ブラジル至宝のシンガーソングライター、約9年ぶり新作
POPSシーンに与えた影響も数知れず、20世紀を代表するプラジルのシンガー・ソングライター、カエターノ・ヴェローゾ。スタジオ録音のオリジナル・アルバムでは9年ぶりとなる全曲カエターノ自作による作品。息子のモレーノ他、90年代作品を作り上げた元バンド・メンバーのジャキス・モレレンバウムやヴィニシウス・カントゥアリアも参加。持前の「声」は年齢を重ねるごとに芳しく香り、美しさを増すばかり、心豊かになる注目作。
(C)難波店:真志田 健次
タワーレコード(2022/01/21)
ブラジルを代表するシンガー・ソングライター=カエターノ・ヴェローゾの約9年ぶりとなる新作『メウ・ココ』
ブラジルを代表するシンガー・ソングライター、カエターノ・ヴェローゾが約9年ぶりとなる新作『MEU COCO』(メウ・ココ)のCDを発売する。
スタジオ録音のオリジナル・アルバムとしては、バンダセーでリリースした『アブラサッソ』(2012年。日本盤は2013年)以来、9年ぶり。パーマネントなバンド編成ではないオリジナル・アルバムとしては、バンダセーの結成前に出したアルバム『ノイチス・ド・ノルチ』(2000年)まで、21年の歳月を遡る。Meu Cocoは「僕の脳ミソ」。収録された12曲、全てカエターノの作詞作曲で、カエターノの脳内旅行といった趣だ。共同プロデューサーは、ルーカス・ヌネス。末子トン・ヴェローゾが組んでいるバンド、ドニカのメンバーで20代半ば。全曲の録音エンジニアをつとめ、曲によってギター、ベース、キーボードなどを演奏、プログラミングも手がけた、本作の最大のキーパーソンだ。長男のモレーノ、パーカッションのマルシオ・ヴィクトルとプレチーニョ・ダ・セヒーニャ、元バンド・メンバーのジャキス・モレレンバウムやヴィニシウス・カントゥアリアなど新旧の多彩なメンバーと組み、音楽的にはバイーア?北東部の色彩が強く、とてもヴァラエティ豊か。一言でまとめるなら「声のアルバム」だ。発声、声の表情と余韻、ポルトガル語の音楽的な響きを生かした詩作も含め、カエターノの肉声のクリエイティヴィティは、来年で80歳を迎えるとは信じられない。(中原 仁)
発売・販売元 提供資料(2021/11/26)
優しく甘く、滑らかな語感がまとう不思議な浮遊感。カエターノの歌唱は80歳を迎えたいま神憑りっているというか仙人めいているというか。あの大傑作『アブラサッソ』から9年以上を経て発表される新作。コロナにより身動きのとれなかった1年間、脳内=メウ・ココで精製あるいは熟成させた湧きたつ創造力はギターと歌によって骨格化され、末子トンとドニカで活動するルーカス・ヌネスはじめ長男モレーノ、ジャキス・モレレンバウムといった多彩なメンバーにより中東やポルトガル音楽、バイーアの多様なリズム、オーケストラを交え、さらにデジタルと生の垣根も超えて最小の音数で鮮烈な肉付けが施されている。
intoxicate (C)小畑雄巨
タワーレコード(vol.155(2021年12月10日発行号)掲載)