24ビット96kHzリマスター/ソニークラシカル・オペラ・シリーズ
レナード・バーンスタイン/ヴェルディ:ファルスタッフ
バーンスタインが、1966年に音楽の都ウィーンに乗り込んで録音した、「ファルスタッフ」録音史上に残る名盤が最新の24ビット96kHzリマスターで蘇ります。カラヤンが辞任した後、世界的なスター指揮者を探していたウィーン国立歌劇場にとって、バーンスタインはまさに理想的存在でした。彼はその期待に応え、1966年3月、ヴィスコンティによる新演出の「ファルスタッフ」で大成功を収めました。その上演と並行してキャストはそのままに、ゾフィエンザールに移した録音されたのが本作で、バーンスタインにとっても初のオペラ録音(そして結果として生涯唯一のヴェルディ・オペラ録音)となった記念的アルバムです。この後、バーンスタインはウィーンの寵児となり、亡くなるまでこの街と密接な関係を保ち、ウィーン・フィルと数多くの名演・名盤を生み出すことになりますが、その発端となったのがこの「ファルスタッフ」の成功だったのです。何といっても躍動感のあるフレッシュな演奏によって、圧倒的な生命力を作品にもたらしたバーンスタインの指揮が圧巻です。ウィーン・フィルも引き締まった響きを持ってその熱い指揮に応えています。題名役のディートリヒ・フィッシャー=ディースカウの緻密な歌唱は哲学的ともいえるユニークなファルスタッフ像を創造し、史上最高のフォードと称えられたパネライの名唱、メグ歌うシュッティの可憐さも耳に残ります。脇を固めるレズニック(クイックリー夫人)、シュトルツェ(カイウス)、クンツ(ピストーラ)の芸達者ぶりも見事です。本作は、バーンスタインがCBSの、ウィーン・フィルがデッカの専属契約アーティストであったため、録音自体は、プロデューサーのエリック・スミスが率いるデッカのスタッフによって行なわれました。ショルティの「指環」以来(数か月前には「神々の黄昏」の録音が行なわれ、「指環」録音が完結していました)、この名ホールの音響を知り尽くし、「ソニックステージ」としてオペラの収録にも長じたデッカの名エンジニアによって、歌手・オーケストラ・合唱団のバランスも完璧なまでに保たれ、バーンスタインのビビッドな解釈が余すところなく刻み込まれた名録音が誕生したのです。CD初期のリマスター以来、久しぶりのオリジナル・アナログ・マスターからの24ビット96kHzリマスターによって、アナログ全盛期の音の輝きを取り戻しています。
【演奏】ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(Br:ファルスタッフ), ロランド・パネライ(Br:フォード), グラツィエッラ・シュッティ(Sp:ナンネッタ), イルヴァ・リガブエ(Sp:フォード夫人), ヒルデ・レッスル=マイダン(S:メグ), レジーナ・レズニック(Ms:クイックリー夫人), 、ファン・オンシーナ(T:フェントン)、マーレイ・ディッキー(T:バルドルフォ), ゲルハルト・シュトルツェ(T:カイウス医師), エーリヒ・クンツ(Br:ピストーラ), 他, ウィーン国立歌劇場合唱団, ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団,レナード・バーンスタイン(指揮)
【録音】1966年3~4月, ウィーン、ゾフィエンザール(ステレオ)
レナード・バーンスタイン/R・シュトラウス:ばらの騎士
1971年、ウィーンで大成功を収めた直後にジョン・カルショウのプロデュースで録音された、バーンスタインの「ばらの騎士」名盤が最新の24ビット96kHzリマスターで蘇ります。バーンスタインは「ファルスタッフ」の2年後、1968年5月にオットー・シェンク演出の「ばらの騎士」の新演出上演をウィーン国立歌劇場で指揮し、48回のカーテンコールを受けるという大成功を収めました。その3年後、1971年3月の再演と並行してゾフィエンザールでセッション録音されたのが当アルバムです。骨の髄まで作品がしみ込んでいる練達のウィーン・フィルを尊重しつつ、明快で力感に満ちた鮮烈な演奏を引き出したバーンスタインの指揮が一番の聴きものです(国立歌劇場での上演では、第3幕の前奏曲では指揮せずに目配せだけで指示を出したとされています)。独墺系の名歌手をずらりとそろえた歌手陣も粒ぞろいで、元帥夫人を歌うクリスタ・ルートヴィヒの見事なキャラクタリゼーションと豊かな歌唱(カラヤンのEMI盤ではオクタヴィアンとして知られています)、ソプラノ歌手としては珍しくオクタヴィアン役に起用されたギネス・ジョーンズの凛々しさ、ゾフィーを歌うルチア・ポップの初々しさ、そして野卑になりすぎずウィーン風の味わいを醸し出すワルター・ベリーのオックス男爵など、適材適所の配役です。プラシド・ドミンゴがテノール役で出演しているのも聴きもの。本作も、「ファルスタッフ」同様、デッカのスタッフによって録音が行なわれました。プロデュースは、デッカの伝説的なプロデューサー、ジョン・カルショウ。カルショウはこの録音の時点ですでにデッカを退社していましたが、バーンスタインの強い希望でプロデューサーに起用されました。エンジニアは、ゴードン・パリー、ジェームズ・ロックと、黄金期のデッカ録音を支えた名手が担当しています。シュトラウスの豊麗極まる見事なオーケストレーションの醍醐味を味あわせてくれる名録音です。CD初期のリマスター以来、久しぶりのオリジナル・アナログ・マスターからの24ビット96kHzリマスターによって、アナログ全盛期の音の輝きを取り戻しています。
【演奏】クリスタ・ルートヴィヒ(Ms:元帥夫人), ギネス・ジョーンズ(Sp:オクタヴィアン), ルチア・ポップ(Sp:ゾフィー), ワルター・ベリー(Bs:オックス男爵), エルンスト・グートシュタイン(Br:ファーニナル)、エミー・ローゼ(S:マリアンネ)、プラシド・ドミンゴ(T:テノール歌手), 他, ウィーン国立歌劇場合唱団, ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団, レナード・バーンスタイン(指揮)
【録音】1971年3~4月, ウィーン、ゾフィエンザール(ステレオ)
フリッツ・ライナー/ビゼー:カルメン
1948年から1953年まで、メトロポリタン歌劇場の指揮者としてメトに黄金時代をもたらしたフリッツ・ライナー指揮によるかけがえのない名盤、1951年の「カルメン」の復活です。1948年に「サロメ」でメトにデビューし、センセーショナルな成功を収めたライナーは、1953年にシカゴ交響楽団音楽監督に就任するまで、メトの指揮者陣の支柱的存在として、モーツァルト、ワーグナー、シュトラウスなどの独墺オペラを中心としたレパートリーに取り組み、メトの上演水準を飛躍的に高め一時代を画しました。ライナーのオペラ指揮者としての手腕を現在に伝えるのが1951年にRCAによって録音された「カルメン」で、上演のラジオ放送からのエアチェックを除き、ライナーがメト時代に残した唯一のオペラ全曲盤であり、またライナーにとって生涯唯一のセッション録音によるオペラ全曲盤ともなった貴重な録音です。オーケストラと合唱は、メトのアンサンブルではなく、録音用に編成されたRCAビクター管弦楽団とロバート・ショウ合唱団が起用されているものの、歌手陣は当時メトの舞台で歌っていた人気歌手が起用されています。カルメンは、1913年生まれのリーゼ・スティーヴンスの十八番で、アメリカ生まれの彼女は殊の外この役を得意としていて、メトではなんと124回も歌ったという記録が残っています。ドン・ホセのジャン・ピアース、エスカミーリョのロバート・メリルもメトの常連歌手で、その迫力あふれる歌唱は1950年代のメトの華やかなステージを彷彿とさせてくれます。CD初期のリマスター以来、久しぶりのオリジナル・アナログ・マスターからの24ビット96kHzリマスターによって、モノラルながらもクリアで豊かな音で名演を味わっていただけます。
【演奏】リーゼ・スティーヴンス(Ms:カルメン), ジャン・ピアース(T:ドン・ホセ), ロバート・メリル(Br:エスカミーリョ), リチア・アルバネーゼ(Sp:ミカエラ), 他, ロバート・ショウ合唱団, RCAビクター管弦楽団, フリッツ・ライナー(指揮)
【録音】1951年5~6月, ニューヨーク、マンハッタン・センター(モノラル)
ジョン・プリッチャード/ドニゼッティ:愛の妙薬
ドミンゴとコトルバスが豪華共演を果たした1977年録音の「愛の妙薬」が24ビット96kHzリマスターで復活します。ドラマティックな役柄を得意とするドミンゴとしては珍しく、ネモリーノ役に挑戦し、それまでのダメ男的イメージとは異なる力強い意志を持った立派なネモリーノ像を描き出している点がユニーク。ラテン人としてのとぼけた味わいも感じさせる点がさすがドミンゴならでは。独特のしっとりとした声と可憐な容姿で1970年代から80年代のオペラ界を席巻した名花イレアナ・コトルバスも、落ち着きのある内省的な人物としてのアディーナを歌っています。ドゥルカマーラにエヴァンス、ベルコーレにヴィクセルと、ヴェテランのイギリス勢が脇を固め、グラインドボーンやコヴェント・ガーデンで活躍したイギリスの名匠プリッチャードが、これまた折り目正しい音楽づくりで歌手陣をサポートしているのも聴きものです。CD初期のリマスター以来、久しぶりのオリジナル・アナログ・マスターからの24ビット96kHzリマスターによって、アナログ全盛期の音の輝きを取り戻しています。
【演奏】プラシド・ドミンゴ(T、ネモリーノ), イレアナ・コトルバス(Sp、アディーナ), ジェレイント・エヴァンス(Bs、ドゥルカマーラ), イングヴァー・ヴィクセル(Br、ベルコーレ), リリアン・ワトソン(Sp、ジャンネッタ), 他, コヴェント・ガーデン王立歌劇場管弦楽団&合唱団, ジョン・プリッチャード(指揮)
【録音】1977年1月,5月,6月 (ステレオ)
エーリヒ・ラインスドルフ/R・シュトラウス:サロメ
1969年にロンドンで録音されたラインスドルフ指揮の「サロメ」の名盤のリマスターによる復活です。何と言ってもモンセラ・カバリエの歌うサロメの美しいこと。通常ならばドイツ系のドラマティック・ソプラノが手掛けるサロメ役ですが、ここでは最も美しい声を持つソプラノと称された全盛期のカバリエが、少女の様な純さと妖麗さの両方を持った不思議なサロメを描き出しています。ヘロディアスには、1970年代以降サロメ役を手掛け始める名歌手リザネクを、ヘロデにはヴェテランのカナダ人テノール、リチャード・ルイスが配されるという万全の布陣。ワーグナーやシュトラウスのオペラで人気を博していたアメリカ人のテノール、ジェームズ・キングがナラボート役にキャストされているのも豪華です。ラインスドルフの指揮は、シュトラウスの仕掛けたオーケストレーションの綾を解きほぐし、豊麗な響きと緻密さを兼ね備えた見事なもの。プレヴィンが首席指揮者を務め、黄金期を迎えていたロンドン響の機能美もさすがです。CD初期にGold Sealで発売されて以来、久しぶりのオリジナル・アナログ・マスターからの24ビット96kHzリマスターによって、アナログ全盛期の音の輝きを取り戻しています。
【演奏】モンセラート・カバリエ(Sp:サロメ), シェリル・ミルンズ(Br:ヨカナーン), リチャード・ルイス(T:ヘロデ), レオニー・リザネク(Ms:ヘロディアス), ジェームズ・キング(T:ナラボート), ユリア・ハマリ(Sp:ヘロディアスの小姓)、他, ロンドン交響楽団, エーリヒ・ラインスドルフ(指揮)
【録音】1968年6月, ロンドン、ウォルサムストウ・タウン・ホール(ステレオ)
カテゴリ : ニューリリース
掲載: 2014年05月23日 18:30