NHK「現代の音楽」アーカイブ・シリーズ第5弾(2タイトル)
NHK「現代の音楽」アーカイブ・シリーズ第5弾
人気シリーズの第5弾は、松平頼暁と先頃、亡くなられた林光の作品集、計2タイトル。
松平頼暁の1枚は、60~70年代の初演ライヴなどを収録したもので、この当時の時代の音楽を伝える価値あるアルバム。一方、林光の作品集では、作曲者自らの初演によるピアノ・ソナタや混声合唱のための「原爆小景」~“水ヲ下サイ”、12声部の混声合唱のための「JAPAN」などが収録されていて興味深いです。
※HQCD(Hi Quality CD)による高音質盤です。
この音は聴いてみなければわからない・・・ 確固たる理論に裏打ちされた「音の建築物」
日本でも有数の名家、水戸松平氏の直系であり、作曲家松平頼則の長男として生まれた松平頼暁。中学2年の時に終戦を迎えた彼は、様々な思いを抱えながらまずは科学の道へ進みます。しかし、「情念に拠らない芸術」を模索するために、独学でピアノと作曲を習得。その信念を貫くかのように、常に実験的でロジカルな作品を生み出し続けています。その技法は、もちろん12 音から始まり、一作ごとに新しい語法を打ち立てて行くもので、世界の音楽の潮流に呑まれることなく、常に孤高の世界を生み出していると言えるでしょう。解説は川崎弘二氏によるもので、「革新的な技法が結実された複雑な音の連なり」を丁寧に読み解き、美しい展開図として聴き手に提示してくれます。この解説を読むだけでも、日本の現代音楽の一つの潮流が理解できるのではないでしょうか。
松平頼暁: コンフィギュレーション, 分布, オルタネーションズ, 他
【収録内容】
1. 室内オーケストラのための「コンフィギュレーション」(1961-63)〈初演〉
若杉弘(指揮)、東京交響楽団
録音:1967年3月29日 都市センターホール「現代の音楽展67」
放送:1967年7月9日
2. 弦楽四重奏とリング・モジュレータのための「分布」〈初演〉
植木三郎(ヴァイオリン)、板橋健(ヴァイオリン)、山崎正秋(ヴィオラ)、高橋忠男(チェロ)
録音:1968年3月16日 朝日講堂「クロストーク3」
放送:1968年7月7日
3. コンボのための「オルタネーションズ」(1967)
来馬賢(トランペット)、佐藤英彦(打楽器)、和田則彦(ピアノ)、
尚雅俊(コントラバス)、片山幹男(リング変調器)、松平頼暁(指揮)
録音:1969年2月25日 東京文化会館小ホール「現代の音楽展69」
放送:1969年5月25日
4. マリンバとオーケストラのための「オシレーション」(1977)〈初演〉
高橋美智子(マリンバ)、黒岩英臣(指揮)、東京都交響楽団
録音:1979年10月11日 東京文化会館 第1 回「オーケストラ・プロジェクト79」
5. テープのための「アッセンブリッジス」(1968)
NHK 電子音楽スタジオ
放送初演:1969年1月5日
NHK「現代の音楽」アーカイブシリーズに「林光」の音楽、満を持して登場!
1931年東京に生まれ、東京藝術大学作曲科を中退するも、尾高尚忠氏に師事し、管弦楽曲から声楽曲まで多くの作品を発表した林光。あの衝撃的な合唱組曲「原爆小景」で歌われる「水ヲ下サイ」(当盤にも収録)は、誰しもが、一度聴いたら決して忘れることのない曲として知られています。日本語の響きを徹底的に追求し、宮沢賢治の音楽作品を広め、またオペラシアター「こんにゃく座」の音楽監督、作曲家としても活躍しました。鋭い問題意識は、全ての作品の奥底に横たわり、その音に限りない鋭さと深みを与えています。今回のアルバムには、前述の「水ヲ下サイ」を始め、ピアノ・ソナタ、室内楽作品、合唱作品など幅広いジャンルの曲を収録することで、稀有の作曲家の姿を捉えることに成功したと言えるでしょう。とりわけ自作自演である「ピアノ・ソナタ」の演奏はあまりにも素晴らしく、まさに矜持を正して聴くべき歴史的記録です。今回の解説も、日本の現代音楽の第一人者である川崎弘二氏が担当。作品の成立過程から意義まで詳しく読み解いています。
林光: ピアノ・ソナタ, プレイ I, II, 原爆小景 - 水ヲ下サイ, 他
【収録内容】
1. ピアノソナタ(1965)〈初演〉
林光(ピアノ)
放送初演:1967年2月25日
2. 10人の奏者のための「プレイ I」(1971)
小出信也(フルート)、内山洋(クラリネット)、山畑馨(ファゴット)、
北村源三(トランペット)、伊藤清(トロンボーン)、有賀誠門(打楽器)、
本荘玲子(ピアノ)、田中千香士(ヴァイオリン)、徳永健一郎(チェロ)、
田中雅彦(コントラバス)、岩城宏之(指揮)
録音:1971年9月2日 東京文化会館「WE MEET TODAY」
放送:1972年2月21日
3. ヴォイス、ヴァイオリンとピアノのための「プレイ II」(1972)
黒沼ユリ子(ヴァイオリン)、丹羽勝海(テノール)、林光(ピアノ)、テープ再生
録音:1972年01月29 or 30日
放送:1973年5月13日
4. 混声合唱のための「原爆小景」1 . 水ヲ下サイ(1958)
田中信昭(指揮)、東京混声合唱団
録音:1960年9月13日 朝日講堂「第1回 東京現代音楽祭」
放送:1960年10月2日
5. 受難のはじまり(1961)〈初演〉
坂部美知子(フルート)、野口龍(フルート)、乃村和子(オーボエ)、
浅井俊雄(クラリネット)、松代晃明(クラリネット)、斎藤明(クラリネット)、
赤堀榛名(ホルン)、倉野昌三(ホルン)、小川内一彦(トランペット)、
山口晃弘(トロンボーン)、平田奉文(トロンボーン)、大橋敏成(コントラバス)、
佐藤英彦(打楽器)、熊谷弘(打楽器)、上埜孝(打楽器)、野口力(打楽器)、
田中信昭(指揮)、東京混声合唱団
録音:1961年11月14日 共立講堂「東京混声合唱団 第25回定期演奏会」
放送:1962年3月9日
6. 12声部の混声合唱のための「JAPAN」(1970)
田中信昭(指揮)、東京混声合唱団
録音:1971年2月13日 虎ノ門ホール「現代の音楽展'71 合唱作品」
放送:1971年6月14日