世界各地の辺境音楽のフィールド・レコーディング作品や、中東、アジアのサイケデリア/レア・グルーヴ音源の発掘などでワールド・ミュージック・シーンに革命を起こしたシアトルの大人気レコード・レーベルSublime Frequencies。その音楽好きの好奇心をくすぐる刺激的なラインナップの中から、トゥアレグ・ギター・ミュージック・シーンを牽引する重要バンド、グループ・ボンビーノの伝説の名盤をご紹介します!
トゥアレグ・ミュージック・シーンではカリスマ的存在と目されているグループ・ボンビーノの中心人物/ギタリストのボンビーノ。ニジェール北部、アガデスでトゥアレグ族の子供として生まれ育った彼は、トゥアレグ族とニジェール政府の衝突という社会的事情により幼い頃より逃亡生活を強いられてきました。その逃亡生活の中で彼はギターに出会い、独学で演奏技術を習得。10代の頃はジミ・ヘンドリックスやマーク・ノップラーに憧れ、見よう見まねで技を磨いていったのだと言います。アルジェリア、リビアと流浪の生活を経た後、ニジェールに帰郷。以降地元のバンドで演奏するようになり、やがて自身のグループを結成すると知名度がメキメキと上昇。その噂を聞きつけたのが、サハラ/中東/アフリカをメインにフィールド・レコーディングやドキュメンタリー映像作品を制作していたSublime Frequencies設立者、ヒシャム・マイエでした。
ヒシャム・マイエによって2007年に現地で録音された本作は、グループ・ボンビーノ名義では唯一のアルバムであり、その後ボンビーノが世界的な知名度を得るきっかけとなった重要作品です。トリプル・ギター/ドラムズ/ベース/ヴォーカルという6人編成のギター・バンド形態で、前半4曲はグループ・ボンビーノのアーカイヴから採用された、アクースティック・ギター演奏と歌、手拍子を中心としたフォーク・ブルース的な作品が並びます。後半5曲はヒシャム・マイエによるライブ録音。前半4曲とは打って変わって、エレクトリック・ギター・バンド形態での演奏となり、凶暴と言っても過言ではないほどに攻撃的なギター・チューンが並びます。凶暴なギター・サウンドがひたすら打ち出すブルージーかつ色鮮やかなリフの反復は、聴く人を熱狂的なトランス状態へと瞬時に誘導。プレイヤーであるボンビーノは、その後ドキュメンタリー作品への出演や、2011年にリリースしたソロ・アルバム『ボンビーノ』(CBR-23028)が絶賛されるなどし、いよいよワールド・ミュージック・シーンにおける伝説の人となりますが、この処女作でのボンビーノの演奏もサハラ砂漠のジミ・ヘンドリックスと称するにふさわしい、実に素晴らしい天才ぶりです。グループ・イネラネともサウンド的に共通する部分がありますが、より破壊的、より高い爆発度を望まれる方にはコチラの一枚を大推薦します!
砂漠のブルース・ファンの方、ジミ・ヘンドリックス・ファンの方は是非、お聴き逃しなく!
※日本語による説明をつけた帯付き。日本語解説は同封しておりません。
発売・販売元 提供資料(2020/04/13)
砂漠のブルースの最前線、ボンビーノ。ダン・オーバックやデイヴ・ロングストレスがプロデュースを手掛けた諸作や、イダン・ライヒェルの新作への参加など幅広く、今後の活動も期待大だ。彼がソロとして羽ばたく前、2009年にサブライム・フリークエンシーズに残した作品が国内初登場。ニジェールはアガデスの音楽を紹介する第二弾として制作され、第一弾のグループ・イネラネのメンバーも参加。アコースティックとエレクトリックの両サイドを収録し、砂漠のブルースの醍醐味、滋味と狂暴性を純度高く同時に楽しめる。この時既に類稀なる才能を発揮しているその原点を今こそ堪能して欲しい。
intoxicate (C)片切真吾
タワーレコード(vol.146(2020年6月20日発行号)掲載)