ドローン~現代音楽を更新する才能=ワンオートリックス・ポイント・ネヴァー
実験音楽~現代音楽シーンで今最も熱い注目を集めるアーティストがいる。〈Warp Records〉との契約も大きな話題となったワンオートリックス・ポイント・ネヴァーことダニエル・ロパティンだ。
ニューヨーク、ブルックリンを拠点に活動するダニエル・ロパティンは、これまでに、カセットテープのフォーマットの作品も含め、様々なレーベルからワンオートリックス・ポイント・ネヴァー名義で作品を発表してきており、ピッチフォークで8.8点を獲得しBEST NEW MUSICにも選出された2011年作品『Replica』は特に評価が高く、テレビCMの音からとったローファイ・オーディオの素材を使って制作されていることでも話題となった。
近年では、2010年作品『Returnal』のタイトル・トラックをピアノ曲へと作り直した際にヴォーカリストとして招いたアントニー・ヘガティ(アントニー・アンド・ザ・ジョンソンズ)や、現行アンビエント・シーンの最重要アーティスト、ティム・ヘッカーとのコラボレーション(2012年にアルバム『Instrumental Tourist』を発表)するなど、ドローンにも現代音楽にも接近できる希有な音楽家として、その存在感を確かなものにする。さらに2011年にNY近代美術館で、ヴィジュアル・アーティストのネイト・ボイスとコラボレートしたマルチメディア・パフォーマンスを披露し、2012年のカンヌ映画際でもインスタレーション・イベントに参加。ソフィア・コッポラの最新映画『The Bling Ring』 (2013年公開予定)のオリジナル・スコアを担当したことでも話題となっている。
今作『R Plus Seven』は、ダニエル・ロパティンの評価を決定づけた高い実験性、それでいて幅広いリスナーに心地良く音楽を届けられる秀でたバランス能力が見事に発揮されている。また、これまでになくトラディショナルな音楽形式に挑戦しているという意味で、過去作品から大きな飛躍を果たした作品とも言えるだろう。一つ一つのアブストラクトなパーツがパズルのように組み合わさることで浮かび上がる劇的な情景が、いつの間にか聴く者を引き込んでいく。
本作はスティーヴ・ライヒ、フィリップ・グラス、ギャヴィン・ブライアーズ、ブライアン・イーノ、ハロルド・バッド、クリスチャン・フェネス、そして、エイフェックス・ツインらによって提唱/更新されてきた現代音楽~エレクトロニック音楽の大きな鉱脈に連なりながら、現行インディー・ミュージックのモニュメントとして大きな評価を獲得するだろう。