欧州で活躍するピアニスト、坂田尚子のセカンド・アルバム
研ぎ澄まされたインプロビゼーションの絶妙さはピアノ・トリオの新たな到達点を示した。才気煥発な坂田ならではの感性の詰まったセカンド・アルバム。
欧州で活躍するピアニスト、坂田尚子の衝撃デビュー作品『Kaleidoscope』から2年の歳月をへて、同一メンバーによるセカンド・アルバム『FLOWER CLOUDS』が登場。
白いキャンバスに自由に描かれた抽象絵画のように、生命感溢れるサウンド。まるで挑発しているかのように、厳密なテンポを少しずらし変化させることによって陰影を与え、音像が立体化する。かとおもえばシンプルな刻みに絡む美しいメロディーは刺激的ですらある。研ぎ澄まされたインプロビゼーションの絶妙さはピアノ・トリオの新たな到達点を示した。
メンバーは前回同様、イエテボリ音大時代にコンクールで優勝した凄腕仲間。坂田尚子のバックをスウェーデン人のリズム隊が脇を固めるという形だが、欧州のスタイルに坂田が良く合う、合わせるということではない。欧州的と捉えていた耽美な感覚は、そもそも日本古来の伝統芸能が持ち合わせていた「間」の感覚に近いのだ。坂田を中心に展開するこの作品を聴いて確信をもてた。
印象的なオープニングから始まり、端正な王道メロディーに変拍子や高速チューンと七変化。才気煥発な坂田ならではの感性の詰まったアルバムである。タイトルがシンボルで表現された4曲のうち、1分にも及ばないものもあるため楽曲の間の変化をつけるためのブレイク的な意味なのだろうとおもいきや、どれもがユニークでおもしろい。一発で魅了された。完璧なアルバム。(Text by 前泊 正人: ライナーノーツより)