イギリスを代表するロック・バンド=マニック・ストリート・プリーチャーズ 3年振りのスタジオ・アルバム『ジ・ウルトラ・ヴィヴィッド・ラメント』
イギリスを代表するロック・バンド=マニック・ストリート・プリーチャーズ。彼らの通算14作目、前作から3年ぶりとなるスタジオ・アルバム『The Ultra Vivid Lament』。アルバムの発売に先駆けて公開されたマニック・ストリート・プリーチャーズらしさ全開の新曲「オーウェリアン」についてメンバーはこうコメントしている。「この曲は意味を主張する戦い、議論の中で文脈が消されていくこと、デジタル・プラットフォームによって引き起こされるファクション(注:事実とフィクションを織り交ぜた作品のこと)の矛盾という圧倒的な感覚が永久に続く文化戦争に繋がることについて語っている。音楽的にはABBA、ジ・アソシエイツでのアラン・ランキンの威厳あるプレイ、トーク・トークの「イッツ・マイ・ライフ」にリンジー・バッキンガムのギター・ソロを入れたようなものを彷彿とさせるね。アルバムの導入としては音的にも歌詞的にも理想的な気がしたんだ」。
アルバム収録の11曲は、静かな激情と崇高でたまらなく魅力的な曲を完璧な形で融合させている。これらの要素は、オープニングの日本人にとっては興味深いタイトル「スティル・スノーイング・イン・サッポロ」のアンビエントなハミングから、躍動的な「ザ・シークレット・ヒー・ハド・ミスト」における、ウェールズ出身のアーティスト姉弟グウェン&オーガスタス・ジョンの架空の会話を想定した攻防あるデュエットまで全体にわたっている。
前作『レジスタンス・イズ・フュータイル』からの決別を告げる今作は、マニック・ストリート・プリーチャーズのアルバムとしては初めて、ギターよりもピアノで当初の着想を得た作品。レコーディングは2020年から21年にかけての冬、長年のコラボレーター、デイヴ・エリンガ(ザ・フー)と共にウェールズ・モンマスのロックフィールドと、彼らがニューポートに所有するドア・トゥ・ザ・リヴァー・スタジオで行われ、その後デヴィッド・レンチ(ブロッサムズ、フランク・オーシャン、アーロ・パークス)がミキシングを手がけた。本作収録曲の「ザ・シークレット・ヒー・ハド・ミスト」にはジュリア・カミング(サンフラワー・ビーン)、「ブランク・ダイアリー・エントリー」にはマーク・ラネガンと、ゲスト・ヴォーカリストが2人参加している。
発売・販売元 提供資料(2021/06/25)
The Ultra Vivid Lament almost plays like a riposte to Resistance Is Futile, the 2018 album that found the Manic Street Preachers attempting to return to the roar of their younger years. Theres no such feint toward harder rock here. James Dean Bradfield wrote the majority of the album after learning to play piano, so the records 11 songs have sculpted, crafted melodies that call for the kind of introspection Nicky Wire gravitates to in his set of lyrics. Writing during the global COVID-19 pandemic -- the kind of world-historic event that seems like catnip to a songwriter as socially conscious as Wire -- the bassist/lyricist turned inward, searching for humanity and common bonds in an age of digital disassociation. Wires introspection is given a cinematic lift by Bradfields melodies and the Manics painterly anthemic soft rock. This Is My Truth, Tell Me Yours is the touchstone for The Ultra Vivid Lament, as the album achieves a similar sense of heightened emotional reality, but the record feels deeper and more resonant delivered by middle-aged Manics. No longer urgent yet still passionate, the band conjure a sense of operatic melancholy on The Ultra Vivid Lament that feels reassuring, even consoling. ~ Stephen Thomas Erlewine
Rovi
約3年ぶり、オリジナル作としては通算14枚目となるニュー・アルバムが到着。デビュー以来多くの作品を共にしてきた盟友でもあるUKロック界の大御所デイヴ・エリンガがプロデュースを手掛け、録音にはウェールズの名門スタジオであるロックフィールドも使用……と、今作も英国音楽好きにはたまらないキーワードが並ぶ。興味深いのはソングライティングがギターではなくピアノ中心に行われ、演奏でも数多くフィーチャーされていること。曲はよりメロディアスに変化し、サウンド面でも芯の強さに加えて美しさと豊かさが増しており、作品全体が醸し出すのはノスタルジックな印象。つまりマニックスらしさを保ちつつ、そのセンティメンタルな持ち味をさらに強調した、過去のどのアルバムとも色の違う新たな傑作だ。
bounce (C)赤瀧洋二
タワーレコード(vol.454(2021年9月25日発行号)掲載)