ヤーコプスの最新盤は現存する最古の音楽劇、カヴァリエーリ「魂と肉体の劇」(1600)
ヤーコプスの最新録音は、カヴァリエーリによる、現存する最古の音楽劇「魂と肉体の劇」。様々な記述などにあたり、充実した通奏低音楽器群を従えた、カヴァリエーリの世界を生き生きと再現した見事な演奏です。
カヴァリエーリは、芸術家を輩出したローマの貴族の生まれ。父はミケランジェロの親しい友人で、ヴァチカンにも影響力のあった、非常なる有力者だったと言われています。カヴァリエーリ自身は作曲家、オルガン奏者、声楽教師など音楽の分野で活躍したほか、行政官、外交官としても手腕を発揮したようです。現存する最古の音楽劇(全体に音楽がつけられた劇作品)である本作「魂と肉体の劇」の作曲者として名を残しています。また、数字付き低音を用いた印刷譜が遺されていますが、こちらも最初期の例となっています。
この音楽劇「魂と肉体の劇」は、プロローグの語りを除いては、音楽のみで構成されていること、さらに、舞曲も含まれていることから、ヤーコプスは、この作品をオペラといっても間違いではないだろう、としています。様々な編成のアンサンブル、合唱、さらに器楽の楽章を含んだ多彩な音楽がちりばめられ、変化に富む構成。レチタティーヴォは完全に韻を踏んだかたちで書かれており、歌手が歌うテキストの世界を、充実した通奏低音楽器群がさらにイメージを広げ盛り上げます。
ヤーコプスは当時の記述などから、数字付きの通奏低音を担当する基本の楽器群として、ハープやリュートなど、さらには管楽器も採用。非常に豊かな音色のパレットを得ることに成功しています。全体を通して通奏低音パートが美しく響き、ストーリー展開にも重要な役割を果たすかたちの演奏となっています。なお、カヴァリエーリの指示には、器楽奏者は舞台には上がらず、袖などで、歌い手の息遣いに合わせて演奏するように、とあることから、ヤーコプスも、この作品を劇場で実際に上演した際には、可能な限り器楽奏者を袖に配置するようにしたといいます。(キングインターナショナル)
【収録曲目】
エミリオ・デ・カヴァリエーリ(c.1550-1602):音楽劇「魂と肉体の劇」(1600)
【演奏】
魂:マリー=クリード・シャピュイ
肉体:ヨハネス・ヴァイサー
時/ 忠告:ギューラ・オレント
知/ 喜び:マーク・ミルホーファー
喜びの第1 の使者:キュンフォ・キム
世界/ 喜びの第2 の使者/ 地獄に落ちた魂:マルコス・フィンク
現世の生活:ルチアーナ・マンチーニ
守護天使:クリスティーナ・ローターベルク
幸多き魂たち/ 天使たち:クリスティーナ・ローターベルク、エリザベス・フレミング、ベンノ・シャフトナー、フローリアン・フェット、フーゴー・オリヴェイラ
賢人/ 分別:セレーナ・マルカンジ、ロレダナ・ジントーリ
ベルリン国立歌劇場合唱
フランク・マルコヴィッチ(合唱指揮)
コンチェルト・ヴォカーレ、ベルリン古楽アカデミー
ルネ・ヤーコプス(指揮)
〔基本の楽器群〕
マラ・ガラッシ、ロレダナ・ジントーリ、マサコ・アート、キアラ・グラナタ(ハープ)野入志津子(リュート)
ドロレス・コストヤス(リュート、ギター)
ニコラス・アハテン(リュート、チェテローネ)
ヴィープケ・ヴァイダンツ(オルガン、チェンバロ)
アンドレアス・キュッパース(オルガン、レガール)
ヤン・フライハイト(ヴィオラ・ダ・ガンバ(バス))
ダヴィド・ヤクス(トロンボーン(バス))
バーバラ・ケルニヒ(チェロ)
ワルター・ルマー(ヴィオローネ)
クリスティアン・ブーゼ(ドルシアン)
〔装飾的な楽器群〕
ヴァイオリン、ヴィオラ、ヴィオラ・ダ・ガンバ、小型リラ、リコーダー、コルネット、トロンボーン、打楽器
【録音】
2014年5月、テルデックス・スタジオ・ベルリン
カテゴリ : ニューリリース
掲載: 2015年02月27日 17:30