UKを代表するモンスター・バンドへと成長を遂げたアークティック・モンキーズ、約2年振りとなる4thアルバム。リリースの度にサウンドを進化させ、世界中を驚嘆させるアークティック・モンキーズが本作で再びロック史を塗り替える。 (C)RS
JMD(2011/04/07)
UKを代表するモンスター・バンドへと成長を遂げた、アークティック・モンキーズが約2年振りとなる4作目のアルバムをリリース!前作に続き、相性抜群のジェイムス・フォード(シミアン・モバイル・ディスコ)をプロデューサーに迎え、ロサンゼルスの伝統的なスタジオ=サウンド・シティ・スタジオ(ニルヴァーナ、マイケル・ジャクソン、レッド・ホット・チリ・ペッパーズ等が過去にレコーディング)にて行われた。リリースの度にサウンドを進化させ、世界中を驚嘆させるアークティック・モンキーズが本作でふたたびロック史を塗り替える!
Hostess Entertainment
発売・販売元 提供資料(2011/03/30)
しゃかりきなまでに正確無比、リズム・言葉・ギターとそれぞれの機能を特化し、研ぎ澄ました彼らの音楽からは、年齢に反して達観している・・・・・・との印象を抱いてきた。<しゃかりき>こそ若さの表れ!とも言えるが、ロックの定石とされるいきり立つ契機≒苛立ち、反抗、青春の懊悩といった私的で青臭く、ベタついた情動は当てはめにくい世代のバンドだ。歌詞にしても、比喩や言葉の選び方など感性の鋭さは買うが、常に観察者、悪く言えば窃視者の視点から描かれたその世界において、歌い手の存在感は実に薄い。ハートより頭が先に作動する賢い技巧派。感心させられても、感動はしない。その意味で、この4作目『Suck It And See』は新鮮だ。歌のフロウを重視し、メジャー・コードに寄った曲作り、リヴァーブの微光を放つ流線型のギター、コーラスが映える広い音空間。持ち前のリフの妙とロールするビートで聴かせる曲も健在ながら、本作の大半を占める米国的なサーフ・ロックと英国の泣き(ニュー・オーダーやモリッシーの王道アンセムが浮かぶ)が完璧に融合した楽曲群は、ライターをかざしての合唱が相応しい。そうした安易な快感を許さず、緻密な音作りと曲がりくねった歌詞で、聴き手に挑むように突き進んできたこれまでの3枚。いつまでそんな調子で続けるの?と感じてもいたので、頭ではなく、ロジックで説明できないハートの欲求に従ったかの如き本作の無防備であけすけな美は、大歓迎である。
bounce (C)坂本麻里子
タワーレコード(vol.332(2011年5月25日発行号)掲載)
デビュー当初、<10代の代弁者>として熱狂的な支持を集めたアークティック・モンキーズが、その後どのように<大人のバンド>へと成熟していくのか。前作『Humbug』(2009年)から模索を始めていた、その問いに対する理想的な回答がここにはある。このニュー・アルバム『Suck It And See』を特徴付けているのは、レコーディングが行われたLAの夕暮れ時を思わせるような、ロマンティックで黄昏れたムード。初期作品の大半を占めていた若さの象徴である性急なビートは影を潜め、ゆったりと落ち着いたテンポの楽曲が並んでいる。また、アレックス・ターナーのヴォーカルも前作以上に大人びていて、深みと陰影を感じさせるようになった。そして何より大きな変化は、50年代のポップ・ミュージックを下敷きとした、甘いコード進行の流れるようなギター・ストロークが多用されていること。それによって、従来の彼らが得意としていたギター・リフ主体の曲と比べると、柔和でレイドバックした印象が強まったと言えるだろう。最初にも少し触れたように、成熟した<新しいアークティック像>をめざしたという意味で、『Humbug』と変わりはない。だが、ストーナー・ロックの大物・ジョシュ・オムをプロデューサーに迎え、ヘヴィーでサイケデリックな路線に突き進んだ前作は、あまりの急展開でファンを置き去りにしてしまっていた。その点、今回の新作はよりスマートに新しいことをやり遂げ、無理のない自然な形での成熟に成功している。
bounce (C)小林祥晴
タワーレコード(vol.332(2011年5月25日発行号)掲載)