ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのオリジナル・メンバーの一人で実験音楽の巨匠でもあるジョン・ケイルが実に10年ぶりの最新作をリリース!
ヴェルヴェット・アンダーグラウンドのオリジナル・メンバーの一人で実験音楽の巨匠でもある、ジョン・ケイルが実に10年ぶりの最新作『MERCY』を〈Double Six / Domino〉からリリース。
本作において、ケイルは、アニマル・コレクティヴ、シルヴァン・エッソ、ローレル・ヘイロー、テイ・シ、アクトレスという音楽界で最も好奇心旺盛な若手アーティストたちを起用している。
『MERCY』を構成する楽曲は、ケイルがディストピアの瀬戸際でよろめく社会を見ながら、何年もかけて書きためてきたものである。
トランプとブレグジット、コロナと気候変動、公民権、右翼の過激派、もしくは南極、北極付近で溶けている海氷の主権と法的地位についての考察であれ、アメリカ人の無謀な武装化であれ、ケイルはその日の悪いニュースを自分の言葉にする。
先行シングル「NIGHT CRAWLING」で、(今もなお) 豊かに生きている人生からの教訓も前面に押し出されている。もし、私たちが常に過去を悔やんでいるとしたら、永久に失望を味わうことになるのではなかろうか?
そして楽曲「STORY OF BLOOD」ではワイズ・ブラッドと共に歌ったように、結局のところ、我々は、我々が知ることのない神に頼るのではなく、お互いを救うことができるのではないだろうかと問いかけ、ピアノの前奏が重厚なビートと眩い太陽のようなシンセサイザーに変わった後、ケイルとワイズ・ブラッドの歌声が、現代の喧騒の中でパートナーを探そうとする2つのファントムのように滑らかに交差する。
「スウィング・ユア・ソウル」と二人は願いを込めて歌う。最後のパートで、ケイルはこの存在が自分だけのものでないことを思い出す。
「私は朝には私の友人たちを、彼らを迎えに戻る。彼らを光の中に連れて行くんだ」。エミー賞受賞監督ジェスロ・ウォーターズによるミュージックビデオには、ケイルとワイズ・ブラッドが登場し、不穏と静寂が混在する。
その深い色調と宗教的な雰囲気は、この曲のダークでスピリチュアルなムードを強調している。本作でケイルは、自分の音楽がどのように作られ、どのように聞こえ、そしてどのように機能するかさえも再構築している。
12曲からなるこの『MERCY』は、闇夜に生まれた電子音を通して、傷つきやすいラブソングと未来への希望に満ちた考察へと向かっている。
国内流通仕様盤CDには解説が封入される。
発売・販売元 提供資料(2022/10/20)
新曲メインのアルバムとしては『Shifty Adventures In Nookie Wood』(2012年)ぶりの新作。ヴェルヴェッツのオリメンで実験音楽の巨匠……という形容に敷居の高さを感じる人もいるかもしれないが、多様なフィールドで実験的な表現が普通になった現代の目線から見れば、社会情勢を眺めて綴ってきたというリリックの重さこそあれ、特に今回のアルバムはある種の親しみやすさを纏って響いてくるはずだ。冒頭の表題曲からローレル・ヘイローと組み、アクトレスやアニマル・コレクティヴ、シルヴァン・エッソら後進が深い洞察やスピリチュアルな表現に呼応する。なかでも素晴らしいのはワイズ・ブラッドと歌う"Story Of Blood"。そしてやはりルー・リードやボウイを思い出したりする部分もあるのであった。
bounce (C)香椎 恵
タワーレコード(vol.470(2023年1月25日発行号)掲載)