ズデニェク・マーツァル追悼企画。ドヴォルザーク没後120年企画、巨匠マーツァル追悼。代表的録音である絶品のドヴォルザーク3曲他を最新復刻!満津岡信育氏による新原稿、諸石幸生氏他による初出時解説を再録。今回の復刻のために新規で江崎友淑氏がマスタリング。限定盤
ズデニェク・マーツァルは2023年秋、87歳の生涯を閉じたチェコの巨匠。65年にブザンソン国際指揮者コンクールに優勝後、欧米のオーケストラをまたにかけて活躍、世界の170ものオケを振ってきた敏腕の実力者でもあります。2003年母国チェコ・フィルの首席指揮者に就任、このコンビによる当交響曲集は、発売時から高い評価を得てきました。マーツァルは抜群のリズム感を基調に、充実した管楽器群としなやかな弦楽器群を絶妙に絡ませながら、聴き手の感情を大きく揺さぶるような音楽を生み出しています。満津岡信育氏の新原稿、諸石幸生氏の旧原稿再録、緑色レーベル仕様、2024年江崎友淑による新マスタリングなどで約20年ぶりに復活の名演をお聴きください。
(1/3)
タワーレコード(2024/05/23)
チェコ生まれのマーツァルは、年代的には後になりますがクーベリックと同様に1968年の一連のプラハの春の騒動により海外でのキャリアを余儀なくされた指揮者であり、ドイツでのケルン放送響等の音楽監督や首席指揮者を歴任後、1980年代半ばからはオーストラリア(シドニー響)以降アメリカに渡り、着実にキャリアを拡げて行きました。特にアメリカではメジャーオケやそれに類する楽団というよりは、ミルウォーキー交響楽団やニュージャージー交響楽団といった地方の音楽監督としてオケのレヴェルを上げる一方、アメリカのマイナーレーベルに複数の録音も残しています。そしてドイツや英国、アメリカの有名オケに頻繁に客演を行い、アシュケナージの後を受けて祖国のチェコ・フィルの首席指揮者に就任したのは2003年でした(2007年に退任)。それまで日本ではあまり知られた存在ではなく、レコーディングも僅かに流通していたのみでしたが、世評が世界的に高まるなかチェコ・フィルの首席指揮者就任前から録音を行っていたのが実はEXTOPNレーベルであったことは良く知られています。チェコ・フィルとはブラームスやチャイコフスキーの交響曲全集、そしてマーラーの交響曲集等を通してその端正で完成度の高いマーツァルの音楽性が浸透していきました。それらの中でもドヴォルザーク作品は歴代のチェコ・フィルの音楽監督の血をさらに昇華させた音楽観であり、ビエロフラーヴェク、ノイマン、アンチェル、そして何と言ってもターリヒの血を継ぐかのような(マーツァルは以前のインタビューで「~スメタナ、ドヴォルザーク、ヤナーチェクの音楽では、ターリヒのサウンドがもっとも理想的に響く」旨(今回の満津岡氏の序文解説より)話していた通り、今回最新復刻を行うドヴォルザークではかつてのチェコ・フィルによる伝統的な演奏に一番近い演奏を行っているのかも知れません。加えて、海外での活動が長かったマーツァルにこそ実現できた普遍性が、特にこれらの後期交響曲の解釈では活きてくるとも言えるのではないでしょうか。これはクーベリックが晩年に実現したチェコ・フィルとの伝説的な「わが祖国」や「新世界」と近似性があります。尚、マーツァルは残念ながらドヴォルザークの交響曲は第1番のみ収録がありません。尚、今回の追悼企画では、後期3曲の有名交響曲とチェコ・フィル独特の表情が素晴らしいスーク作品の計4曲としています。加えて、これらの時代のチェコ・フィルの名奏者、ホルンのズデニェク・ティルシャル(首席。2006年逝去)と兄のベドルジヒ・ティルシャル、そしてトランペットのミロスラフ・ケイマルが居た時代のかつての黄金サウンドの音色の復活も今回のトピックのひとつです。
(2/3)
タワーレコード(2024/05/23)
今回の復刻ではこれらの録音を手掛けた、レコーディング・ディレクターとしてクレジットされている江崎氏本人による最新復刻ですので、当時の雰囲気を十分に残しつつ、最新の機材と技術により高音質化&マスタリングを行いました。まさに最も相応しい布陣による正統的な復刻が成されています。今回の解説書は、序文に満津岡信育氏による新規序文解説を、さらに諸石幸生氏による初出時の序文解説と曲目解説を掲載(一部修正・加筆あり)しましたので、リリース当時の状況を読み解くことができるのも魅力です。
<ズデニェク・マーツァル(指揮) Zdenek Macal, conductor>
1936年、チェコのブルノ生まれ。ブルノ音楽院やヤナーチェク音楽舞台芸術アカデミーで学んだ。1963年モラヴィア交響楽団の指揮者に就任。1965年ブザンソンの国際指揮者コンクールで優勝、66年にはミトロプーロス国際指揮者コンクールで第3位となり、この年チェコ・フィルを振ってデビュー。67年にはプラハ交響楽団の指揮者に就任したが、「プラハの春」の動乱により西側に亡命、ケルン放送響(現ケルンWDR交響楽団)の音楽監督(1970-1974)、シドニー響の首席指揮者(1986-1987)などを歴任。その後アメリカのミルウォーキー響(1986-1995)の首席指揮者、ニュージャージー響の首席指揮者(1993-2002)を経て、2003年母国のチェコ・フィルの首席指揮者に選任された。
4年間この地位を務め、この間来日も果たしている。CDはEMI、KOSS、DELOS、TELARCなどに録音を遺したが、代表盤は、すべてEXTONレーベルに揃っている。チェコ・フィルとのドヴォルザークやマーラーの交響曲集、ブラームスやチャイコフスキーの交響曲全集完結などは、この指揮者の名声を揺るぎないものとした偉業である。ベルリン・フィルやウィーン響、ロイヤル・フィル、ボストン響、シカゴ響、N響などの名門をはじめ、世界の170以上ものオーケストラを指揮したことでも知られる。TVドラマ「のだめカンタービレ」では主人公が敬愛する指揮者ヴィエラ役を演じ、わが国にもなじみ深かった。2023年10月25日、惜しまれつつ87歳の生涯を閉じた。
(3/3)
タワーレコード(2024/05/23)