米テキサス出身のR&Bシンガーソングライター=リオン・ブリッジズ 通算3作目となる新作『ゴールド・ディガーズ・サウンド』
ロバート・グラスパー、テラス・マーティンがゲスト参加。
米テキサス出身のR&Bシンガーソングライター=リオン・ブリッジズの3年ぶり通算3作目となる新作『ゴールド・ディガーズ・サウンド』。
アルバムタイトルは、ロサンゼルスにあるスタジオ、ホテル、バー、演奏会場という要素を兼ね備えた施設「ゴールド・ディガーズ」が由来となっている。リオンが約2年にわたって住みこみ、仕事をし、時にはバーでお酒をたしなんだというこの空間でのアルバム制作作業は、ソウルフルな感動を彼に与えた。アルバムのプロデューサーを務めたのは、リゾのメジャー・デビューアルバム『コズ・アイ・ラヴ・ユー』('20)を手掛けグラミー賞を受賞したリッキー・リード。リオンの前作『グッド・シング』収録の、グラミー賞最優秀トラディショナルR&Bパフォーマンス賞を受賞した「ベット・エイント・ワース・ザ・ハンド」でも共作・プロデューサーとして名を連ねており、そんな相性抜群の二人が今作で再びタッグを組んでいる。アルバムからの先行曲となる「モーターバイク」についてリオンは、この曲の発端はプロデューサー=ネイト・マーセローが制作したアフロビートのようなインスト音源で、親しい友人たちと30歳の誕生日をプエルトリコで過ごした時に感じたエネルギーにインスパイアされて書き上げたとコメント。今という瞬間を生き、大切な相手をバイクの後ろに乗せて逃げ出す様子を歌ったラブ・ソングである。
同曲のミュージック・ビデオは、ミュージシャン、プロデューサー、ドラマーなど多彩な才能で注目を集めるアンダーソン・パークが監督を務めた。また、アルバムの1曲目「Born Again」にはロバート・グラスパーが、9曲目「Sweeter」にはテラス・マーティンが参加しており、新世代ジャズ・ミュージシャンとのケミストリーにも期待が高まる。2020年はツアーなどの開催はできなかったものの、ジョン・メイヤーをフィーチャーした「インサイド・フレンド」のほか、同じテキサス出身のグルーヴ・トリオ・バンド=クルアンビンとの楽曲「テキサス・サン」など、新曲をコンスタントにリリースしてきた。2021年は、7月のアルバムの発売後に9月にはボナルーやガバナーズ・ボールなど、アメリカで開催予定の音楽フェスティバルへの出演も決定しており、ファンにとってはうれしいアクティブな1年となりそうだ。
発売・販売元 提供資料(2021/05/21)
創作やレコーディングで住み込んだハリウッドのホテル/バー/スタジオの名前を表題に冠した3年ぶりの新作。今回は前作に関与したネイト・マーセローとリッキー・リードと全面的に組み、ブルージーなバラードを含みながらもデビュー時の古式ゆかしきサザン・ソウル色を払拭し、裏声も交えたサイケでオーガニックな西海岸R&Bへと移行している。ゲストのロバート・グラスパーやテラス・マーティンもマイルドなプレイで懐かしくも新しいネオ・ノスタルジアとでも言うべきムードを醸成。ウィー・アー・キングのパリス・ストローザーが参加したアフロ・カリビアン的な先行曲"Motorbike"やアトランタの奇才インク(アティア・ボッグス)と歌う"Don't Worry"などでの抑制の効いたポップネスも好感だ。
bounce (C)林 剛
タワーレコード(vol.453(2021年8月25日発行号)掲載)