名門WERGOレーベルの礎を築いたブーレーズ指揮の伝説の名演がリマスタリングされて復活!~シェーンベルク:月に憑かれたピエロ
ドイツの現代音楽の名門レーベル、WERGO。その記念すべきリリース第1弾は1963年、このブーレーズ指揮による「月に憑かれたピエロ」のLP盤でした。レーベルの礎を築いたこの名録音が、このたび満を持してのリマスタリング、CD化されます。
シェーンベルクの無調時代を代表する作品、『月に憑かれたピエロ』。話し言葉の伴奏のために書かれた器楽の音楽、「メロドラマ」のスタイルで書かれています。このメロドラマというジャンルは19世紀に一世を風靡し、一度下火となったものの、1910年頃再び人気が出てきたもので、シェーンベルクがこの作品を書いたのは最先端、というわけではありませんでしたが、メロドラマを代表する作品として歴史に輝いています。
五人の奏者が八つの楽器を受け持つという編成による12音技法の伴奏パートと、語る旋律シュプレヒシュティンメ(シュプレヒゲザングとも/音符の符尾に×印がつけられた音をまず正確に音符どおりの高さで発声したのち、すぐに高く、あるいは低く変化させる)が織り成すミステリアスな世界は、一度聴いたら忘れられない鮮烈なもの。この作品を書くよう示唆したのは女優(正確には話し家、あるいは朗吟家)のアルベルティーネ・ツェーメで、この曲は彼女にささげられており、初演も彼女によって1912年にベルリンで行われています。
この録音は、初演から約50年経ったころのもの。ブックレットには発売当時のブーレーズのコメントが掲載されていますが、1941年にシェーンベルク自身が信頼していたエリカ・ワーグナー=シュティードリーを起用して行った録音を聴いて、「今日の我々の耳には絶望的に時代遅れ」とし、シェーンベルク自身が演じるシュプレヒシュティンメを聴いたことのあるレオナード・シュタイン(シェーンベルクのアシスタントでもあった)の助言を得るなど、様々な試行錯誤をしてこの演奏に至った経緯が語られており、こちらも興味津々です。(キングインターナショナル)
現在では指揮者としても評価の高いブーレーズの、指揮活動最初期の名演としてコアな人気を博した名盤でもありました。冷徹かつ客観的視点を徹底した、ドラマを音として捉えたシェーンベルクの意図をこれほど見事に表現しきった演奏はそうはお目にかかれず、ブーレーズの指揮を語る上では、必須のアイテムと言っても過言ではありません。
【曲目】
シェーンベルク:月に憑かれたピエロ(全曲)
【演奏】
ヘルガ・ピラルツィク(声)
マリア・ベルクマン(ピアノ)
ジャック・カスタニエール(フルート&ピッコロ)
ギィ・デュプル(クラリネット)
ルイ・モンテーニュ(バス・クラリネット)
ルーベン・ヨルダノフ(ヴァイオリン)
セルジュ・コロー(ヴィオラ)
ジャン・フショ(チェロ)
ピエール・ブーレーズ(指揮)
【録音】
1961年
(1963年にLP発売 / WER60001;2012年 DSDリマスタリング)
カテゴリ : ニューリリース
掲載: 2014年05月12日 17:59