになってからは、踊る個人自体の感覚が単体でエクスタシーに陥るようになり、もはや、その音楽体験がセックスそのものとなってしまった。
intoxicate vol.92 「ホットハウス──ポスト″クラブ″としてのダンスパーティーの再生(text:湯山玲子)」より

チャーリー・パーカーやディジー・ギレスビーのいた40年代のニューヨークから、ミュージシャンではなくDJがいるクラブにおいてバップが復権した80年代後半のロンドンを経由して、2011年の東京で総括されるジャズとダンスの歴史を目の当たりにできるという意味でもとても貴重な機会であるわけで、とにもかくにも、こんにちの東京でこれほど楽しい夜遊びは無い、と言えると思います。7/9(土)はいざ日本橋へ。

Naruyoshi Kikuchi Presents "HOT HOUSE"
7/9日(土) 17:15開場/18:00開演
会場:日本橋三井ホール

司会/進行:菊地成孔&大谷能生(JAZZ DOMMUNE)

コンセプチュアルアドバイザー:瀬川昌久

DJ:沖野修也 (KYOTO JAZZ MASSIVE) /NADJA/菊地成孔

生演奏:リアル・バッパーズ・フロム・東京1&2
坪口昌恭(P)、平戸祐介(P)、藤井信雄(ds)、服部正嗣(ds)、
大儀見元(perc)、須長和広(b)、永見寿久(b)、津上研太(sax)、
纐纈歩美(sax)、エリック・ミヤシロ(tp)、類家心平(tp)
リンディホップダンス インストラクター: Amore&Lulu(Swing Gigolo)

http://www.kikuchinaruyoshi.net

ジャズミュージシャン菊地成孔が初めてオーガナイザー/プレゼンターを務めるダンス・パーティー。内容は至ってシンプルで、「オールドスクーラーのビーバップで踊る」というものだが、DJカルチャーでも所謂クラブジャズ・カルチャーでもなく(パーティーのレジデントDJとして菊地成孔本人とNadjaが配され、今回は世界的な支持を集めるジャズDJ沖野修也がゲストDJとして参加するが)、菊地の呼びかけで集まった東京ジャズシーンの一線級メインストリーマー達が、あくまでダンス・ミュージックとしてビバップを演奏する。という点と、楽曲のBPMに沿って、ニューヨーク式のカップルダンサー(リンディ・ホッパー)と、ロンドン式のソロダンサー、更にはラテンのダンサーが同一のフロアで一堂に会し、バトルにも似たせめぎ合いを見せる。というバリアフリーぶりがパーティーの要。

顧問として日本のジャズ&ダンスフロア文化の生き証人、瀬川昌久を擁し、「ジャズとダンスの歴史」レクチャーや、日本のNo1リンディホッパー・カップルであるアモーレ&ルルによるステップレッスンが毎回コンテンツに組み込まれ、ジャズとダンスに関する歴史的/実体験的な教養も身に付くという側面もある。また、4~50年代式ジャズ~カップルダンス文化の中枢であるドレスアップ(ドレスコードこそ無いが、フロアはダンサーズ・シックに溢れている)と、1曲ごとにパートナーを変える(選ぶ)という愉しみもパーティーに艶を添える。踊らず鑑賞派の参加も大歓迎。進行役として、菊地と彼の盟友、大谷能生のコンビがヒップホップ式の2MCスタイルで登場するのも楽しい、21世紀のオトナの社交文化、その最先端。