忌野清志郎(語り)と高橋アキ(ピアノ)による「ぞうのババール」が復活CD化
あれから3年。2009年5月2日、虹の向こうに出立。一週間後に青山葬儀所で行なわれた『青山ロックン・ロール・ショー』の青空には、大きなバルーンが光る風に吹かれ、揺られていましたっけ。
ミュージシャン、忌野清志郎さんが亡くなって早3年、諸事情により長らく生産中止となり、語り継がれた1枚のCDが、私たちのもとにようやく戻ってきます。
絵本「ぞうのババール」は、フランスの作家ジャン・ド・ブリュノフ(1899~1937)により、1931年に発表されました。母親を失った小象が、町へ出て人間に可愛がられて成長し、森へ戻って「ぞうのくに」の王様になる物語は、刊行されるや子供たちに愛され、各国語に訳され、今日まで児童文学の宝物のひとつとなっています。(日本語訳は矢川澄子により1974年刊・評論社)
音楽物語「ぞうのババール」は、1940年、親戚の子供たちから「この本に音楽をつけて…」と頼まれた作曲家フランシス・プーランク(1899~1963)により、朗読とピアノのために作られました。(完成は1945年。戦時下ということもあってとりまぎれ、戦争の終ったある日、「あのババールはどうなったの?」と訊かれ、彼らが忘れていないことにびっくりし、さっそく作曲にとりかかったというエピソードが残っています。また楽譜の扉にはその子供たち9人の名前が記され、献呈されています。)
当時なかった日本語の語りで、この名作・名曲のアルバムを…と思い立ち、ピアノ演奏は「サティ・ピアノ音楽全集」を完成したばかりの高橋アキさんにお願いし、快諾をいただきました。が、朗読の人選は悩みました。挙句、この本の訳者である矢川澄子さんにお目にかかり相談させていただいたところ、「《男の子の成長の物語》だから男性が、そしてできることならパパが良い…」とのこと。そして当方がお目にかけたリストのなかから、迷うことなく「忌野清志郎さん」を選ばれました。
こうして1989年にようやく生まれた初の日本語版・音楽物語「ぞうのババール」は、クラシックとしては異例の大ヒットとなります。(クラシックの名曲+POPで意外な語りて…という組み合わせは、明石家さんま「ピーターと狼」、立松和平「サティ」、巻上公一&デーモン小暮「兵士の物語」…といった、そのあとに続く『はじめてのクラシック』のカラーともなりました。)
残念ながらそののち、このアルバムはイラストの権利関係により追加プレスが出来ないこととなり、その結果長らく廃盤となっていました。今般その問題が解決し、EMIミュージックのご厚意により、当レーベルから、およそ10年ぶりの復活を迎えます。
(仙波知司氏;ディスク クラシカ ジャパン・元東芝EMIプロデューサー)
【収録内容】
プーランク作曲/ジャン・ド・ブリュノフ台本/矢川澄子訳
音楽物語「ぞうのババール」
【演奏】
忌野清志郎(語り)
高橋アキ(ピアノ)
【録音】
1986年
収録時間:35 分
Licensed by EMI Music Japan
※初出時にカップリングされていた、ピーター・ユスティノフによるフランス語朗読版は含まれません。