ブラッド・メルドー、ソロ・パフォーマンスが8枚組LPボックス化
25年もの間――ある時はソロで、ある時はトリオで、またある時は他アーティストとのコラボレーションとして――コンスタントに世界各国をツアーしてきたブラッド・メルドー。先人の様々なスタイルや、幅広いジャンルを取り入れながら、自らのものとしてしまう、その非凡な音楽性とテクニックは、ここ日本でも多くのファンを魅了し続けている。
その彼のソロ・パフォーマンスに焦点を当てた、8枚組アナログLPレコード・ボックスが発売となる!本作『10 YEARS SOLO LIVE』は、そのタイトルにあるように、2004年から2014年に行われてきたソロ公演からの音源を集めたもの。音源の他、ブラッド・メルドー本人による密度の濃いライナー・ノーツも収録!
300分以上にも及ぶライヴ音源であるが、その曲順に関してブラッドはライナー・ノーツのなかで、こう説明している:「曲はトータル300分以上にもなるが、曲順は適当に並べられたものではなく、一つの物語を作るように最初から最後まで並べたつもりだ」「この8枚組には、4面ごとにそれぞれテーマと特徴が与えられているんだ」
最初に登場する、『DARK/LIGHT』のテーマでは「コンサートで、感情的なエネルギーの光と影を対比させ、その二つが互いに依存していることを浮き上がらせている」という。その一例が、ダークなJeff Buckleyの「Dream Brother」から優雅なLennon/McCartneyの「Blackbird」へと続く流れである。
次に登場する『THE CONCERT』のテーマでは、ブラッドは2010年~2011年当時のセット・リストを想定した曲順だという。(実際収録されている楽曲の年代はまちまちではあるが)
三番目のテーマとなる『INTERMEZZO/RUCKBLICK』でブラッドは、ブラームスのピアノソナタ 第3番、最後から2番目の楽章「 Intermezzo (Rückblick). Andante molto」を意識していたという。“Ruckblick"は、振り返ること、再評価することを意味している。ブラームスの「Intermezzo」は、その次の楽章に移る前に、これまでを振り返る“回想”になっている。今作においては、10年か、それ以上前にレコーディングされたもの、2004年から2005年ぐらいまでの間の音源を聴くことが出来る。
最後となる『E MINOR/E MAJOR』では、”E MINOR(ホ短調)”と”E MAJOR(ホ長調)"を演奏する時の鍵盤の擦れに焦点を当てているという。ここで再びブラッドは最初のテーマである“光と影”に戻り、“光”と“影”が音的にどう表れるのかを聴かせるのである。
そうしたテーマと物語のもとに集められた音源には、Jeff BuckleyからBeatles、Radiohead、Nirvana、The VerveやKinks、Stone Temple Pilots、Beach Boysまでのロック/ポップス曲から、John ColtraneやThelonious Monkなどのジャズ・ナンバー、さらにブラームスなどのクラシック・ナンバーがブラッド・メルドーの楽曲にまじって演奏されている。
ジャンルや時代という枠を超えた、鬼才、ブラッド・メルドー。類い稀なるパフォーマーでもある彼のソロ・キャリアの10年に焦点を当てたアナログLPボックス・セットがここに結実した。
掲載: 2015年09月14日 10:36