ユダヤ系であるアンチェルが紡ぎだす、極めて音楽的なマーラー。緻密で明晰な表現は、両曲とも数あるマーラー録音の中でも忘れられない名盤の一つ。今回の復刻のために本国のオリジナル・アナログ・マスターテープから新規でダイレクトDSD化を行った音源をマスタリング。世界初SACD化!今回の発売では各曲を1枚に収録
スプラフォン・レーベルに2曲だけステレオ録音を行ったアンチェル&チェコ・フィルのマーラーを集成。特に第9番は当時まだ録音が少なかった時代においては、重要な演奏のひとつとして両者の名を更に高めた名演です。マーラーのルーツ含め、当時のチェコ・フィルの各楽器の音色が織りなす素晴らしい響きと、アンチェルの緻密で明晰な表現力は、現在においても数ある同曲の音源の中で注目に値します。特に、バーンスタイン以降、演奏タイプとして没入型が多くの聴衆に受け入れられた後の反動として現代では楽曲に回帰する傾向が多い中にあっては、ますますこのアンチェル盤の存在が注目されるべきでしょう。元々ユダヤ系であるアンチェルの一連の経験は、第二次世界大戦を生き抜いた音楽家の中でも筆舌に値する出来事であり、その後の人生を大きく左右したと思われます。聴き手はそのような意識を彼のマーラー演奏の中に見出そうとしますが、アンチェルの演奏は極めて音楽に対して純真であり、意識下における付帯性を微塵も感じさせません。楽譜の中の音楽性にのみ真実があるといった、従来からの強固な姿勢がアンチェルにはあります。ここには一切の虚飾を排した音楽のみがあり、それが未だにアンチェルの音楽作りが支持される理由のひとつではないでしょうか。アンチェルの音源は何度聴いても聴き飽きることがないと言われる所以です。第1番では純朴であり、滋味深い表現が更に曲の真価を高めています。自然な流れで進行していく曲調は、所々多彩な表情も見せ、全体的に豊かな表現に結び付いている様は両者の実力を感じさせます。(1/2)
タワーレコード(2018/10/16)
両曲の録音は約2年の隔たりがあることもあり、同傾向ではありますが音質的には若干異なっています。いずれもホルンや木管を始めとしたソロ演奏の素晴らしさがまず際立っており、魅力的な当時の音質を各録音が良く捉えています。今回のSACD化により、色調の差や、ビロードのような弦楽器を含むターリヒ以来の全盛期と言われたチェコ・フィルの音色を、存分に感じられる出来です。粒子の差も聴き分けられると思います。
録音はスプラフォン独特の、高域に艶が乗ったあたたかみのあるサウンドにさらに磨きがかかり、倍音成分と楽器の実在感が増した、細部まで見通しの良い響きが堪能できます。元々質感の良いスプラフォン・レーベルの音は、2018年最新のDSD化でさらに真価を発揮します。ヴァイオリン・パートの統一感のある音色に加え、当時の木管・金管の特徴あるサウンドは今聴いても素晴らしいものがあります。
今回の新規企画では、本国チェコのスプラフォン社が所蔵しているオリジナルのアナログ・マスターテープから、全くの新規で、ダイレクトにDSD化を行った音源を使用し、SACD化のためにマスターを制作。日本でDSDマスタリングを行った上で、SACDハイブリッド盤として発売いたします。昨今のデジタル化(A/D変換)の技術進歩は著しく、より高度かつ緻密にマスター音源を取り出せるようになりました。まさにマスターに極めて近い音質をSACDで堪能できます。尚、CD層も今回新規のDSDマスタリング音源を使用しました。LPで初出以来の名盤の数々も、今回の2018年最新DSD化により、これまで以上の感動を得られるはずです。その効果は驚くべきもので、鮮明になった音質により、あらためて、音源の真価を再発見できる程の出来です。今回の第3回発売では、計3タイトルを発売いたします。(2/2)
タワーレコード(2018/10/16)