〔DENON原盤ORTマスタリングSACDシリーズ第10回〕宗教音楽像を覆した壮大な傑作。圧巻の超名演・優秀録音。ORTマスタリングを用いたハイレゾ化により初SACD化!81分超えの大作を今回初めて1枚に収録。歌詞対訳付
レコード・アカデミー賞受賞、レコード芸術特選に輝く名盤。大編成のオーケストラ、大合唱、別動隊の4つのブラス・アンサンブルを要する大作。インバルの精緻なスコアの再現によりこの傑作の魅力が隅々まで描かれます。日本コロムビアが独自に開発したORTマスタリング技術によりハイレゾ化を行い、初SACD化。音場・音質が鮮やかに向上しています。CD層も今回のマスタリング音源を使用。今回の最新復刻では従来2枚組であったものを、初めて1枚に収録しました。
マーラーの交響曲全集で世界的成功を収めたインバル=日本コロムビアのコンビが次に収録をスタートさせたのがベルリオーズの作品でした。この提案はインバルからもたらされ、当時の日本コロムビアではベートーヴェンを始めとしたドイツ主流の音源は旧東独のスウィトナー等であったものの、インバルの斬新な解釈による独墺系の演奏が期待されていたため当初は難色を示したとのこと。しかし当時の日本コロムビアのカタログにベルリオーズがなかったことや、ヘッセン放送との共同制作で収録コストが低く抑えられることを勘案し、制作をスタートさせたようです。もっとも、マーラーの途中からワンポイント録音での評価が高くなっており、ベルリオーズの壮大なオーケストレーションへの挑戦ということでも後押しとなったのかも知れません。当時、日本コロムビアの録音チームでは従来の自社製4チャンネルPCM録音機に加えて、三菱の32チャンネルデジタル録音機も持ち込んでの収録を行おうとしていました。録音面においての自信や、インバルが50代前半であり新しいアクションが生じやすかった時期であったことも重なり、以降もプロジェクトが重なって行きます。このベルリオーズ作品はマーラーと同様に1987年9月の「幻想交響曲」と「レリオ」のから定期演奏会とセットで収録が行われてゆくことになります。
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タワーレコード(2023/12/21)
この「レクイエム」は「幻想交響曲」と「レリオ」(今回TWSA1162で同時発売)の約1年後に収録され、演奏のみならず、その壮大なスケールの編成を忠実に捉えた優秀録音盤としても評価され、1989年の声楽部門のレコード・アカデミー賞を受賞した名盤です(インバルとのコンビでの受賞は3作目)。この作品は超巨大な編成で知られており、アナログ時代にもステレオ録音ではミュンシュのRCAとDGの2種等の名盤他が良く知られていますが、収録面では困難を極める曲です。編成は200名の混成6部合唱に加えテノール独唱、弦楽器は1stヴァイオリン25名を含む総勢最低118名、管楽器は基本4管編成ながらもバスーン8本、ホルン12本の変則、打楽器では8対のティンパニ、シンバル10対他に加え、金管の4つのバンダで総勢38名が必要になるなど、常識を遥かに超えた曲です。極小さい音から大地を揺るがすかのような音量まで、ダイナミックレンジも異様に広いため、アナログ録音では拾いきれない音があることは確かでしょう。デジタル録音においても難しいことには変わりはありませんが、この超難曲に挑んだ当時の日本コロムビアとヘッセン放送の制作陣の意気込みが良くわかる出来映えです。定評ある当時の最高峰の録音を、今回初SACD化音源として最新で復刻を行いました。各音像の正確さに加え、音場面でも効果が感じられると思います。インバルの指揮は、派手さはないものの、耽美的な面や曲の深淵を覗くかのような本質面に迫る緊迫さを感じされる場面もあり、再評価に値する演奏です。
今回のORTマスタリングは、従来以上に間接音や倍音の豊かさ、個々の録音の特筆が把握できますので、その意味でも演奏の楽しみ方がより拡がる復刻となっています。80年代後半のデジタル録音ですが当時の日本コロムビアには既にいくつもの経験とノウハウがあり元々音質自体は良く、安定感がありますので、マスタリングにおいては従来以上に鮮やかな音質を心掛けました。これらの最新復刻により、蘇った名盤の評価が一層高まることを期待します。尚、今回のDENON原盤の第10回発売(通算第12弾)は、2タイトルを発売いたします。
<ORTマスタリングとは>
CDスペックにて録音されたDENONレーベルの数々の名盤、そのデジタル変換時に失われてしまった楽音の高域成分を、低域部分の倍音を利用して予測、 再構築する技術「Overtone Reconstruction Technology(ORT)」を開発しました。この倍音再構築技術と、従来から導入されている"Master Sonic 64bit Processing"による高品質なマスタリング技術が組み合わさったものが、"ORT Mastering"です。ORTによって得られた広い周波数帯域とダイナミックレンジを最大限に活かし、原音に忠実に、名演奏、名録音の魅力をお届けします。
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タワーレコード(2023/12/21)
主に初期のデジタル録音を中心にSACD化を行う日本コロムビア音源のORT企画に、待望のインバルが登場。一連のマーラー録音が世界的に大成功となった後、インバルがデジタル録音の発展性・可能性を視野に入れた上で、ベルリオーズを次に選択したことは想像に難くない。壮大で緻密なオーケストレーションを捉える録音が当時のコロムビアと実現できたことは録音史に残る偉業である。このレクイエムはその先鋒とも言える録音で、超巨大な作品を収録したこのアルバムは演奏面でも評価され、発売時レコードアカデミー賞を受賞。その名演・名録音が今回SACD化され、さらなる録音の可能性を見出した。
intoxicate (C)北村晋
タワーレコード(vol.168(2024年2月20日発行号)掲載)
演奏自体は素晴らしく、未聴の方にはお勧めできる。
ただ、UHQCDではなく敢えてSACDで聴く必要はあるのか、と。