新作『The Imitation Game』他コンポーザー、アレクサンドル・デスプラに注目!
第二次世界大戦中、ドイツのエニグマ暗号を解読した数学者として知られるアラン・チューニングの激動の実話を映画化した『The Imitation Game』。
監督は前作『ヘッドハンターズ』が世界的に注目され、一気に活躍の場を世界に広めることとなったノルウェーの監督モルテン・ティルドゥム。
アラン・チューニングに扮するのはベネディクト・カンバーバッチ、そしてキーラ・ナイトレイ、マシュー・グード、チャールズ・ダンス、マーク・ストロングなどの個性派俳優が共演。撮影は『永遠の子どもたち』『インポッシブル』などスペインで活躍しているオスカル・ファウラ。国際的なチームである。
そんな国際的チーム、音楽は、フランスから、今やインターナショナルに、各国の名匠から信頼されているエース格、アレクサンドル・デスプラである。
アレクサンドル・デスプラといえば、1990年代に、ジャック・オディアール監督作品他、フランスで繊細なドラマの作品を次々担当。気鋭のフレンチ・コンポーザーの位置から、世界的な飛躍につながったのが、ピーター・ウェーバー監督のイギリス映画2003年作品『真珠の耳飾りの少女』で、この作品のスコアがゴールデングローブ賞でノミネートされたあたりから、フランス映画以外からもオファーが増えることとなる。ジョナサン・グレイザー監督の『記憶の棘』、スティーヴン・ギャガン監督の『シリアナ』、スティーヴン・フリアーズ監督の『クイーン』・・・・その後の間髪を入れない活躍はご存じの通り。
デスプラのサウンドは、ストリングスを基調としたオーケストラ・スコアを中心に、丁寧に繊細な描写が美味なところ。そこに、近年のハリウッド・スコアでは珍しくなってしまった、スコアにおけるメロディの重要性にも心を配られているのが明確でもある表現がある。
さて、そんなカラーをもちながらも、作品に合わせた意外なアプローチにも果敢に立ち向かうデスプラ。さて、今回は、基本的にはオーケストラが丁寧に音世界を築きあげていくスタイルだが、これまでの人間ドラマでアプローチした美しさは抑え、ドラマの激動さが表現されるダイナミックな面が大きくクローズアップされている。
現在、ハリウッドで活躍するコンポーザーたちの中で、デスプラは、数少ない、60年代~70年代の映画音楽を思わせるサウンドを時折聴かせてくれる仕事のある人である。今回は、現在、入手可能なデスプラの過去作品と、『The Imitation Game』のサントラに心を動かされたリスナーに、お薦めの<60年代~70年代のスコア名作>をピックアップする。