2016年初頭を飾るスティーヴ・キューン・トリオの新作
スティーヴ・キューン・トリオの新作がSunnysideから登場です。ベースはスティーヴ・スワロウ、ドラムはジョーイ・バロン、つまり、2011年9月に録音され、2012年にリリースされた『Wisteria』と同メンバー。
本作は、約4年振りのレコーディングになりました。移り変わりの早い昨今の流れからみれば、4年という時間は長い時間になるかもしれませんが、この3人にとっては、ちょっとした時間といえましょう。なぜなら、キューンとスワローは半世紀!共演歴(スワロウが最後にアコースティック・ベースを演奏した作品もキューンの69年作品『Child is born』とのことで歴史を感じます。)、ジョーイ・バロンとの共演歴も20年となるのです。
そんな3人は、3夜にわたってNYのバードランドで、熱意あるオーディエンスの前で演奏。その流れで、スタジオ入りして、この作品を録音したとのことです。だからでしょう。この作品には、ライヴの勢いを持ち込んだ自然さが音に出ています。
ECM作品とはいい意味で対をなし、一言で表現すれば、ジャズの本流的な風合い。スタンダードを中心にした演奏には、匠のメンバーによる、心地よいビート感覚と、メロディが自然に流れ出し、アートな傾向を感じさせるECM作品と鮮やかなコントラストを見せます。録音も、なんと、3時間~3時間半ですべてをとり終えたのだとか。その順調ぶりにはプロデューサーもエンジニアもびっくりしたとのことです。もちろん、本流を行きつつ、この3人ならではのサウンドが満載なのは、いうまでもありません。
若き日に共演したコルトレーンの演奏(Atrantic作品)への敬意を込め、かつ可憐なフレージングを紡ぎだすオープニングを始め、クインシー・ジョーンズの映画音楽を、トリオ・フォーマットで優雅に描き出すセンスも秀逸。またキューン自身のおなじみのコンポジションでシーラ・ジョーダンのヴォーカルをフィーチャーした演奏でも知られるM4はルバートのイントロののち、意外にも軽快なアップ・テンポで演奏。バラードとしての美しさはそのままに、サンバのリズムに乗せた演奏もとても新鮮に響きます。
77歳を迎えたキューン、75歳を目前としていたスワロー。ジャズの黄金時代を歩き、自らジャズの歴史を創ってきた2人と、60歳を迎え、スウィングからフリー的なものまで自在なリズムを創れる才能をもつジョーイ・バロンによって奏でられる極上のピアノ・トリオ!リリシズムが極まるラストのバラードまで全9曲。さすがです!
Steve Kuhn / At This Time…
1. MY SHINING HOUR(Harold Arlen, Johnny Mercer-Harwin)
2. AH MOORE (Al Cohn)
3. THE PAWNBROKER(Quincy Jones)
4. ALL THE REST IS THE SAME (Steve Kuhn)
5. THE FEELING WITHIN(Steve Kuhn)
6. CAROUSEL(Leonard Bernstein)
7. LONELY TOWN(Leonard Bernstein)
8. THIS IS NEW(Kurt Weil)
9. I WAITED FOR YOU(Gil Fuller)
Personnel:
STEVE KUHN (piano)
STEVE SWALLOW (electric bass)
JOEY BARON (drums)
タグ : ジャズ・ピアノ
掲載: 2015年12月24日 21:55