1989年ニュージーランド出身で、英国ロンドンを拠点にシンガー・ソングライター/プロデューサーとして活動する、いま最大級の期待の新人、ウィリー・ムーン。アルバム・デビュー前ながら、これまでにリリースした3枚のシングルでたちまち2013年シーン最注目ニュー・カマーの仲間入りを果たした。キャブ・キャロウェイやマイケル・ジャクソンの圧倒的なパフォーマンス・エネルギー、ラモーンズの刹那的狂気の美しさ、そしてフィルム・ノワール(1940~50年代米、1960年代仏で流行した、主にマフィアを主役にしたハード・ボイルド・スタイルのクライム・ムーヴィー群)のスタイルが大好きだと言う彼は、短く揃えたヘア・スタイルにタイトなスーツという端正なファッションに身を包み、50年代のジャズ/R'nBから2013年現在のエレクトロ/トリップホップ/ダブ・ステップまで、ありとあらゆる音楽要素を力技で合体させた全く独自の音楽でシーンの話題をさらってきた。そして全世界のファンが待ちに待ったデビュー・アルバムが遂に登場。既発表のシングル5曲に新曲7曲を加えた全12曲でのリリースで、ほぼ全曲でウィリーが作曲/プロデュースを担当。ストリングスとバック・コーラスを導入したゴージャスなオープニング・トラック#1、そしてルース・ブラウンのヒット曲を数多く手掛けたルディ・トゥームス作曲の「I'm Shakin'」をカヴァーした#8では2011年リリースの#2同様、元パルプのメンバーで現在はジャーヴィス・コッカー、M.I.A.、フローレンス&ザ・マシーン等の作曲/プロデュースでも知られるスティーヴ・マッキーが作曲とプロデュースで参加。#10は奇抜な呪術師ルックで人々の度肝を抜いた超変人ブルース・シンガー/ピアニスト、スクリーミン・ジェイ・ホーキンスのカヴァーだ。
発売・販売元 提供資料(2013/02/27)
USではジャック・ホワイトのレーベルからデビューを飾るロンドン在住のこの男、なるほどジャックが気に入るのもよくわかる。50年代のロックンロールやそれ以前のブルースが好きでたまらないのだろう。そのあたりの衝動と熱と荒っぽさを逃すことなく冷凍保存し、ヒップホップやダブステップの方法論をブチ込み、鍋に入れて強火で解凍した……というような音と歌の在り方だ。荒々しい歌&咆哮はとてつもない熱量で目の前のものをなぎ倒し、聴く者の心をザワつかせる。エイメリー"1 Thing"っぽいビートで昂ぶらせる話題のTVCM曲"Yeah Yeah"も強烈だが、スクリーミン・ジェイ・ホーキンスのカヴァーやらトム・ウェイツ風のインストやらと脈略なく続く構成も含め、どうかしている破壊力だ。
bounce (C)内本順一
タワーレコード(vol.354(2013年4月25日発行号)掲載)