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2人組ガールズ・ポップ・ユニット 恋のパイナップルのアルバム『SUM!』発売記念インタビュー掲載中

恋のパイナップル


最新アルバム『SUM!』が耳の鋭いインディポップ・ファンの間で注目度急上昇中の2人組ガールズ・ポップ・ユニット、恋のパイナップル。青春の甘酸っぱい恋愛風景を雑貨感満点な玩具ポップ・サウンドに乗せて歌う彼女たちの魅力は、なんと言っても、そのポップでキラキラしたモラトリアム感にある。
モラトリアムというと、「永遠の夏休み」や「永遠の文化祭前夜」といった表現がよくされるが、彼女たちのは「永遠の郊外の放課後感」と形容したほうが似合う独特なもの。とはいっても、本人たちは「大人になりたくない」という「モラトリアムこじらせ」タイプでは全くないのが、これまた面白いところだ。
そのユニークな世界観は、どのように形成されたのか。彼女たちに話を聞いた。

インタビュアー:小暮秀夫

 

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――まずは2人の音楽体験から聞かせてください。

みすず「私は高校で初めてギターを買って、曲とかはチマチマ作っていたけど、それをどっかで披露したりとか、友達に聴かせたりとかもなく。ひっそりって感じ」

ゆみっこ「ヤマハ音楽教室にお兄ちゃんが行ってて、私も小学校の時に行くようになって。最初はエレクトーン弾いてたんだけど、5年生ぐらいになったらバンド科みたいな感じになっていって、そん時の先生が超ワンレン・ボディコンのバブルギャルみたいな、昔の工藤静香みたいな人だったの(笑)。その人が超ドラムがうまかったから、憧れていつも「ドラムやりたい!」って言ってやってた。チャゲアスとか叩いてたよ(笑)」

――その後は?

ゆみっこ「中学の合唱コンクールのピアノ伴奏とか、全校指揮。でもそんぐらい」

――2人は、武蔵野美術大学で知り合ったんですよね。

みすず「そう。同じ学部で、クラスが1つしかないから、自然と友達になりました」

――学部は?

ゆみっこ「日本画です。日本画学科自体人が少なくて、1学年30人ぐらいだからね」

みすず「だから日本画学科じゃなかったら出会わなかったかも。名前が同じ鈴木だから席が前後で、雰囲気も同じような感じだから話すようになって。仲良くなったのはすぐだよね?」

ゆみっこ「私さ、その前ムサビやめようと思ってたの。4月」

みすず「え~~~~! 4月って、入学してすぐ?」

ゆみっこ「やめて予備校戻ろうかなと思ってたの。でも、みすちゃんとかと仲良くなってから「やべえ、大学楽しい!」って救われた」

――恋パナは大学卒業後に結成となっていますが、在学中に音楽活動は?

すず「してない。2人でもしてないし、1人でも活動的なことは全然していない」

ゆみっこ「サークルとかすら音楽的なことやってないね」

――となると、勉強以外は何を?

みすず「私は特になにも、ボンヤリしていただけです。人生の中であんなにボンヤリしていたのは大学時代だけかな」

ゆみっこ「私は大学超楽しかったですよ。サークルは入らず、ひたすらアトリエと食堂にいたよね、うちら。あと、家。その3つの場所ぐらい。食堂でかわいい子とか眺めていたよね。懐かしい」

――学食ではどんな話をしていたんですか?

みすず「恋バナ(笑)」

ゆみっこ「恋バナだよね、主に。お気に入りの人を見つけて、あの人かっこいい、とか。うちらが1年の時の4年の彫刻科の先輩って土方みたいで超かっこいいっていうか、おしゃれな感じじゃないの。ニッカボッカを穿く、みたいな。それで胸板の厚い先輩を「胸板」って呼んだりとか」

みすず「でもかっこよかったよね、泥臭くて」

ゆみっこ「そん時からデザイン科のおしゃれ男子とかよりもそっちを見ていたみすちゃん、みたいな(笑)」

みすず「懐かしい(笑)」

ゆみっこ「こんな話ばっかしてた。今としゃべってること変わんないよね、多分」

みすず「だから美大とはいえ、アートな活動もしてないし、普通の女子大生。だけど、いけてるキラキラした感じではない(笑)」

ゆみっこ「泥臭~い感じ。素朴な美大生だよね」

恋のパイナップル

 

――音楽の話とかは?

みすず「しない、私とゆみとでは。音楽の趣味もそんなにあってないから。これよかったから聴きなよ、とかもなく」

――ライブに一緒に行ったりとかも?

ゆみっこ「ないない。でも全然関係ないけど、うちらが一番熱中した授業は映像の授業だよね。日本画学科って基本的に絵を描く課題しか出ないんだけど、3年の時にたまたま映像の授業が入って、自分たちでビデオ撮って音楽つけて発表するみたいな。あんまりうちらそういうデジタルなことやる授業ってないから、それ大学の授業で一番面白かったことを覚えてる。私ね、その時ロケット・オア・チリトリが好きで、作った映像に曲を使ったりした」

――ロケチリのロウファイなインディーポップ感は、確かに恋パナにも通じるものがありますね。

ゆみっこ「ロケチリはそうかもね。最初のやつとかすごい(音が)粗いじゃん? だから今でも好きだし。あと、粘土でアニメーション作った時は竹村延和の曲使ったかな。ああいうエレクトロニカみたいなのにも大学の時はハマッてた。大学生の時が一番ライヴとか行ってたかな。リキッドルームが新宿にあった頃。デートコースとか、こだま和文とか、あとボアダムズが好きで、山本精一さん界隈のやつ……羅針盤とか。リキッドよかったですよね。雑多で何でもありって感じで。新宿にあった頃、行けてよかったなって思う。私、22~23とかだったから、大人の人にまぎれてる感じがあってすごい楽しかった」

――みすずちゃんは大学時代はどんなのを聴いてたんですか?

みすず「バービー・ボーイズに大学の時ハマッて」

ゆみっこ「アトリエでめちゃかけてたよね。だからみすちゃんにいいよって教わったの、バービー・ボーイズだよ」

みすず「語らいたいけど相手がいないから(笑)」

――大学卒業してから恋パナ結成までどれくらいかかっているんですか?

みすず「25歳くらいの時じゃなかった?」

ゆみっこ「3年ぐらいたってたんだ」

――卒業してからも交流は続いていたんですね。

みすず「友達として普通に」

ゆみっこ「普通に家に泊まりにいったりとか。ハッピー・ニュー・イヤー・パーティーに一緒に行ったりとか」

みすず「そこまでひんぱんじゃないけどね」

――一緒に音楽をやろうとなったのは、どういう流れで?

みすず「私がギターでずっと曲作ってて。ライブやろうってことになって、1人だと寂しいし、ゆみがピアノ弾けたの知ってたから、ちょっとピアノ弾いてくんない?って誘って、やることになったの」

――その時から恋パナという名前で?

みすず「初めてライブをやることになった時に、進行表みたいなのに(名前を)書いてくださいって言われて、その場でチャッチャッて(笑)。コンセプトがなんちゃらかんちゃらでとか、こういう私たちを見せていきたいとかもなかったし、とりあえず楽しくやっていけたらって感じ」

――コンセプチュアル・アート・プロジェクトの一環としてやったわけではない?

ゆみっこ「全然ないね」

みすず「だからライブハウスの人にいつも「どう見せたいの?」って言われて、分かんない、みたいな」

ゆみっこ「みすちゃんが弾き語りをやったのを見にいって、すごいよかったから「がんばって」って言ったら誘われたから一緒に始めた感じだから。2人でこういう音楽が好きでああいう感じのかっこいいよねって始めたわけじゃないから」

――みすずちゃんが作った曲にゆみっこが演奏で色付けしていく、みたいな役割は最初から決まっていたんですか?

ゆみっこ「みすちゃんがデモでMDに入れてきた弾き語りを聴いて、私がピアノつけて、みたいな感じ。今みたいにトラック作ってなかったから、最初は。ピアノとギターと歌だけ」

――歌ってることも最初から変わってない?

みすず「それも変わってないかも」

――恋パナのライブでは曲間に寸劇やったりしますが、それは最初から?

ゆみっこ「あんまりさ、超カジュアルとかでライブやった記憶ないよね。なんかしらおしゃれしたりとか、つなぎ着て羊のパネルたてて、牧場設定とか(笑)。いつもなんかしら着てたよね。(初期は)寸劇はそこまでやってなかったけど」

――寸劇の台本は誰が書いているんですか?

ゆみっこ「みすちゃんだよね」

みすず「最初の頃はセリフとかまで書いてた気がする。友達とかが来て感想を聞いてる時に、初めて聴く曲って何歌ってたのか結局分からなかったりするって言われて。別に私たちのことだけでもなく。だから、曲にからめたMCとかって、あるじゃないですか。「今日は雨ですね。じゃあ、雨の曲を」みたいな。それと同じような感じで、寸劇を入れれば曲とか聴きやすいんじゃない、みたいな。だからいたってマジメな」

ゆみっこ「そう、はじまりだよね。曲順を決めて、その曲にいくにあたって、例えば先輩のことが好きな女子高生の曲だとしたら、先輩との関係みたいのをあいだに入れつつ、その曲の気持ちになるっていうか。ストーリーを作るうえでの寸劇。ただ芝居をやりたいとかじゃないから。その歌の気持ちはこういう前提で寸劇をやってみた、みたいな感じだね」

みすず「聴きやすくするために」

――恋パナの曲って、歌詞も物語仕立てになっているのが多いですよね。曲ごとに異なった主人公がいる、みたいな。

ゆみっこ「友達の、すごくガタイの良い男の子に「恥ずかしい」って言われたよね。2枚目のCD『しましま』の1曲目に入ってる「ハニカミヤハニイ」って曲がいい歌だなと思って口ずさむんだけど、ハッと気づいて、「俺なんかがハニカミヤハニイなんて……」って恥ずかしくなるって(笑)」

みすず「恋愛の曲ばかりだからね。でも確かに、あんまり人格の統一性がない感じ。ちゃんと1人のキャラが歌ってるみたいのにしたほうがお客さんがつきやすのかもしれないけど、自分たち自身がそういう人じゃないから」

ゆみっこ「確かに聞いてるほうにしたらさ、色々な人が出てきて“私”が主役じゃない歌っていうのは聞きにくいかもしれないけど、それがみすちゃんていう一人の人から出てるんだからしょうがなくね?って私は思っていた。なくす必要はないなって」

――そういう群像劇っぽい感じは、新作の『SUM!』ではより色濃くなっていますよね。でも郊外の学生っぽさみたいな世界観は一貫してあって。

ゆみっこ「みすちゃんの少年性みたいのとかさ、原風景が学生っぽいよね。ずっと。高校生活とか超楽しかったんじゃない?」

みすず「そんなにキラキラしてたわけでもないけど」

――自分は冴えないんだけど、イケてる人たちへの憧れはあるみたいな?

みすず「そういう面では、イケてました(笑)」

――ええっ!!そうなの?ガーン!!

ゆみっこ「イケてる高校生だったんだ~!(笑)」

みすず「私、ファンクラブとかあったんで」

ゆみっこ「おい、ウソつくなよ」

みすず「いや、本当本当」

ゆみっこ「マジで?やだ、すごいいいね。じゃあイケてたんだよ、きっと。でも男子をはべらせて一緒に帰るみたいな感じでもないわけでしょ?女子同士でキャッキャッみたいな」

みすず「男子みたいだったから。うち、お兄ちゃんいるし、お兄ちゃんいる子って、けっこう男みたいじゃない?」

ゆみっこ「社会人になってもうちらさ、OLで合コン行って~の、2次会の~、みたいな感じじゃないよね。ずっと変わらず友達と遊んでる時の学生ノリと変わらないよね」

――なるほど。恋パナのモラトリアム感の秘密がようやく解明されました。今までは自分たちのレーベルからのリリースでしたが、今回はなりすコンパクト・ディスクからですね。そのへんの経緯は?

みすず:「ええと、バンドマンで黄金町試聴室その2の店長でもある三沢洋紀さんに、紹介したい人いるんだっ!と、なりすレコードのヒラちゃんを紹介してもらって、、です。そこからヒラちゃんとは、3人で横須賀ぶらり旅をしたりする仲になり…、ヒラちゃんから突如「じゃ、CD出しちゃったりなんかしちゃったりする?」と広川太一郎節で言われたので「おねがいしまーす!」って。ご縁ですねえ~♡」

――前作と比べると、今回はアレンジなどに格段の成長がうかがえますが、作るのは大変でしたか?

ゆみっこ:「今回、3名の強力な助っ人(箱庭の室内楽の橋田くん、アカネイロの栗田P、諏訪創くん)に演奏をお願いした(M1,2,3,8)ので、そのおかげで本当に演奏や曲の雰囲気に幅が出ました。私たち2人だけでは出せない勢いや聴かせどころが格段にアップしています!あとの曲の演奏は私がひとりでシンセを弾いたり打ち込みで作ったトラックで、生楽器でまとめた曲との違いやバランスみたいなものを個人的に少し気にしていました。あまり境目なく音楽を聴く方なので、生演奏でも打ち込みでも、うまく出来れば良いものは良いはずなので、まだまだ拙いですがトラックのみの曲はわたしにとって挑戦のひとつだと思っています。」

――恋パナとしての今後の予定は?

みすず:「今年はまず、月1で新曲制作し、月の最終日に公開していきます。
作曲を交互に担当するので、今までの恋パナにないセンスを出していけるかと。
そして、それを新しいアルバム制作に繋げてゆきます!乞うご期待‼
あと、隔月で幻の恋パナラジオをお届けします。トークあり、sumや新曲のライブありを予定してます。詳しくは恋パナのホームページをご覧あれっ」

――では最後に、本作の聴きどころをアピールしまくってください。

みすず:「聴きどころは聴きどころの無いところです!
聴く人によってひっかかるところが違うようなアルバムかな。
騙されたと思ってぜひ一度聴いてみてください‼ムンッ‼」

ゆみっこ:「とにかく、バラエティー番組のようにいろんなタイプの曲が入っているところです。あとは、いつだって恋心や青春のときめきを忘れていない自分に気がつくような1枚かもしれません。胸キュンしちゃってください!ムフフ!」

恋のパイナップル

タグ : J-インディーズ

掲載: 2015年01月21日 19:23