〈新宿シティ・ポップ〉角松敏生コンピ発売記念特集
”洋楽”がまだ遠い海の向こうの音楽として憧れの対象だった時代。逸早くそれらコンテンポラリーなフュージョンやAOR、ブラック・ミュージックを日本語詩の美しいメロディーと融合させ、”日本語のポップス”としてクリエイトしていた角松敏生。氏が確信犯的に残してきたサウンドは、いまや国内外の音楽マニアたちからジャパニーズ・ブギーや和AORとして発掘され再評価が高まっている。NYサウンドやエレクトロ・ファンク、スクラッチやハードコアなテープ・エディットなど、氏の手掛けたサウンドはYOU TUBEなどで過去のアーカイヴがいくらでも聴ける現在においてもマニアックの極みであり、それらが歌謡曲やアイドル楽曲としてお茶の間に流れていた事実は驚愕かつ痛快!
レビュー担当者
新宿店/TANAKAHMAN
新宿店シティポップ、ニッポンのロック担当。その他イロイロやってます。
角松敏生『東京少年少女 <初回生産限定盤>(+3)』
2021年にデビュー40周年を迎える角松敏生がメモリアル・イヤーに向けて遂に始動!その第一弾となる6曲収録ミニ・アルバムとなる本作、まずは往年の角松サウンド全開なホーンが高らかに響くコンテンポラリー・ファンク①を始め、吉沢梨絵とのデュエット②や珍しくレゲエのリズムに挑戦した④、80'Sカドマツなエレクトロ・サウンド⑤、そして小此木まりとのデュエットによる角松らしい美しいバラード⑥で締めくくる濃ゆ~い内容。力強いサウンドとメッセージ、直球ド真ん中な角松サウンドが威風堂々と鳴り響く入魂の6曲。
Various Artists『角松敏生ワークス -GOOD DIGGER-(RM)』
シティポップ~ブギー・リヴァイバルの中、いま改めて評価の高まる角松敏生プロデュース楽曲。未CD化や廃盤も多い中、遂にレーベルを超えたコンピレーションが登場!まずは長らく未CD化、ファンからも熱望されていた西城秀樹の初CD化楽曲を3曲収録!さらに廃盤状態のVOCALAND関連楽曲5曲や凡子、友成好宏、JIMSAKUなどのレア楽曲を中心にCD2枚組・全32曲を収録。吉田美奈子の人気曲DISC1-⑤や鈴木茂の名曲DISC2-⑫など角松氏ご本人も影響を受けた楽曲カバーや、シングル・オンリーでなおかつ海外の和ブギー再評価のきっかけとなった杏里のDISC2-⑭、大御所・布施明が角松サウンドとがっつり組んだDISC2-⑥などなどマニアックかつ決定版といえる内容。2020年最新リマスター。
Various Artists『角松敏生ワークス -GOAL DIGGER- <タワーレコード限定>(RM)』
海外のモダンなダンス・ミュージックやコンテンポラリー・サウンドを違和感なく日本語に落とし込んだポップス、AORを追求し続けてきた職人=角松敏生。いまとなっては入手困難となっている曲も含む、氏のプロデュース・ワークに焦点を当てたタワレコ限定の番外編となるコンピレーション。おなじみ杏里や中山美穂、岩崎宏美などの有名歌手から、子弟グループであるJADOESや今井優子、盟友であった名ベーシスト青木智仁などを収録。吉田美奈子カバー①やドラム・ブレイクから始まる⑫、さらに映画『ビーバップ・ハイスクール』主題歌の”JINGI愛してもらいます”のB面⑦や②⑤など、とてもアイドルの楽曲とは思えない中山美穂のNYサウンドまで。2020年最新リマスター。
Tokyo Ensemble Lab『ブレス・フロム・ザ・シーズン』
昭和ビッグ・バンド時代から活動し、大野雄二や久石譲などの作品にも参加するベテラン・トランペット奏者、数原晋。自身がリーダーとなるトーキョー・アンサンブル・ラボ88年発売の1stはジャズ~フュージョンを愛する角松敏生が全面プロデュース。いきなり爽快な角松サウンド①から始まりホレス・シルヴァーのスタンダード曲③はCTI調の高速フュージョン、続くニニ・ロッソに捧げた④そして再度角松サウンド全開な⑤、最後はアルバム唯一のボーカル曲⑧で締める角松ファン、フュージョン好き必聴の一枚。
JADOES『ドゴロドン・ジャン(+4/RM)』
尊敬してやまなかった角松敏生の自宅にデモテープを投函したことから、1stから4thアルバムまでを角松プロデュースで制作していたジャドーズ。本作は彼らが初めて角松の手から離れ完全セルフプロデュースで挑んだ1990年リリースの5thアルバム。モダンなミディアムチューン(3)、煌びやかなミドルテンポのファンク歌謡(8)、硬質なエレクトロファンク(11)など、コンテンポラリー&メロウな楽曲とジャドーズらしいユーモアが存分に詰め込まれ共存した一枚。
JADOES『ジャドーズ・アイランド・クラブ(+2/RM)』
後にダンス☆マンとしてモーニング娘。の「LOVEマシーン」などのアレンジを手掛け一世を風靡した藤沢秀樹率いる和製ソウルファンクバンド〜コントグループ・ジャドーズの1991年リリースの7thアルバム。ブレイクビーツ×ラテン歌謡な(1)(2)やエレクトロサンバな(3)、カリプソテイストの(4)、サマーフュージョンな(9)など、どこを切り取っても常夏感満載のリゾートポップスが展開。その中にそっと挿し込まれたAORテイストな(6)のチルナンバーもまたニクい一曲。
JADOES『ゴールデン☆ベスト ジャドーズ -JADOES FUNK LOVE CLUB-(UHQCD)』
お笑いグループ”ジャドーズ”が尊敬する角松敏生氏に直訴しプロデュースしてもらった初期4作品は、いまや早すぎたNYサウンド~和ブギーとして再評価されていますが、実はシングル・バージョンはさらに過激なエクステンデッドが施されており、カット&ペーストにスクラッチン!しまくった正に角松敏生のブラコン趣味全開なのはマニアならご存じのはず。それら入手困難なエクステンデッド・バージョンを収録したベストが本作。代表曲①②をはじめ、歌は下手っぴながらも角松らしい美メロと勢い溢れるモダン・ファンク~ブギー・サウンドが最高!
杏里『Timely!!(+1/Blu-spec CD/PS)』
前作『Bi・Ki・Ni』でアルバムA面5曲を手掛けた角松敏生が、満を持して全編プロデュースを手掛けた杏里の通算6枚目にしてJ-POPを代表する名盤。何といっても①⑥の2大メガヒット曲の収録で語られがちな本作ですが、実はアルバムを通して角松敏生のサウンドへの美意識が貫かれた良質なAOR~ブラック・コンテンポラリー作品。特に作詞・作曲・アレンジすべてを氏が手掛けた②③⑨あたりのアップ~ミッド・ダンサー曲や、オリジナルLP未収録ながら海外のディガーから絶大な人気を誇る⑪も収録したモンスター・アルバム。
角松敏生『TOSHIKI KADOMATSU SPECIAL LIVE '89.8.26/MORE DESIRE』
角松敏生氏によるトリビュートtoはっぴいえんど~ティンパン・アレイ~ハックルバックなライヴ・アルバム。氏にとっても初となったライブ作品、冒頭はっぴいえんど①から始まり、小坂忠の名曲④や鈴木茂の②⑤⑥などを楽しそうにプレイ。個人的には佐藤博の名盤『タイム』収録の③を取り上げているのがさすが!実は角松氏自身もこのライヴで佐藤博氏を招きたかったらしいのですがスケジュール都合上参加できなかったとの事、、、。さらにボーナス・トラックでオリジナル曲⑦"DESIRE"のスタジオ・テイク⑨を収録。
角松敏生『T's 12 INCHES』
80年代の角松敏生がそのサウンド面において最もインフルエンスの源泉としていたブギー~NYサウンド。その角松ワークスの集大成と云える彼の12インチ・シングルの数々をまとめたコンピレーションがこれ!最近では海外のDJやディガーからも熱い注目を浴びる、ジョセリン・ブラウンを翻訳したかのような和ブギー①、あのラテン・ラスカルズがハードコア・エディットを施したミッド・ファンク⑨を始め、ロング・エディットやスクラッチ、マシンガン・エディツトなどがブチ込まれたアルバムVer.とは全く異なる角松敏生の趣味全開な8曲。音が飛んでくる~!
河合奈保子『NINE HALF <タワーレコード限定/初回生産限定盤>(+2/PS)』
昭和アイドルを代表するひとり、河合奈保子がなんと角松敏生も憧れるデヴィッド・フォスターやスティーヴ・ルカサー、マイク・ポーカロら西海岸フュージョン・ミュージシャンを迎えて制作した一枚。もともとアイドルでありながら安定した歌唱力とフラットな歌声でこの手のシティ・ポップスと抜群の相性を聴かせる彼女、①やルカサーとデュエットした④などのスロウ曲からミッド・グルーヴ②⑧までアルバム通してアイドルの作品とは思えないクオリティの高さに感嘆の一枚。
角松敏生『GOLD DIGGER ~with true love~』
角松自身もノッていた85年、まさに全盛期を迎えていたNYサウンド~エレクトロ・サウンド爛熟期のNYへ乗り込み制作された名盤。神がかった角松敏生のメロディ・メイカーぶりと、高水準なNYサウンドに振り切ったサウンドが凄い!①やまるでKENTON NIXばりの②、マルコム・マクラレンの”Hey DJ”を世界最速で人力サンプリングした④など勢い溢れる前半、そしてお得意の美メロ・スロウ⑧やAORサウンド⑩など聴かせる後半まで一切捨て曲ナシ。はっきり言ってここまで高水準なモダン・ソウル、ファンクのアルバムは国内外含めほぼ無いかと。
松下誠『FIRST LIGHT (+1) <数量限定盤>(+1/SHM-CD/RM/PS)』
角松氏曰く『やられたと思った』とインタビューで語っていた、ショーグン~A.B'Sで活躍したギタリスト/アレンジャーの松下誠の1stアルバム。アルバム・タイトルからしてスティーリー・ダンやらフューチャー・フライトやら連想させますが、はっきり言ってそれらAOR名盤たちに勝るとも劣らない和AORの最高傑作!①から夜のしじまへナイト・フライト~②や英詩VER.の④(レアな1STプレスに収録の日本語VER.は⑩にボートラ収録!)、⑤⑥の歌ものフュージョンをはさみ圧巻の和ブギー⑧、そしてそして・・・極上メロウなチルアウト和レアリック⑨で締め括る捨て曲なしの一枚!
角松敏生『EARPLAY ~REBIRTH 2~ <初回限定生産盤>』
ジャケットのAIRPLAYなりきりコスプレで笑かしてくれますが内容はもちろん最上級のAORサウンド!デビューからブラコン~フュージョン期の80年代のセルフ・カバー楽曲を中心に、AIRPLAYの②やE,W&Fなどで有名な名曲⑤などの洋楽カバーも収録。洗練されたサウンドに違和感なく日本語のメロディを乗せる”カドマツ節”に改めて脱帽。サウンド面で取沙汰される機会の多い氏ですが、じつは美メロなソングライターとしての実力は日本でも五指に入るコトを再認識。
今井優子『DO AWAY +4 <タワーレコード限定>(RM)』
長らく入手困難が続いていた角松ワークスのレア盤が2019年最新リマスターを施しタワレコ限定再発!女性S.S.W.の今井優子が90年にリリースした5作目は、全編を角松敏生がトータル・プロデュース。吉田美奈子のカバー②や代表曲⑤⑦⑩などのスロウ~バラードから、後に角松自身もセルフ・カバーした③や④⑥⑨などのファンク・チューンまで、全曲どこから聴いてもこれぞ角松サウンドな内容!
中山美穂『CATCH THE NITE(RM)』
ミポリンこと中山美穂の88年リリースの6thアルバム。3rd『SUMMER BREEZE』で起用した角松敏生を全面プロデュースに起用、都会的なコンテンポラリー・サウンドに彩られた大ヒット・アルバムとなった。ビキビキな重量感溢れるエレクトロ・ナンバー②⑦⑨のほか、シングル曲となったピッチ速めのユーロ・テイストな⑥、さらに角松自身の重要レパートリーでもある名曲⑩や⑧など、これぞカドマツ節な美麗スロウ曲を収録しているのもポイント高し!イントロから本格的なブラコン~NYサウンドが始まったかと思いきやミポリンのキュートなボーカルが聴こえる瞬間のミスマッチ感、これぞアイドル歌謡の醍醐味なり。
角松敏生『Breath From The Season 2018 ~Tribute to TOKYO ENSEMBLE LAB~ [CD+Blu-ray Disc](LTD)』
ジャズ、フュージョンを愛する角松が88年に手掛けたトーキョー・アンサンブル・ラボ。角松ご本人は納得がいかない仕上がりだったようで2018年に満を持して発表されたリベンジ作品。オリジナルに収録されていた①⑨⑫のほか、エルボウ・ボーンズ&ザ・ラケッティアーズの摩天楼ダンス・クラシックス⑪ではコアラモード.のあんにゅとのデュエットも実現。ズート・スーツでキメたジャケットからもお分かりの通り、あの時代のラグジュアリーなビッグ・バンド・サウンドを贅沢に追及した角松趣味が全開の一枚!
浜崎容子『BLIND LOVE』
「トラウマテクノポップバンド」アーバンギャルドのボーカル・浜崎容子が角松敏生をプロデュースに迎えた異色のポップアルバム。角松の作詞作曲アレンジによる予測不能の展開を見せる3分間ポップス(1)、菊地成孔の作詞による(4)、サディスティックスのカヴァー(7)など、退廃的なメロディーと甘美なボーカル、フェティッシュな言葉遣いといった浜崎の魅力がテクノポップをベースにした角松の冴え渡るプロデュースによってより高次元に封じ込められた全7曲を収録。
Airplay『ロマンティック <期間生産限定盤>(LTD/RM)』
角松敏生も最新作『EARPLAY ~REBIRTH 2~』でジャケット含めオマージュ(パロディ?)を捧げた西海岸AORサウンドを代表する名盤。セリーヌ・ディオン、マイケル・ブーブレなどのプロデューサーとしても知られるデイヴィッド・フォスター。そして凄腕フュージョン系ギタリスト、ジェイ・グレイドンのふたりによる本作にはスティーヴ・ルカサーやジェフ・ポーカロらTOTO人脈も参加。カラッとしたLAの空気感が伝わるブライトな音響やアメリカン・ロックをベースにしたフュージョン・サウンドはまさにこの時代の王道にして最高峰。ジェイ・グレイドン自らが手掛けた2010年リマスター音源を使用。
「いまや入手困難となっている角松敏生プロデュースによる楽曲をまとめたコンピレーション2タイトルがリリース!」一覧はこちら。
タグ : シティ・ポップ タワレコ新宿シティ・ポップ
掲載: 2020年07月22日 13:24