師匠リー・コニッツとの共演作でも注目を集めたジェフ・デンソン、フランス出身でカートの流れを汲む才人ロメイン・ピロン、当代筆頭のドラマーのブライアン・ブレイド!2019年『Between Two Worlds』をリリースして以来、進化を遂げてきた3人が、時代と対峙し、共に演奏ができる喜びを炸裂させた演奏を収録したアルバム『Finding Light』を完成!<br/><br/>もともとバークリーでの仲間であったことを原点に、2017年Joel HarrisonのSpirits House Quintetのツアーにデンソンが加わることでブライアンと共演し、2人の間で創造的な火花がついたのち、ロメインを加えて結成されたこのトリオは、その『Between Two Worlds』を機に数々の演奏と旅も重ねてきたパーマネントな性格を持ったグループ。演奏をする度にバンドは、方向性も確かなものとなり、サウンドも進化して行き、2020年2月のツアーで一つの最高点に到達!一方、そこにコロナの悪夢に突入します。<br/><br/>しかし、その創造の力は、決して衰えず、孤立と不安を強いられた分断の時を超えたことをバネにして、3人はケミストリーを起こし、素晴らしい演奏をここに結実させました。そこには、再び演奏を共にできるという喜びが弾け飛び、あふれかえるほど。変拍子にあって、ブライアンの叩き出すグルーヴに乗って3人の演奏が絡むオープニングのナンバーのご機嫌具合、そして、ロメインのハーモニー・センスとメロディが美しく交錯するデンソン作曲のタイトル・トラックへの流れを聴けば、この作品が如何に創造的なエネルギーで満ちているかがわずか数曲にして明らかになります。しかも、作品は陰陽のコントラストも持って、深みもたたえます。<br/><br/>この作品のために最初に作曲されたといい、作品のセンター部に登場する(4)「A Moment in Time」は生々しいほどにシュールな状況が描き出された演奏。「コロナによって自宅待機が始まった3週間は自宅のスタジオで座っているとロメインとブライアンのヴォイスが聞こえ続け、2人の音が世界の静寂と混じりあって戸惑った」とデンソンが語るこの曲は、フリー・インプロに、先行きを案じる混沌とした当時のムードが表現された一曲として鮮烈。また〈地球〉を意味する「Terre」にはロメイン自身が現在住むブルターニュの風景に触発された美しさ、ノスタルジーなムードと共に未来への危機感も滲むナンバー。つまり…この作品には、コロナという現実を超えた音楽家たちが見つめた時代性も映し出しています。<br/><br/>ジェフとロメインは〈3人でリアルに演奏する〉ことを思い描き、光を求めて(「Finding Light」)楽曲を作曲。それだけに、スウィングから、変拍子のグルーヴ、同時代ジャズ・ミュージシャンが演奏するファンク・サウンドに導かれた演奏、インプロなど、どの曲もこの3人であることの必然性100%のもの。録音は3度のリスケジュールを強いられながら、2022年1月、遂に実現。コンテンポラリーなフィールを持った3人が自在に描く、演奏することへのオーガニックな喜びと、今を生きるドラマが交錯する演奏の数々。時代が産んだ確かな感覚を感じる一作です。
発売・販売元 提供資料(2022/12/22)
リー・コニッツとも共演していたベーシスト、ジェフ・デンソンがロメイン・ピロン&ブライアン・ブレイドとのトリオでおくる大注目の一枚! 同メンバーによる前作のツアーがコロナ禍の中断を経て完走したばかり。その2年の歳月が彼らの音楽を熟成させ、最高の新作を誕生させました。シンプルな編成ながら、三者の演奏はどこへでも自由自在。強烈なビートを感じさせながらも心地よく包み込んでくれるサウンド、完璧なダイナミクス・コントロール、絶えず湧き出る秀逸極まるフレーズ...聴かずにいるのはもったいない現代ジャズ・ギター・トリオの理想郷!
intoxicate (C)谷本真悟
タワーレコード(vol.160(2022年10月10日発行号)掲載)