異色作曲家ライアン・エイモンの挑戦『エリジウム』登場
あまりにも独創的なストーリーで映画ファンをうならせた『第9地区』のニール・ブロムカンプ監督に、ハリウッドも大々的に信頼を寄せ、超大作にして監督ならではのユニークな切り口のSFが完成。早くも、アメリカをはじめ、大ヒットとなっている。
『エリジウム』は、一部の超富裕層が地球を離れたスペース・コロニーで平和な暮らしを続け、そして、そこはいかなる難病も治癒させる高度な自動機器を備えている…そんな世界を支えているのは、それ以外の人間たち。彼らは、劣悪な環境の地球で、一生を終えなくてはいけない。このディストピア設定は、過去のジョン・ブアマン監督のカルト『未来惑星ザルドス』をそのまま進化させたものともいえ、『2300年未来への旅』『ソイレント・グリーン』『赤ちゃんよ永遠に』といった人口対策ものも思い出させたりする。
さて、その新しいSF映画にして、今までのSF映画の歴史を踏まえた上での、アドベンチャー好きにはたまらなく、かつそれでいて硬派という作品となっているが、映画音楽ファンには、もうひとつの話題性がある。
近年クローズアップされるようになり、多くのヒット盤も生み出している"予告編用音楽"の世界。TWO STEPS FROM HELL,AUDIOMACHINEなど、ハリウッド映画の予告編やスポットCMの劇伴として使用する、映画本編とは別の、しかし、スケール感たっぷりのドラマティックなインストゥルメンタル。その製作を専門とするプロ達の仕事が、次々、CDとして入手可能になり、燃えるスコア・ファンを中心にしびれさせている。
そんな、予告編用音楽制作集団のひとつ<シティ・オブ・ザ・フォーリン>を主宰しているのが、今回の音楽を任されたライアン・エイモンである。今回は、映画すべてのスコアのクリエイトということで、ドラマチックなメロディを鳴らし続ける、というのではなく、乾いているが、重厚なサウンドデザインの中に、美しいメロディが隠されている。
ライアン・エイモンの起用が、今後、サントラ界全体を進化させていくのか否かは、まだわからないが、興味深い展開を始めているのは、確かである。
『エリジウム』は9月20日(金)より全国ロードショー!