エンジェル・オルセン、好評を博した姉妹作『オール・ミラーズ』『ホール・ニュー・メス』に続く、6枚目のアルバムが完成。自らのクィアと向き合った賢明で優しいニュー・アルバム『ビッグ・タイム』、リリース。
共同プロデュース:ジョナサン・ウィルソン(ファーザー・ジョン・ミスティ、コナー・オバースト他)
Angel Olsenはニュー・アルバム『Big Time』を6月3日にJagjaguwarからリリースする。このアルバムは、新たな悲しみと新たな愛の両方が生まれ、それが複雑に絡み合うという、稀に見る豊穣な時に生まれた。収録曲はOlsenがクィアであることをカミングアウトし、クィアの愛と悲嘆を初めて経験した時期に書かれ、新たな愛の力をテーマとする。自らのクィア性と折り合いをつけ、自身を完全に受け入れることを妨げていたトラウマと向き合う過程で、Olsenは、両親へのカミングアウトの時期が来たと感じた。涙を流しながらもほっとするような会話の後、彼女はパートナーや友人たちと、オイスターとワインで祝杯をあげた。その3日後、Olsenの父親が亡くなった。そのわずか2週間後、母親が救急車で運ばれたとの連絡が入った。母はホスピスに入り、2回目の葬儀もすぐに終わった。母親の葬儀の3週間後、Olsenはスタジオに入り、この賢明で優しいニュー・アルバム『Big Time』のレコーディングを開始した。アルバムにはTammy WynetteやKitty Wellsがゲスト参加。2019年の『All Mirrors』で聴かれる複雑なオーケストレーションも存在するが、劇的な変化とひねりに満ちていた『All Mirrors』とは違い、『Big Time』はシンプルさの中に驚きを内包する。レコーディングとミキシングは、共同プロデューサーであるJonathan Wilsonと、彼のカリフォルニア州トパンガにあるスタジオ、Fivestarで行われた。Drew Ericksonがピアノ、オルガン、ストリングスのアレンジを担当。ベースはOlsenのバンド・メンバー、Emily Elhajがプレイした。この夏、OlsenはSharon Van Etten、Julien Baker、Spencerと共に、ザ・ワイルド・ハーツ・ツアーに参加する。
Angel Olsenは米ミズーリ州セントルイス出身のシンガーソングライターだ。10代後半より地元のコーヒーショップで活動を開始。Emmett Kelly(Bonnie"Prince"Billy、The Cairo Gang)に見いだされ、2011年にEP『Strange Cacti』でデビュー。2012年のファースト・アルバム『Half Way Home』を経て、Jagjaguwar移籍し、2014年にはセカンド・アルバム『Burn Your Fire For No Witness』をリリース。2016年のサード・アルバム『My Woman』は、Pitchforkで8.9点を獲得するなど、高い評価を博した。2019年には4枚目のアルバム『AllMirrors』、2020年には『All Mirrors』の姉妹作『Whole New Mess』をリリースした。
発売・販売元 提供資料(2022/04/21)
アメリカのシンガー・ソングライター、エンジェル・オルセンの2年ぶりのアルバムは、端的に言うと傑作である。2021年4月に同性愛者だと公言した時期に書かれたという楽曲群で構成された内容はとても感動的だ。ひとつひとつの言葉を噛みしめるように吐き出す彼女の歌声は、達観に至った者だけが漂わせる凛々しさで満ち満ちている。同性愛者としての自分を受け入れるまでの紆余曲折と、みずからの心を認めたからこそ出逢えた美しい光景と情動が描かれた言葉に涙を隠せなかった。そうした言葉を彩るサウンドはカントリー色が強く、筆者からするとラヴェンダー・カントリーなど同性愛に肯定的なカントリー・バンドを連想させるものだ。感情の機微を饒舌に紡ぐ多彩なメロディーも素晴らしい。
bounce (C)近藤真弥
タワーレコード(vol.462(2022年5月25日発行号)掲載)