【ハイティンクのバイエルン放送響登場65年周年を記念して未発表のブルックナー第4番が登場】
ベルナルト・ハイティンクがバイエルン放送交響楽団の定期演奏会にデビューしたのは1958年。それから65年となる2023/24シーズンに先立ちバイエルン放送収録の音源から2012年のブルックナー:交響曲第4番を初CD化します。
ハイティンクのブルックナーの第4番はこれで5種目。1965年の初録音は緩急のコントラストを大きめにとった演奏でドラマティックな解釈に感じられますが、1985年盤以降は盤石と言える安定感を示し、解釈が成熟の域に入っていたことが感じられます。その中で当盤はフィナーレに重きを置き、そこに向かって音の伽藍を築いてゆくような演奏と言えるでしょう。演奏会場ガスタイクのややドライな音響がここでは幸いし、クライマックスの強奏でも解像度を保っています。
バイエルン放送響には創設指揮者ヨッフムの時代から続くブルックナー演奏の伝統があり、2005年からは当時の首席指揮者ヤンソンスがブルックナーの交響曲に継続して取り組んでいました。一方、ガスタイクはミュンヘン・フィルの本拠地でもあり、聴衆はチェリビダッケやティーレマンのブルックナー解釈にもなじんでいました。そのような状況で、曲を熟知し、自然体で作品の威容を描き出すハイティンクの指揮の下、バイエルン放送響も持てる力を傾注した演奏になりました。これはハイティンクにとってのみならず、オーケストラにとっても記念すべき1枚と言えるでしょう。
ベルナルト・ハイティンクのブルックナー:交響曲第4番演奏時間比較
コンセルトヘボウ管(1965年5月) 63:36(18:14/15:52/09:45/19:45)
ウィーン・フィル(1985年2月) 68:29(20:39/15:27/10:37/21:46)
ロンドン響(2011年6月) 69:08(20:33/15:07/11:11/22:17)
バイエルン放送響(2012年1月) 68:05(19:51/14:36/11:07/22:31)
ベルリン・フィル(2014年3月) 68:30(20:27/15:06/10:47/22:12)
ナクソス・ジャパン
発売・販売元 提供資料(2023/07/14)
ハイティンク82歳時、バイエルン放送響の高機能をもってハイティンクの円熟ぶりを十全に示した2012年ライヴ。例えば第1楽章、展開部での神々しいコラールの筆致は、バイエルン特有の光輝まばゆいソノリティと見事に合致し、85年ウィーン・フィル盤を想起させるひときわ感銘深いもの。これでハイティンクの『ロマンティック』は、コンセルトヘボウ管(65年)、ウィーン・フィル(85年)、ロンドン響(11年ライヴ)、バイエルン放送響(12年ライヴ)、ベルリン・フィル(14年ライヴ)と、名だたるトップオケとの共演で変遷をたどることが可能となった。当盤は特に好条件が揃った音源として聴き逃せない。
intoxicate (C)森山慶方
タワーレコード(vol.166(2023年10月10日発行号)掲載)