追悼 冨田勲氏(1932~2016)
2016年5月8日(日)13時、日本コロムビアより悲しいニュースが発表されました。偉大なる音楽家、冨田勲氏が5月5日に亡くなりました。謹んで哀悼の意を表します。
冨田勲氏は1974年発表のクラシックのシンセサイザー化アルバム「月の光~ドビュッシーによるメルヘンの世界」(アメリカ盤タイトルは“Snowflakes Are Dancing”)でビルボード・クラシカル・チャートで第1位を獲得し、1975年度のグラミー賞にノミネートされるなど高い評価を受け、国際的に活躍しました。
彼を慕うアーティストは数多く、マイケル・ジャクソンが1987年に初来日した際、冨田氏の自宅兼スタジオを訪問した逸話は有名です。スティービー・ワンダーは最も尊敬する音楽家として冨田氏の名前を挙げています。
また、80歳にしてヴォーカロイド(歌唱合成シンセサイザー)の初音ミクを起用した“イーハトーヴ交響曲”を発表するなど、亡くなる直前まで最新技術を積極的に導入した、旺盛な創作活動を行いました。
タワーレコードへはNO MUSIC, NO LIFE.ポスターへの登場、intoxicate誌でのインタビュー記事、インストア・イベントなどを通じて自らの音楽観を率直に表明していただきました。折々の記事を再掲するとともに、この場を借りて厚く御礼申し上げます。
冨田勲 NO MUSIC, NO LIFE.メイキングレポート(2014年3月18日掲載)
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冨田勲 インタビュー intoxicate vol.101(2012年12月10日発行号)
取材・文 前島秀国氏(サウンド&ヴィジュアル・ライター)
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冨田勲 インタビュー intoxicate vol.98(2012年6月20日発行号)
取材・文 松山晋也氏(音楽評論家)
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冨田勲──惑星と人生へのレクイエム intoxicate vol.92 (2011年6月20日発行)
取材・文 松山晋也氏(音楽評論家)
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以下、日本コロムビアが発表した訃報を掲載いたします。
(タワーレコード)
冨田勲氏、逝去のお知らせ
作曲家・シンセサイザーアーティストの冨田勲氏(享年84歳)が、平成28年5月5日午後2時51分 慢性心不全のため東京都立広尾病院で逝去しました。同日、昼ごろ自宅で倒れ、搬送先の病院で家族に看取られながら息を引き取りました。葬儀は、5月7日、8日に親族のみで執り行われております。ここに、謹んでご報告申し上げます。
冨田氏は、日本コロムビアで作曲家としてのキャリアをスタートさせ、 NHK大河ドラマの第1作や手塚治虫アニメの音楽などを多数手がけました。 1970年代からは、シンセサイザーをいち早く導入し、「月の光」や「惑星」など数々の野心的なアルバムを発表。日本人で初めて米グラミー賞にノミネートされるなど、世界的な評価を受けています。近年では、2012年にバーチャル・シンガーの初音ミクをソリストに組み込んだ「イーハトーヴ交響曲」を発表し、国内外で上演を重ね話題となりました。また、今年11月に上演予定の新作「ドクター・コッペリウス」の創作活動を逝去の直前まで行っていました。
故人の御冥福をお祈りします。
2016年5月8日
日本コロムビア株式会社
2016年3月23日に発表されたばかりの冨田勲氏の最新作です。
前作「スペース・ファンタジー」に続く第2弾オムニバスアルバム。トミタのシンセサイザーサウンドの色彩感ともっとも親和性の高いフランスものから、ラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」と、「マ・メール・ロワ」がメインのプログラムとなる。さらに好評を博したトミタの最新作「イーハトーヴ交響曲」により明るみになった冨田の宮沢賢治への思慕が、今回のアルバムにも刻印されることとなる。
具体的には、「賢治最愛の妹トシから賢治にあてた架空の手紙」を音世界で描いた「オホーツク幻想」が冒頭に置かれているのが特徴だ。さらに、トミタのシンセサイザーによる最も初期の作品でファンの間では「まぼろし」とされていた「銀河鉄道の夜」(TBSブリタニカの付録で音源化されたのみで初CD化)がアルバムの末尾に置かれている。
つまり聴くものはたちまち北方オホーツクへのノスタルジーと憧憬に満ちた音世界に没入し、さらに、視線は旋回し、フランス中世の幻想世界(=亡き王女、マメールロワ)へと至り、その先にはまた、賢治が描いた天空の銀河へと至る、という幻想が大きく弧を描き宇宙へと飛翔するような大きなコンセプトに貫かれているアルバムである。
(日本コロムビア)
【収録曲目】
1.オホーツク幻想 (冨田勲)
2.亡き王女のためのパヴァーヌ(ラヴェル)
<マ・メール・ロワ>(ラヴェル)
3.眠れる森の美女パヴァーヌ
4.夜の森に迷った一寸法師
5.パゴダの女王レドロネット
6.美女と野獣の対話
7.妖精の園
8.<銀河鉄道の夜>(冨田勲)
(ケンタウルス祭の夜→天気輪の柱→白鳥の停車場→水晶の砂の川原→鳥捕りのおじさん→さそりの火)
カテゴリ : ニュース
掲載: 2016年05月08日 13:30