アイスランドポスト・ロック・バンド、シガー・ロス。儚いほど美しく、孤高なまでに唯一無比な音響世界が世界的な人気を獲得するようになった彼らの4作目のアルバム『TAKK...』が、発売20周年を記念してリマスター音源で蘇る!アナログLPも同時発売!
シガー・ロスの2005年9月に発表された4枚目のアルバム(アイスランド語で「ありがとう」の意)。
儚いほど美しく、孤高なまでに唯一無比な世界観を持つ、アイスランドの芸術的至宝、シガー・ロス。その彼らが2005年9月に発表した4枚目のアルバム、それが『TAKK...』(アイスランド語で「ありがとう」の意)である。前作『( )』から約3年ぶりにリリースされたこの作品はまた、彼らにとってEMIへ移籍しての第1作目でもある。
制作に約20ヵ月もの月日を費やした本作は、全体的にヘヴィだった前作に比べ、"楽しめるもの"を意識して制作され、メンバー曰く"前作からの自然な進化を歩んだ"作品となっているとのことだ。
シガー・ロスにとってメジャー・レーベル・デビュー作となった『TAKK...』はまた、メインストリームを決して目指すことのなかったバンドが初めて商業的な成功を収めた作品でもあった。『TAKK...』はUKでプラチナ・アルバムに認定され、アメリカでも累計20万枚以上の売り上げを記録した。唯一無二の孤高な存在感を放つシガー・ロスが幅広い層へ訴えかけることが出来るのを証明した本作に収録されている楽曲はこれまでの彼らの楽曲に比べると僅かながら短かった。ピアノ主体の壮大な「Saeglopur」をバンドは"まるでクラシック・ロックだ"と評し、きらめく「Andvari」を"パワーバラード。ほら、スコーピオンズみたいな感じさ"とKjartan Sveinssonは語る。冗談めかした表現ではあるが、確かにメロディには新鮮な口ずさみやすさがあり、4分半を過ぎたところでついに「Glosoli 」が最大音量に達する瞬間は、思わず拳を突き上げたくなる瞬間だ。「ついに爆発する瞬間が最高なんだ。素晴らしい感覚だよ」とGeorg Holmは語った。
さらにアルバムからは、誰が作ったのかは知らずとも多くの人が耳にしたであろう名曲「Hoppipolla」も生まれている。シガー・ロスがタイトルを付ける前から"ヒット・ソング"だと呼んだこの曲は、あのエモーショナルでマジカルなピアノ・モチーフによって数えきれないほどの映画やTV、CMなどに使用されている。
最新スタジオ・アルバムの『ATTA』でさらにその美しい孤高のサウンドスケープを極めているシガー・ロスだが、彼らの4作目である『TAKK…』は周年を祝うに相応しい作品であることには変わりない。最近シガー・ロスが行っているオーケストラ・ツアーでも『TAKK・・・』の楽曲は一層美しく壮大に響くのだ。その傑作が2025年リマスター音源で再び人々のもとに届けられる。
発売・販売元 提供資料(2025/09/19)
A strange thing happens before the two-minute mark in "Saeglopur." All the twinkling and cooing erupts, at what might seem like eight minutes earlier than normal, into a cathartic blast of tautly constructed group noise -- or, as those who prefer songs and motion over moods and atmospheres might say, "The good part comes." "Saeglopur" is emblematic of Sigur Ros' fourth album, released nearly three years (!) after ( ). Nothing resembles a drone, and no part of it could be described as funereal. Even so, Takk... is still very much a Sigur Ros album, due in large part to the ever-present otherworldly vocals, but also because the only real changes are the activeness of some arrangements -- arrangements that deploy a familiar combination of bass, drums, piano, vocals, lots of strings, and some horns -- and some of the colors that are used. Despite opening with what sounds like a happy walk through a snow bank, the album is just as suited for a sunlit spring morning as ( ) was suited for a winter trudge across a foggy moor, so in that sense, it isn't a repeat and is more tactile than illusory, but it's not likely to win over anyone who suddenly felt an index finger push against the back of his throat while hearing "Svefn-G-Englar" for the first time. And it's not as if the band is suddenly writing three-minute pop songs, either. Half of the album's tracks are longer than six minutes, with extended cresting, sudden bursts of action, and a couple particularly fragile moments that seem to be on the brink of melting away. One thing to consider when wondering whether or not this band has changed in any way: they've gone from providing the background music to death announcements to "Se Lest," a fluttering children's lullaby that is briefly crashed by an even more gleeful oom-pah-pah brass band. ~ Andy Kellman
Rovi
2003年のMTVヨーロッパ・ミュージック・アワードで〈ベスト・ビデオ賞〉を受賞した“Untitle 1”をはじめ、シガー・ロスのプロモ・クリップにはさまざまな子供たちが登場する。灰が降りしきる未来の街で防塵マスクを被り、黒い雪だるまで無邪気に遊ぶ子供たち。あるいはフットボールの試合中に、もつれるようにキスを交わし、大人たちに引き離される二人の少年。バスに乗った精神薄弱の子供たちは、海辺で妖精のように踊る。そんなふうにシガー・ロスが独自に作り出した言葉で歌ってきたのは、まだ世界に意味を与えられるまえ、無垢の領域で巻き起こるエモーションについてだった。3年ぶりとなる新作『Takk...』では、そんなシガー・ロスの歌が、これまで以上にオープンで力強く脈打っている。バンド・サウンドにエレクトロニクスやストリングスが溶け合った音響詩は、アイスランドの自然そのままにプリミティヴな幻想そのもの。シューゲイザーの岸辺を漂う文学少年のように、フラジャイルなファルセットを聴かせるヨンシーの歌声も危ういほどの美しさだ。ちなみにバンド名はヨンシーの妹の名前であり、〈勝利の薔薇〉という意味も持つらしいが、本作はこれまででもっとも、その言葉のイメージに近い作品といえるかもしれない。そして、できればこうした前置きなしに、この音の洪水を浴びてほしい。ここにあるのは、オーロラのように発光するイノセンスそのものなのだ。
bounce (C)村尾 泰郎
タワーレコード(2005年09月号掲載 (P64))
シガー・ロスのアルバムを〈聴き易い〉と評しては誤解が生じるかもしれない。もちろんこの4作目は単純な3分ポップ集ではないし、相変わらず唯一無二の音だし、かといってこれまでの作品が難解だったわけでもないのだから。それでも、メリハリの利いた曲展開が目立ち、静かに内へと潜るような感覚に満ちていた前作に比べると、ずばりラウド&ヘヴィーで開放的。飛翔する歌声と浮遊するアブストラクトなサウンドのアンサンブルに、グッと重厚さを増したリズム・セクションが加わり、絶妙なバランスで凪を挿みつつ小爆発を重ねる、壮大で華々しい作品に仕上がった。事前に枠組みを設けず、曲を書きながら1年半をかけて録音したというだけに、まだ変化の途中にあって生き物みたいに蠢いているような感触さえある。また、明確に浮き彫りにされた力強いメロディーラインも、その躍動感と無関係ではあるまい。俄然歌っぽさがアップしており、共にシングル・カット予定の“Glosoli”や“Hoppipolla”が好例だ。それに、従来は彼らが独自に編み出した言語〈ホープランディック〉を使い、特に前作ではアルバム・タイトルは『()』、収録曲もすべて無題で貫いたものの、今回は詞をアイスランド語で綴り、曲名も添えている。従って、言葉がより大きな役を担っているに違いない。現時点で唯一わかっているのは〈Takk〉が〈ありがとう〉を意味することのみだが、確かに感じられる叙述的な趣がこのうえなく新鮮だ。
bounce (C)新谷 洋子
タワーレコード(2005年09月号掲載 (P64))